毎日杯は見事に父子制覇達成、さてこの先は!?
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
春のG1シーズン開幕を迎えた今週(と同時に
ドバイにも日本馬が参戦)。土曜の重賞は
日経賞が9頭立て、そしてこの
毎日杯は10頭と、手頃な頭数で行われた。この両レース、単勝の売れ方はけっこう似ており、ともに5番人気が9.0倍で、6番人気は50倍以上。細かく見れば
日経賞は三つ巴、
毎日杯は1強なのかもしれないが、おおまかに見れば「5強」のレースだ。
ただ、出走馬の中身は異なり、
日経賞は1~4番人気が
有馬記念以来の休み明けで、再対決か雪辱戦かといった印象。一方、こちら
毎日杯の方は、1~4番人気すべて前走の重賞で③着以下に敗れた馬たちの
敗者復活戦である。もっとも、
「負けたもんの集まり」というよりは、この時期の3歳馬なら、
ここで好走すれば春のG1に参加できる馬たちと、前向きに見た方がいいだろう。
その筆頭格が、「5強」の中でも単勝1.7倍と頭ひとつ抜けた支持を集めた
スマートオーディンだ。前々走の
東京スポーツ杯2歳Sでは、上がり32秒台の脚を繰り出して優勝したが、前走の
共同通信杯は稍重でレースの上がりが35秒6。さらに、自身が少々掛かり気味に先行したこともあり、見せ場らしい見せ場も作れず⑥着に敗退してしまった。しかし今回は良馬場、G1戦線へと
「復活」するには絶好の舞台である。
続く2番人気の
タイセイサミットは
弥生賞④着で、
皐月賞の優先出走権に惜しくも届かず……というには離れすぎた③着から5馬身差。こちらは逆に、
弥生賞のラスト2ハロン11秒3-11秒3が速すぎ、もう少し渋太さを要求される展開が良さそうなタイプだ。
そして3~4番人気は、
アーリントンC③⑤着の
ロワアブソリューと
アーバンキッド。ゴール前大混戦のレースだったが、
アーバンキッドは坂下で抜け出しかかって最後に捕まった側。そして
ロワアブソリューは、後方からメンバー中最速の上がり34秒1を記録しながら捕らえきれなかった側である。
こうしてみると、1~4番人気の前走重賞組は、単なる力負けではなく、展開面も絡んで負けてきた馬ばかり。やはり、
何かが変われば「敗者復活」できる馬の集まり、という見方で間違いはなさそうだ。
その気になる展開は、「5強」の中では唯一、前走未勝利勝ちの
ディープエクシードの逃げで、前半1000m通過は61秒6のスロー。他の4頭では
スマートオーディンには良さそうな形で、
タイセイサミットには少々苦しい。
アーリントンC組では、
アーバンキッドが今度は止まらないぞ、という流れだ。
レースを見ながらそんな予想をしつつ直線に向くと、後方で脚が溜まっていた
スマートオーディンが、大外からまったく楽な手応えのまま前へと接近。そして内からは、
アーリントンCと同じくらいのタイミングで
アーバンキッドが抜け出してきた。そして、2頭の間で
タイセイサミットは、やはり少々切れ味負けしてジリジリと後退。その後ろの
ロワアブソリューはこの展開では苦しかった。
残り200mを切ると、内の
アーバンキッド、外の
スマートオーディン2頭のほぼ一騎打ち。という態勢も一瞬はあったものの、最後は脚色に余裕があった
スマートオーディンが、
アーバンキッドを1馬身少々突き放し、
ふたつめの重賞タイトルを獲得した。
手応えのわりには突き抜けるような脚を使えなかった、とも思えたが、自身の
上がりは32秒7で、ラスト1ハロンは11秒4。この展開で何馬身も突き抜けたら
化け物になってしまうので、まあこんなものだろう。
これで
スマートオーディンは、10年の父ダノンシャンティに続く
毎日杯父子制覇となったが、父は続く
NHKマイルCを
レコードタイムで制している。さて、
スマートオーディンはと考えると、もし
NHKマイルCに進むなら、やはりレース展開がカギになる。
父が制した10年は800m通過44秒8、レースの上がり35秒1という速い流れの中、ダノンシャンティは後方から
上がり33秒5の脚で差し切り勝ち。この馬も、ペースが上がって前とは離れてしまっても、じっと我慢して最後に切れる末脚を引き出せるかどうか。
もちろん、折り合いさえつくならば、父が出走を取り消した
日本ダービーでもチャンスはある。逆に言えば、
皐月賞には向かない、そして向かいもしないだろうと勝手に考えて話を進めたが、さて、どんな選択になるだろうか。
一方、②③着の
アーバンキッド、
タイセイサミットはタイプこそ違えど、
NHKマイルCの坂下なり坂上で抜け出して穴になる形も目に浮かぶが、賞金的に
アーバンキッドが勝ちたいレース、
タイセイサミットは②着以内が欲しい一戦だった。ただ、
アーバンキッドは今後の前哨戦の結果次第。出走がかなえば、直線で好位~中団あたりからスパっと抜け出して……というシーンが見られる可能性もありそうだ。