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プライドと意地がぶつかり合った、ライバル同士の名勝負
文/編集部(T)

昨年の有馬記念を制したゴールドアクターが、年明け初戦にこの日経賞を選択。有馬記念と同じコースということで、「当然抜けた1番人気だろう」と思っていたら、週中の雰囲気は有馬記念で②着に下したサウンズオブアースの方が人気上位になりそうな感じ。確かに斤量差(ゴールドアクター58kg、サウンズオブアース56kg)はあったものの、正直なところ意外だった。

ただ、よく考えてみると、ゴールドアクターサウンズオブアースはこれまで2度対決(14年菊花賞、15年有馬記念)しているが、人気はいずれもサウンズオブアースの方が上(菊花賞サウンズオブアース4番人気②着、ゴールドアクター7番人気③着、有馬記念ゴールドアクター8番人気①着、サウンズオブアース5番人気②着)だった。それでいて着順では1勝1敗で五分だから、勝負付けは済んでいないと見る向きが多かったのだろう

同世代のライバル同士が3度目の対決で、またも人気上位を譲る形「G1馬なんだから、ゴールドアクター陣営は複雑だろうなあ」と感じたところで思い出したのが、現在開催されている選抜高校野球だった。

一発勝負の甲子園では1点が勝敗、ひいては選手の人生まで左右するだけに、プロ野球に比べて勝負にこだわることが多くなる。それだけに、“格上”の強打者を敬遠して次の打者で勝負、ということはよくある。松井秀喜選手の5連続敬遠が頭に浮かんだ方は、同世代とお見受けします(笑)。

敬遠は今対峙している打者と次の打者を天秤にかけ、後者の方が打ち取りやすいと思うからこそ行う。そこには“打者の格”も大きく影響するわけで、次の打者のプライドに障る面もあれば、敬遠される打者、そして敬遠する方のピッチャーもいろいろと複雑な思いがある。それだけに、敬遠にまつわるエピソードは多い。

スケールはまったく違うが、自分も少年ソフトボールで前の打者が敬遠された時は、正直なところ自分の方が打てると思っていただけに、「絶対打ってやる」という感情になったことを思い出します(結果は言えませんが……)。

人間の場合はそのようなことを理解するだけの感情があり、それがドラマを生む。馬はそういったことは理解できないはずだが、今回のゴールドアクターサウンズオブアースの競り合いは「理解しているのではないか!?」と思わせるほどの、プライドと意地がぶつかり合う、素晴らしい攻防だった

逃げ馬不在の9頭立てで、どの馬が行くかが注目されたが、押し出されるような感じでディサイファがハナヘ。超スローペースでレースが進む中、2番手の内にサウンズオブアース、その直後の外目にゴールドアクターがつけ、ともに虎視眈々と前を窺う。

お互いが相手を絞り「お前にだけは負けん」といった感じのレース運び。この時点で名勝負の匂いがプンプンと漂ってくる。そして、3コーナーで各馬が動いてからは完全に2頭の世界となった。

直線入口、逃げるディサイファの外からサウンズオブアース、さらにその外からゴールドアクターが並走のような形で交わし、サウンズオブアースが先に抜け出す。2kgの斤量差もあってか、ゴールドアクターもなかなか交わせなかったが、最後はG1馬の意地か、ねじ伏せるような感じで差し切った。

2kgの斤量差があっての勝利は、見た目以上に価値が高い。ゴールドアクターはこれで吉田隼騎手を鞍上に迎えてから8戦7勝③着1回。最近は外国人騎手が猛威を振るっているが、こういうコンビが勝ち続けるというのも悪くない。本番の天皇賞・春でも連勝を伸ばせるだろうか。

ちなみに、00年以降の有馬記念勝ち馬が翌年の天皇賞・春に出走した時は①①⑪⑤着。このうち、唯一天皇賞・春で1番人気にならなかった02年のマンハッタンカフェが勝利している(2番人気)。ゴールドアクター天皇賞・春でどんな人気になるか、こちらも注目したい。

逆に、2kgの斤量差がありながら敗れたサウンズオブアース。現時点では力の差を見せつけられる形となったのは否定できないだろう。

ただ、サウンズオブアース天皇賞・春に参戦するかは不透明だが、菊花賞では実際にゴールドアクターに先着しているだけに、長距離戦ではワンチャンスがありそう。実績では水をあけられたが、今度はこちらが意地を見せる番かもしれない。