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ルージュバックが本来の力を存分に発揮して完勝、さて秋は!?
文/浅田知広、写真/川井博


昨年のエプソムC優勝馬といえば、みなさんご存じエイシンヒカリ。連戦連勝で前年秋の段階でも注目を集めていたが、ここが重賞初制覇だった。そして秋は天皇賞……と思ったら⑨着敗退を喫したものの、暮れの香港C、そして今年はフランスのイスパーン賞制覇と、1年で世界的な名馬にまで成長した。

そのエイシンヒカリが昨年4歳で優勝したように、このレースは近年4歳馬が強いレースで、過去10年では7勝をマーク。13年のクラレント(デイリー杯2歳S)や、10年のセイウンワンダー(朝日杯FS)のように2歳時から活躍した馬もいれば、06年のトップガンジョーのように、4歳6月にして20戦目と、キャリアを積んで力をつけてきた馬もいる。

そんな視点で今年の4歳馬3頭を見ると、まず、デビューから3戦全勝できさらぎ賞を制したルージュバック(1番人気)は、春の牝馬二冠1番人気(⑨②着)など、クラシックでも期待された馬だった。

一方、2番人気のロジチャリスは、2歳オープンで好走。その後休養を強いられ、条件戦からの再スタートでここにたどり着いた。そしてもう1頭、5番人気のアルバートドックは、春のクラシック出走こそかなわなかったものの、京都新聞杯で③着。その後もオープン、重賞で好走を続け、今年は小倉大賞典で重賞制覇を果たしている。

それぞれ、大なり小なり成績に差はあるものの、共通しているのは3歳春までの段階で、オープンや重賞で力を見せていたこと。いずれも、ここを勝って秋にはもう一度(あるいは、いよいよ)G1の舞台へという期待がかけられる一戦になる。

そんな期待馬も含む18頭のレースで先頭を引っ張ったのは、このあたりの距離のG3ではもはやお馴染み、マイネルミラノ。4歳勢ではロジチャリスが好位で掛かり気味の追走となり、ルージュバックはその後ろ。アルバートドックはこれを前に見て中団の一角を確保した。

前は少々ばらけ気味で速めのペースかと思いきや、前半の800m通過は48秒5、1000mは60秒5と、条件を考えれば遅い流れ。逃げるマイネルミラノはもともと小回り向きのようだったが、重賞では新潟記念②着や中日新聞杯③着と、直線の長い左回りで粘り込む形で好走。そう楽に逃がしちゃまずいんじゃないの、という4コーナーの態勢だ。

とはいえ、前半が楽だっただけに、追い上げようとして差が詰まるものでもなし。直線残り400mにかかってもその差は3~4馬身で、好位勢からこれに迫る馬はいなかった。そんな中、中団の大外から一気に脚を伸ばしてきたのが、1番人気のルージュバックだった。

同じ4歳のロジチャリスアルバートドックがじりじりとした脚しか使えない中……、と言っては申し訳ない上がり33秒台中盤を記録してはいるが、ルージュバック32秒8では、そう見えてしまうのも仕方ない。この爆発力でルージュバックは、渋太い粘りを見せるマイネルミラノを一気に交わし、後を追ってきたフルーキーもまったく寄せ付けない完勝劇を演じたのだった。

ちなみに、今回記録した上がり32秒8は、自身が新潟芝1800mの新馬戦で記録したのと同タイムになる。このところ、どうも距離が足りなかったり、直線の長さが足りなかったり。番組上仕方ないとはいえ、適条件のレースにあまり出走できなかったルージュバック。東京芝1800mという舞台で、この馬本来の力を存分に発揮したと言えるだろう。

この東京で牡馬を撃破したとなれば、秋は天皇賞、そしてジャパンCと、大きな舞台が待っている。思い返せば昨年春、無敗できさらぎ賞を制したころには、ダービー挑戦を期待する声も大きかった馬。1年半遅れにはなるが、この東京の大舞台で牡馬相手に勝利を飾る場面が見られる可能性も十分にある。もっとも、昨年僅差④着のエリザベス女王杯も悪くはなさそうで、さて、どちらの道に進むことになるのだろうか。