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上位馬たちは、与えられた条件でベストを尽くした
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


1番人気に推されたのが昨年のエリザベス女王杯勝ち馬マリアライト、2番人気が同レースの③着馬タッチングスピーチで、今年の目黒記念2頭のみ出走していた牝馬が上位人気に推されることになった

これだけなら「ふーん……」で終わるところだが、目黒記念でそうなったというのは、ちょっとした事件。目黒記念が5~6月開催に移った97年以降、1番人気となった牝馬はまだおらず、2番人気が延べ4頭いるのみ。それ以前を調べてみると、2月開催時代の84年に前年のオークスダイナカールが1番人気(④着)となっており、それ以来となった。

目黒記念はハンデ戦ということもあって、各馬の斤量がポイントとなりがち。そこで今回のハンデを見渡すと、トップハンデは昨年の覇者ヒットザターゲットが58kgで、これはまあ妥当なところか。一方でマリアライトは牝馬ながら56kg、タッチングスピーチは55kgを課されていた。

“ハンデが重いなら力でねじ伏せればいいじゃない”とは、誰かが言ったような言葉だが、今回のテーマのひとつに、「実績上位の牝馬がハンデを克服できるのか?」があった。

そして、それに続く3番人気がクリプトグラム。格上挑戦で挑んだ前走の大阪-ハンブルクCをハンデ52kgで制しており、今回は54kgでの臨戦となった。

前述の牝馬に比べれば有利ではあるが、クリプトグラム自身にとってみれば2kg増。さらに、『メインレースの考え方』にもあったように、7枠15番という外枠がポイントとなった。

ところが、クリプトグラムの鞍上・福永騎手はさすがの手綱捌きを見せた。五分のスタートから長いホームストレッチでジワッと内に入り、1コーナーを回る頃には馬群の中へ。勝負所で再度外目に持ち出すと、先に抜け出しを図るマリアライトの外から一気に脚を伸ばし、食い下がるG1馬を振り切った。

こちらは“外枠に入ったなら内に入れればいいじゃない”を実現した結果だが、18頭立てのレースでは簡単にはいかない。スタート直後のパトロールビデオを見ると、福永騎手は内にいる馬を次々にやり過ごしつつクリプトグラムを内へ内へと誘導しているように見えるが、これは「内へ入れる」という意志が見える騎乗ぶりだったように思う。

クリプトグラムは4歳で、これが重賞初制覇。3歳春に軽度の骨折があった影響でクラシックには参戦できなかったが、昨年3月のゆきやなぎ賞(②着)ではサトノラーゼン(③着)に先着している馬で、いよいよ本領発揮といったところか。今後の成長に期待したい。

そして、②着マリアライトもさすがの好走を見せた。直線半ばで一旦交わされたが、スピードに乗ると再度差を縮め、ゴール前でクリプトグラムに寄られるような場面がありながらクビ差まで迫ってゴール。重いハンデの影響はあったと思われるが、それでこの結果は悪くないのではないか。フラットな条件になれば巻き返しは必至だろう

さらに、昨年の勝ち馬でトップハンデのヒットザターゲットは③着に健闘。昨年は馬番1番での勝利で、これまで芝OPでふた桁馬番だと[0.0.0.9]という成績だっただけに、5枠10番という枠順が嫌われた感じで8番人気にとどまっていた。

ところが、今回は小牧騎手が1コーナーを回る時には最内に潜り込み、直線も内目を突いて馬券圏内に食い込んだ。こちらも“外枠に入ったなら内に入れればいいじゃない”を地で行く結果で、目立たないが好騎乗だったように思う。

ハンデ戦は条件がフラットではないが、今回上位を占めた馬や騎手は、「与えられた条件でいかにベストを尽くすか」ということを考え、それを実践したからこその好結果だったように思う。

ダービーをはじめとしてこの日の東京は好レースが多く、競馬の醍醐味を十分に感じさせてくれた一日だったのではないだろうか。