勝者も敗者も、ヴィクトリアマイルに向けて収穫大だった
文/編集部(T)、写真/森鷹史
昨年までの
【阪神・内回り芝1400m】から
【阪神・外回り芝1600m】へとコースが替わり、最初の開催となった
阪神牝馬S。
内回りから外回りとなり、ただの200mの距離延長でない、
性格の違うコースへと舞台を移した。
より
ヴィクトリアマイルに近い舞台設定となったこともあってだろうか、
オークス&
秋華賞勝ち馬
ミッキークイーン、
ヴィクトリアマイル&
スプリンターズS勝ち馬
ストレイトガールなどのG1馬がここに出走。特に
ミッキークイーンは、
昨年までのコース設定だったら参戦していたかどうか、というほどの強豪の参戦を呼んだ。
一方、昨年のこのレースを制した
カフェブリリアント、一昨年の覇者で、昨年は④着の
スマートレイアーもここに参戦。
“新旧対決”というわけでもないが、こちらは果たしてこのコースに替わってどうか、という面が問われることになった。
そしてレースでは、
スマートレイアーが最内から好スタートを切った
ダンツキャンサーを制してすんなりとハナに。実質、ここで勝負あったのだろう。直線で狭いところに入った
ミッキークイーンを尻目に後続との差をひろげ、馬群を捌いて伸びてきた
ミッキークイーンをクビ差で振り切った。
結果的には、
以前このレースを制した馬の方に軍配が上がった形。とはいえ、
スマートレイアーが過去に見せたレース内容と、今回の内容は
正反対と言ってもいいほど違っていた。
前述したように
スマートレイアーは14年にこのレースを制しているが、この時は出遅れて最後方から33秒3の上がりで鮮やかに差し切っている。確かにこの勝利は鮮烈だったが、それだけにこの後の
スマートレイアーは、
この勝利の幻影を追い続ける形となった面もあるのかも? と、今になってみれば思えてくる。
実際、次走の
ヴィクトリアマイル(⑧着)以降追い込むも勝ちきれないレースが続いて7連敗。そのうち6戦でメンバー2位以内か33秒台の上がりを使っていて、
「展開さえ合えば……」という内容が続いた。
転機となったのは、
M.デムーロ騎手と初コンビを組んだ昨年の
米子S。仕掛けて好位の内につけ、危なげなく押し切ったレースは、それまでの
スマートレイアーにはなかったものだった。
そして前走の
東京新聞杯では、これも初コンビの
吉田隼騎手が好スタートから迷うことなくハナに行き、2馬身差をつけて悠々と逃げ切り。新しい面を引き出した点で、
吉田隼騎手のファインプレーだったのだろう。その流れで、今回再び鞍上に
M.デムーロ騎手を迎え、再び逃げ切り勝ちを決めてみせた。
芝1600m以下の重賞を4角先頭から押し切った
ディープインパクト産駒はこれまで
スマートレイアーを含めて4頭(
リアルインパクト、ミッキーアイル、ヴィルシーナ)いて、
スマートレイアーを除く3頭はいずれも
G1馬となっている。
鋭い差し脚に定評がある
ディープインパクト産駒だが、前に行っても押し切れるスピードを見せたことはプラスに働くはず。過去2年、
スマートレイアーは
ヴィクトリアマイルで⑧⑩着だが、
今年は違った姿を見せる可能性がありそうだ。
一方、
ミッキークイーンも負けて強し。芝1600mは昨年の
クイーンC(②着)以来の出走ということもあってか勝負所で若干反応が遅れた感じで、直線で馬群を捌くのに手間取る場面も見受けられた。本番ではこの距離に対する慣れが見込めるし、何より今回は
スマートレイアーとは2kgの斤量差があり、定量戦に替われば逆転の目も十分だろう。
ただ、気になるデータもある。過去10回の
ヴィクトリアマイル勝ち馬は、すべて
芝1600m以下の重賞で勝利実績がある馬だった。
ミッキークイーンは芝1600mの重賞で②②着。今回は負けて強しの内容だっただけに、
ヴィクトリアマイルでも人気を集めそうだが、この傾向は気になるところ。この
クビ差が案外大きなものになる可能性があるかも?