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今年の宝塚記念でも「おいしい前哨戦」の役割を果たす!?
文/浅田知広、写真/森鷹史


宝塚記念のステップレースが、G2の金鯱賞から、G3の鳴尾記念に「なってしまって」今年で5年目。当初は、ステップレースの役割を金鯱賞ほどは果たせなくなるかと思っていた。

ところが。フタを開けてみれば、12年はショウナンマイティが鳴尾記念②着→宝塚記念6番人気③着。13年はダノンバラードが③着→5番人気②着。14年のカレンミロティックは④着→9番人気②着。そして昨年の勝ち馬ラブリーデイは本番の宝塚記念を6番人気で①着と、ついに優勝馬まで輩出した。

G3ということで軽く見られているのか、上記の通り、好走した馬はみな宝塚記念では中位人気以下。どうしても人気になりがちなG1組よりも、穴党にとっては「おいしい前哨戦」という役割を果たしている。

そんな鳴尾記念に、今年駒を進めてきたのは14頭。特に人気を集めたのはヤマカツエースステファノスサトノノブレスで、ここまでが単勝オッズで4倍未満。そしてパッションダンスが6.3倍で続き、4強か、3強プラスワンか、という様相になった。

少々おもしろかったのが「3強」の人気順で、G1ではNHKマイルC⑬着しかないヤマカツエースが2.8倍の1番人気。続いて昨秋の天皇賞②着ステファノスが3.3倍、そして13年の菊花賞②着サトノノブレスが3.8倍という並びである。

ステファノスが遠征帰りの休み明けでなければ1番人気もあっただろう。ただ、前々走58キロで中日新聞杯を制したサトノノブレスが、56キロでも3番人気なのか、と。もちろん、4歳ヤマカツエースの伸びしろまで考慮すればおかしな話ではないのだが、少し予想とは違ったかな、という感もあった。

レースは、なんとなく鳴尾記念で馬券に絡んでいる印象もあった(過去2年で⑪⑨着)メイショウナルトの先導で、パッションダンスサトノノブレス、そしてヤマカツエースといった人気どころは好位を確保。その直後でステファノスがにらみを利かせる展開となった。

前半の1000m通過は59秒0と、この時期の開幕週としては速くないが、過去4回は62秒3、60秒4、60秒6、59秒5。トウケイヘイローが逃げた昨年はそれなりに流れたものの、それでも今年が一番速い流れとなった。もちろん、G1をも狙おうかという古馬にとっては、厳しいというほどではない。

とはいえ、ハナを切ったメイショウナルトからしてみれば、このまま上がり勝負に持ち込んでは勝ち目なし。おまけに3コーナーから後続の追い上げもあり、ロングスパート勝負の様相で4コーナーを通過していった。

そして直線。好位から先頭に立ったサトノノブレスに、内で食い下がるパッションダンスヤマカツエースは休み明けの影響なのかここで後退したものの、かわって外からやっぱり人気のステファノス。その間に14頭立て13番人気のプランスペスカが突っ込んできたのには驚かされたが、おおむね人気馬による上位争いとなった。

そんな中、一歩先に抜け出していたサトノノブレスが、ステファノスプランスペスカの追撃を最後まで抑えきり、コースレコードで重賞4勝目。時計自体は、もともとレコードが出てもおかしくなかったレースで、今年ようやくレコードが出る流れになった、ということだろう。

前走の天皇賞は⑪着敗退を喫してしまったサトノノブレスだが、古馬G3は14年の小倉記念、今年の中日新聞杯、そして今回と2000mばかりで3戦全勝。一方で、日経新春杯勝ちや、菊花賞②着と長距離実績もあり、宝塚記念の2200mは守備範囲内だ。昨年のラブリーデイに続いて、今年は優勝馬のサトノノブレスが……ということになるのかどうか。まずはその権利は得たと言えるだろう。

また、冒頭で触れたように、このレース④着以内あたりに入れば、宝塚記念で好走するチャンスは十分。その点、半年ぶりの実戦で勝ち馬に迫ったステファノスにも当然、逆転の期待がかけられる。

その宝塚記念には、春の天皇賞を制したキタサンブラックや、昨年の覇者ラブリーデイ、そして二冠馬ドゥラメンテなど、国内組と遠征帰りが入り混じった豪華メンバーが出走を予定している。そんな中に入ると、この鳴尾記念上位2頭の「G1連対実績」もかすんでしまうが、かすむからこその人気薄。今年もやっぱり鳴尾記念から1頭は来るのか、という結果になれば、少しばかり懐も暖かくなる……かもしれない。