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人気薄だったもう1頭の5歳馬・リッカルドが重賞初制覇
文/浅田知広、写真/川井博


今年の登録馬を見ての第一印象は「なんか物足りない」。いったいなにが足りないのか。単純に特別登録が12頭と少ないからなのかと思っていたが、過去の傾向を見始めて気がついた。このレース6年連続出走のエーシンモアオバーが引退し、今年はいないのだ。

これが単に後方をついてまわるタイプならそこまで違和感もなかろうが、エーシンモアオバーは6年連続でハナを切って[0.1.3.2]。大敗は14年⑪着の1度きりと、毎年のようにレースを盛り上げる走りを見せていたのだから、「なんか物足りない」と感じるのも自然だろう。

その一方で。エーシンモアオバーと同世代の10歳馬・サイモントルナーレマルカフリートは元気に出走。また今年は、過去10年[4.1.4.17]だった4歳馬が不在([0.1.1.1]の3歳も不在)で、エーシンモアオバーが抜けたにもかかわらず高齢化が進むという、少し不思議な感覚も同時にあるレースとなった。

そんな中、1、3番人気に推されたのは最年少の5歳勢、モンドクラッセロワジャルダンだった。モンドクラッセは、前走の大沼Sレコードで制して、北海道では5戦全勝。そしてロワジャルダンはG1のチャンピオンズC④着、フェブラリーS⑤着馬。前走・平安Sこそ⑩着に敗れたが、G3なら昨秋のみやこS以来の勝利も期待できる。

さらに、その間に割って入った2番人気は昨年の覇者・ジェベルムーサで、4番人気は一昨年②着(昨年④着)のクリノスターオーと、このレースでの好走実績を持つ6歳勢。おおむね、今年のメンバーとしては若いほうの馬が上位人気を占めてレースを迎えた。

ハナを切ったのはエーシンモアオバー……、ではなく、今年はモンドクラッセ。もともと騎乗予定だった三浦騎手に落馬負傷があり、柴山騎手が手綱をとっていたが、好発から特に掛かることもなく落ち着いた走り。乗り替わりの影響はなく、序盤は良い形でレースを進めているように見受けられた。

ただ、向正面の中ほどで、早くもクリノスターオーが並びかけてきたのは誤算だっただろうか。これをもう一度突き放しつつ3コーナーへ向かったものの、好位からブライトライン、そして後方からはリッカルドも早めスパート。4角では大外からそのリッカルドがほぼ並ぶ態勢となり、これをちらっと見やってモンドクラッセ柴山騎手がラストスパートに入った。

コーナーワークの差もあって、直線に向くとモンドクラッセが再び1馬身ほどのリード。小回り札幌だけにそのまま押し切るかとも思われたが、後方から仕掛けたリッカルドの勢いがモンドクラッセを上回っていた。残り200mを切って2頭が並ぶと、もうモンドクラッセに抵抗する余力は残っておらず、最後はリッカルドが抜け出して重賞初制覇を果たしたのだった。

「今年のメンバーとしては若いほう」の5歳馬・モンドクラッセロワジャルダンが1、3番人気に推される中、もう1頭の5歳馬・リッカルドは2頭から大きく離れた7番人気。4歳以降の成績は[2.5.4.3]で、今回は善戦しても勝つイメージまでは湧きづらいタイプだったが、黛騎手の仕掛けのタイミングがバッチリはまった一戦だったと言えるだろう。

また、父フサイチリシャールの産駒は、これがJRAの平地重賞初制覇となった。朝日杯FSなどを制したフサイチリシャールは、その父クロフネの血統からも期待されてダートにも参戦したが、父子制覇を狙った武蔵野Sは1番人気で⑤着、JCダートは⑬着。1世代を経て、まずはダート重賞制覇を果たしたリッカルドが、今後その雪辱を果たせるのか注目したい。

そしてゴール前でモンドクラッセを交わし、一昨年に続いて2度目の②着はクリノスターオー。ズブさを出しながらも渋太いタイプ。自身の持ち味を活かすため、向正面でモンドクラッセに並んでいったことが、結果として相手に脚を使わせることにもなり、最後の逆転に繋がっただろうか。4コーナーで外から勝ち馬に来られたときに、交わされずに併せていけると、4度目の挑戦となる(?)来年の勝利も見えてくる。

一方、そのクリノスターオーにしてやられた感もあるモンドクラッセは、北海道での連勝が止まって③着。なにやらエーシンモアオバーの後継者になるのかという初参戦の結果だったが、他場でも東海S②着などの実績を持っている。来年の夏、G3のここに戻ってきてしまうのか、それともG1級に育っていくのか、ここからの走りがカギを握りそうだ。