ダートOP→芝重賞を連勝した、偉大な先輩に続けるか?
文/編集部(T)、写真/森鷹史
「餅は餅屋」という言葉がある。これは餅は餅屋のついたものが一番美味しいように、何事も専門家に任せた方がいい、という意味とされている。
専門店が並ぶ商店街が廃れ、郊外の大規模店舗が大盛況という現代で、現実の
「餅は餅屋」は死語に近いが、競馬の場合はけっこうこれがはまる場合が多いから侮れない。この日もそうだったが、
「前年の同じレースで好走した馬が、今年も好走」というパターンはしばしば見られる。
中京もそんなところがあって、今年の
高松宮記念を制した
ビッグアーサー(中京芝1200mが2戦2勝)、
中日新聞杯勝ち馬
サトノノブレス(中京芝2000mが②③①着)のように、
同じコースで好走実績があった馬がそのまま好走、というパターンが散見される。
そして
CBC賞でも、似たような傾向を示している。過去2年の勝ち馬(14年
トーホウアマポーラ、15年
ウリウリ)は、いずれも
「(レース出走時点で)中京芝で連外がない」という点で共通していたし、12~13年は
マジンプロスパーが連覇していて、
コース巧者が好成績を収めている。
そんな目線で今年のメンバーを見ると、まず目についたのは
中京芝が[2.0.0.0]のレッドファルクス。昨年に中京芝1200mで準OPを勝ち、その後はダートを中心に使われてここが芝重賞初挑戦となる一頭だった。
ここまでなら
「餅は餅屋」=
「中京は中京巧者」なのだが、気になったのが、
今年から中京の芝が高速馬場になったこと。
レッドファルクスが勝利した準OPは昨年のもので、勝ち時計は1分10秒9だった。
「メインレースの考え方」でも指摘されているように、
前走から距離短縮時は3戦3勝、芝1200mが2戦2勝だから条件が良いのは認めつつ、
「果たして高速決着に対応できるのか?」は今回の課題のひとつとなった。
結果は、はい、見事に対応しました(笑)。2ハロン目から10秒台後半のラップが4回続くペースを、
レッドファルクスは中団やや後方で追走。直線で外に持ち出されると、押し切りを図る
ラヴァーズポイント、ベルカントを一気に交わして重賞初制覇を飾ってみせた。
勝ち時計は1分7秒2。
高松宮記念(1分6秒7)には及ばないが、前半600mを
高松宮記念より1秒1遅いタイム(今回は33秒8)で入って、レース上がりが0秒6速くなる中(今回は33秒4)、
4角9番手から差し切ったのだから、内容は高く評価すべきだろう。
それにしても驚いたのは、
レッドファルクスの
前走がダートOP(欅S、東京ダート1400m)を勝ってからここに挑んだ馬だったこと。調べてみると、90年以降に前走がダートOP(地方交流重賞を含む)勝ちから古馬芝重賞を勝った馬は
イシノサンデー(
97年京都金杯)、
タイキシャトル(
97年スワンS)、
アグネスデジタル(
01年天皇賞・秋)、
スリープレスナイト(
08年CBC賞)の4頭しかいない。いずれもG1勝ち馬だ。
このことからも分かるように、
ダートから芝の高速決着と、まるで違う条件で連勝したことは、それだけで高い能力を持つことの証明となるはず。
中京新装後の
CBC賞勝ち馬といえば、前述の
マジンプロスパー、トーホウアマポーラ、ウリウリはいずれもまだG1では馬券圏内に入れていない。かつて、年末のG2として開催されていた頃の
CBC賞は
サニングデール、マサラッキなど、このレースを勝ってスプリントG1を制した馬が多かっただけに、現状はやや寂しい結果となっている。
しかし、今年の勝ち馬は
ひと味違う活躍を期待したくなる。
レッドファルクスの近親には13年サマースプリントシリーズで惜しくも2位に終わった
フォーエバーマークがいて、本馬にはその雪辱も期待したいところだが、それ以上のレベル、
前述の名馬たちの域を期待してもいいのではないか。
そのためには課題もある。
レッドファルクスはここまで右回りが[0.0.0.2]。残るサマースプリントシリーズのレースにしても、秋の
スプリンターズSにしても、左回りでないレースが続く。
レッドファルクスは、今後どのような路線を歩むだろうか。
「餅屋」が
「何でも屋」になるか、それとも
「餅屋」を貫くか。いずれにしても期待したい。