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「よくがんばりました」をたくさん持つリラヴァティに神様がほほ笑んだ
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也


昨年が8頭でワンツー、一昨年は10頭でワンツー、そして今年は7頭でワンツーとなった。これは何かと言うと、近年のマーメイドSにおける前走が準OP以下だった馬の頭数とその結果だ。今年で3年連続で前走が準OP以下だった馬が連対圏を占めていて、前走パールS組の3連勝となった。

パールS京都芝外1800mの準OP戦で、阪神芝2000mマーメイドSとはコース形態が異なる。それでもこれだけ好走馬が出ているところを見ると、同じ牝馬限定戦で間隔(中3週)やハンデがフィットする面があるのだろう。来年以降も、マーメイドSのステップレースはパールSと覚えておいた方が良さそうだ。

今年のパールSについては「メインレースの考え方」でも振り返っていたが、直線で一度はレッドオリヴィアリラヴァティを交わしたものの、リラヴァティが差し返して勝利を収めた。その時は同斤量(55kg)だったが、今回は勝利したリラヴァティ53kgを背負い、敗れたレッドオリヴィア52kg。今回のレースでは先行型も揃っていて、脚質面も考慮されたか、より上位の人気となったのは差しタイプのレッドオリヴィア(3番人気)の方だった(リラヴァティは6番人気)。

ところが競馬というは不思議なもので、前走のリプレイをするかのように差し返して勝利を収めたのはリラヴァティだった。レッドオリヴィアは内目を回って差し込めそうな勢いだったが、直線で前が詰まってしまって万事休す。⑥着に敗れた。

リラヴァティは「メインレースの考え方」で「○」が3つ付いたように、このレースへの適性が高そうだった。ただ、昨年のマーメイドSで逃げて⑧着に敗れていて、他馬にマークをされた時に踏ん張り切れるのかという不安もあった。

前走でそれを払拭するような差し返し劇を見せていたのだが、2回続けてできるのか?、と思っていたら、見事にやり遂げてみせた。前走でひと皮むけていたのか、それとも妹の活躍(シンハライトオークス制覇)に何か触発されたことがあったか?

マーメイドSは逃げ先行型がしばしば穴を開けるレースだが、意外に人気を背負った馬が先行すると潰れてしまうケースが多かった。過去10年では4角2番手以内だった馬が[2.4.0.19]という成績だったが、6番人気以内の馬に限ると[1.0.0.11]。昨年のリラヴァティ(2番人気⑧着)もこれに含まれている。

今回のリラヴァティは先行して4コーナー手前で先頭に立ち、直線に向くとウインリバティシュンドルボンが襲い掛かってきた。この形だと苦しくなってしまうのが普通なのだが、残り200mからもう一度盛り返し、最後は大外から追い込んできたヒルノマテーラをクビ差抑えた。

まさに強い馬が見せるレースで、勝ち時計の1分59秒3は、一昨年のディアデラマドレや3年前のマルセリーナの時(1分59秒4)を上回るものだったから優秀だ。お姉ちゃんの本気を見せつけられた思いだった。

マーメイドSハンデ重賞となってから今年で11回目で、そのうち重賞未勝利馬が9勝を挙げている。ハンデ重賞だからこういったことになっても不思議ではないけれど、昨年優勝したシャトーブランシュローズSで②着(0秒1差)に食い込んだことがあり、一昨年のディアデラマドレエリザベス女王杯に挑戦して0秒6差(⑨着)で走ったことがあった。

他にも、秋華賞④着の実績があったブライティアパルス(10年)や、重賞に6度挑戦していたコスモプラチナ(09年)が優勝していたりして、それまでに「たいへんよくできました」というハンコはもらっていないものの、「よくがんばりました」というハンコをいくつか持っていた馬に競馬の神様がほほ笑むレースという面が感じられる。

リラヴァティは今回が初重賞制覇だったが、フェアリーSで0秒1差③着に入ったのを皮切りに、チューリップ賞でも③着、ローズSでも③着、昨年の福島牝馬Sではクビ差の②着に粘っていた。これまでに重賞には8度挑戦して[0.1.3.4]という成績で、今回のメンバーの中で重賞挑戦数はメイショウマンボ(24回目)に次いで2位重賞での③着以内数(4回)もメイショウマンボ(5回)に次ぐものだった。

「よくがんばりました」をたくさんもらってきたリラヴァティ「たいへんよくできました」をもらったのが今年のマーメイドSだった。