今年のJBCスプリントは熱い1400mになりそうだ
文/編集部(M)、写真/森鷹史
ベストウォーリアが連覇した14~15年の
プロキオンSはペースが上がらず、1分22秒5~1分22秒6という決着タイムだったが、今年は
道悪馬場も手伝って淀みなく流れた。前半3Fは
34秒1で、これは3年前(
34秒1)や4年前(
34秒0)と似たペースだった。
4年前は逃げた
トシキャンディがそのまま1分22秒6(良)で押し切ったが、②~③着には
差し馬が入った。その時の②着
アドマイヤロイヤルが3年前の勝ち馬(4角7番手からの差し切り)で、3年前は1分21秒9という
レコード決着だった。
今年の決着タイムは1分22秒1で、3年前には及ばなかったものの、先行した
ノボバカラがそのまま押し切ったので、
強い内容だったと言えるだろう。
ノボバカラ(57kg)は、②着
ニシケンモノノフや③着
キングズガード(ともに56kg)よりも
重い斤量を背負っていたし、最後に迫られはしたが、半馬身差になってからはそれ以上詰まらない感じだった。
ノボバカラは3歳時に
ユニコーンSで②着に粘り込み、その後に1600~1800mを使われていたが、ワンパンチが利かない競馬が続いていた。それが今年3月に
ダート1400m(
納屋橋S)に戻ると快勝し、そこから連勝を重ねて
かきつばた記念(名古屋ダート1400m)で重賞初制覇。前走の
北海道スプリントC(門別ダート1200m)こそ
ダノンレジェンドにハナ差敗れたものの、再び
1400mに戻った今回、JRA重賞を勝利してみせた。
ダート1200mがダメではないのだろうが、
ベストはダート1400mなのだろう。芝でもそうだが、
1400mがベストという馬は、国内に1400mのG1が(基本的には)ないため、
レース選択に苦労するケースが見られるものだが、
ノボバカラには
運もあるようだ。今年の
JBCは
川崎競馬場で行われ、
JBCスプリントは
ダート1400mで予定されている。
ノボバカラの陣営(
天間厩舎)からは、今秋は
JBCスプリントを目指すことが発表されている。
ノボバカラは
ダート1400mが[4.0.1.0]で、4勝のうち2勝を
左回りで挙げている。
道悪ダートは今回を含めて[3.3.1.0]だから、馬場は不問だろう。
川崎競馬場では出走歴がないが、
これ以上ない条件で
G1に挑戦できることになりそうだ。
ちなみに、
北海道スプリントCで大接戦を演じた
ダノンレジェンドは、重賞7勝のうち5勝がダート1200mだが、ダート1400mでも
黒船賞を連覇していて、通算では[6.2.1.3]と実績がある。こちらは昨年の
JBCスプリント(大井ダート1200m)で3/4馬身差の②着に敗れていて、
雪辱に燃えていることだろう。
さらには、
プロキオンSを連覇していた
ベストウォーリアは昨年の
JBCスプリントで③着となっているが、ベストはダート1400~1600m。こちらは
南部杯(盛岡ダート1600m)を予定しているようだが、
川崎ダート1400mという条件も悪くないはずで、チャンスと見ているのではないだろうか。
こうなってくると、JRAでも秋に
ダート短距離のG1があってもいいんじゃないかって気がしてきますが……。その話は置いておき、熱い闘いとなりそうな今年の
JBCスプリントは大注目だろう。
ノボバカラは
アドマイヤオーラの初年度産駒になるが、同世代には
レパードSを勝利した
クロスクリーガーも出ていて(同馬は昨年死去)、
ゴールドペガサスという芝馬も輩出されている。複数の活躍馬を見ると、
アドマイヤオーラの急逝が本当に惜しい思いがしてくる。
アドマイヤオーラ産駒はJRAで37頭がデビューして
15頭が勝ち上がり、2勝以上を挙げた馬が
6頭いる。
1番人気に推された時の安定感が素晴らしく、芝では[4.3.1.3]、ダートでは[10.5.3.1]という成績だ。
1番人気に推されてこれだけ崩れないのは、今回の
ノボバカラを見ても分かる通り、
ペースに左右されにくい脚質であることや、
勝負根性が備わっているからだろう。
アドマイヤオーラは父
アグネスタキオン×母
ビワハイジという配合で、
ブエナビスタなどの兄にあたる。残された産駒からも活躍馬が現れ、
後継種牡馬が誕生して血が継承されていってほしいものだ。
一方、残念だったのは②着に敗れた
ニシケンモノノフ、そして同馬の父
メイショウボーラーだ。
ニシケンモノノフは2歳時に
兵庫ジュニアGP(園田ダート1400m)を勝利しているが、JRAのダート重賞は、
ユニコーンS⑤着、
武蔵野S④着、そして今回の
プロキオンS②着と、あと一歩で手が届いていない。
メイショウボーラー産駒全体でもJRAの重賞は[0.2.0.35]で、タイトルを獲得した馬はまだ現れていない。
ニシケンモノノフの近走を見ると、タイトル獲得も時間の問題という印象があるが、ダート重賞の上級馬は
層が厚いので、タイトルを手にするには秋までにもう一段の
パワーアップを図りたいところだろう。