G1級からG1馬へ、今年あたりいよいよ転身か
文/編集部(W)、写真/森鷹史
昨年は
イスラボニータが
回避しながら6頭(ラキシス、キズナ、スピルバーグ、ロゴタイプ、カレンブラックヒル、
ショウナンパンドラ)のG1馬が集結した
大阪杯。そのうち、ラキシス、キズナが①②着と好走し、
G1馬が強さを見せつける結果となった。
昨年にはわずかに及ばないものの、今年は昨年
回避した
イスラボニータが加わり、
ラブリーデイ、
ヌーヴォレコルト、
キタサンブラック、
ショウナンパンドラと5頭のG1馬が出走してきたから、十分、
豪華メンバーと言える。
JRAは来年から
大阪杯のG1昇格を視野に入れている模様だが、なんでもかんでも昇格すればいいという話でもなく、
G1というブランドの品質を保つためにはある程度、数は制限したほうがいいように思う。とはいえ、確かに、これだけのメンバーが揃うのであれば前哨戦にしておくのは惜しいという考えも分からなくはない。
惜しいついでで言えば、
イスラボニータ以外のG1馬はすべて休み明け。この先に大目標がある馬たちだから、そういう状況になるのも仕方ないのかもしれないが、せっかくのG1馬の激突が先を見据えた仕上げというのはなんとももったいない。
それはさておき。上位人気の顔ぶれを見ると、1番人気(3.0倍)が
ラブリーデイ、2番人気(3.9倍)が
アンビシャス、3番人気(5.1倍)が
ヌーヴォレコルト、4番人気(5.9倍)が
ショウナンパンドラ、5番人気(6.2倍)が
キタサンブラックで、ここまではオッズが接近。この後は6番人気(12.3倍)が
タッチングスピーチ、7番人気(18.5倍)が
イスラボニータで、大きく離れて8番人気(125.8倍)が
レッドレイヴン。
実質的には7頭の競馬で、芝中距離なら1番人気は
ラブリーデイ、牝馬で非G1馬の
タッチングスピーチ、前走の
中山記念で⑨着と
不可解な敗戦を喫した
イスラボニータが6、7番人気というのは予想通りだったが、
アンビシャスが
ラブリーデイに迫る2番人気というのは少し意外だった。
中山記念では①着ドゥラメンテ、③着リアルスティールに割って入る②着。ドゥラメンテは
ドバイシーマクラシックで
落鉄しながら②着、リアルスティールは
ドバイターフでG1制覇を果たしていて、この結果が
アンビシャスの評価を押し上げる要因となったのだろうか。
ただ、
中山記念の結果といい、昨秋の
天皇賞・秋で折り合いを欠きながら③着
イスラボニータ、④着
ショウナンパンドラと同タイムの⑤着と健闘したパフォーマンスといい、
G1級の片鱗は所々で示していたから、なんとなく納得しながらレースを迎えることに。
誰も行かないなら
キタサンブラックがハナ、
マイネルラクリマが先行という序盤の位置取りはイメージ通りだったが、後方で折り合いに専念すると勝手に思っていた
アンビシャスが、向正面入口で早くも2番手に! またしても
アンビシャス絡みで意表を突かれる格好となった。
思い浮かんだのは
08年中山記念。テン乗りの
横山典騎手がカンパニー(
アンビシャスと同じ
音無調教師、
オーナーが近藤英子氏)を先行させて勝利に導いたあの一戦だ。
ただ、前半に掛かり気味だった
アンビシャス。これで最後に脚を使えるのかどうか。スローペース(1000m通過61秒1)で軽快に逃げる
キタサンブラックが押し切りそうな流れで直線へ。
残り400~200mで10秒9のラップを刻んで突き放しにかかった
キタサンブラック。だが、「相手はこれ」とターゲットを定めたかのような
アンビシャス&
横山典騎手が離されまいと追走。残り1Fを切り、坂を駆け上がったところで並びかけ、ゴール前でグイッと
アンビシャスの頭が出たところがゴールだった。
瞬発力勝負が十八番の
ディープインパクト産駒とはいえ、スタートと折り合いに課題を残す
アンビシャスを先行させて流れに乗せ、G1馬たちをねじ伏せるだけの末脚を引き出した
横山典騎手の決断、手腕が今回の大きな勝因と言える。そして、
横山典騎手が
「ゴールドシップよりは楽でした(笑)」とレース後に語っていたから、この勝利にはゴールドシップも貢献したということだろう(笑)。
「もう少しパンとして、順調にいってくれれば大きいところでもやってくれる」と
横山典騎手。まだ伸びシロがありながらG1馬5頭を撃破したのだから価値が高く、
今年あたり、G1級からG1馬へと転身してもまったく意外ではない。
一方、
キタサンブラックは初めて斤量58kgを背負いながら自己ベストの上がり(33秒6)でまとめてクビ差②着。
ショウナンパンドラ、
ラブリーデイ、
ヌーヴォレコルトは休み明けに加え、スローペースの前残りで差し込めなったものだから、悲観することはないだろう。
天皇賞・春、
ヴィクトリアマイル、香港の
クイーンエリザベス2世Cと、この後は分散して戦うことになりそうだが、
アンビシャスともども、
競馬を盛り上げる活躍を見せてほしいと思う。