馬場もジンクスも覆すのがサクラバクシンオー産駒だった
文/編集部(M)、写真/森鷹史
単勝1.5倍の
ベルカントが敗れたことよりも、決着タイムが
1分8秒台になったことに驚いた。しかも、1分8秒台前半ではなく、
1分8秒5。去年の決着タイム(
1分7秒3)よりも実に
1秒2も遅い。
北九州記念は10年前にスプリント戦になり、初年度(06年)が
1分8秒0(コスモフォーチュン)という決着で、次年度以降は
1分6秒7~1分7秒7というタイムだった。
昨年は
北九州記念の翌週に平場の
500万で
1分7秒6というタイムが出ていて、翌々週の準OP(
北九州短距離S)は
1分7秒8だった。今年の決着タイムは、それらよりも全然遅かった。
今夏の小倉競馬は天候に恵まれていて、芝ダートを含めて
道悪馬場になったことが一度もない。それなのに、これだけ
時計がかかる馬場になっているのは、何か
要因があるのだろう。天気が良すぎて芝が枯れて時計がかかる、といった現象とか、起こり得るんだろうか?
北九州記念のパトロールビデオを見ると、
ベルカントの
M.デムーロ騎手が
最善の策を採っていることがよく分かる。
4枠5番からスタートした
ベルカントの
M.デムーロ騎手は、内には絶対に入ろうとせず、内ラチから
2~4頭分を避けて周回している。芝生が削り取られて土が見えている所と芝生が生えているギリギリの所を走っていて、それだけ内側の馬場が悪いということなのだろう。
直線に入っても内ラチの方には寄って行かず、そのまま
真っすぐ走り続けた。かつての
ベルカントはラチに頼って走った時の方が好走していたと思うので、その面は解消されてきているのだろう。しかし、これだけ
時計の出ない馬場で
ハンデ56kgを背負い、最後は
バクシンテイオーの末脚に屈してしまった。
タラレバを言っても仕方ないが、昨年と似たような馬場だったら、どうなっていたか。ちなみに、昨年時の
ベルカントの鞍上は
武豊騎手だったが、3~4コーナーでは
内ラチ沿いを走り、直線で馬場の中央寄りに持ち出されていた。
優勝した
バクシンテイオーは前走の
バーデンバーデンCが③着までだったが、
上がり33秒8で
1分8秒4という走破時計だった。昨年の
北九州記念は⑥着だったが、
上がり33秒7で
1分8秒1だった。今回の上がり3Fは
34秒2で、走破タイムは
1分8秒5。前走や昨年時よりも
馬場や
流れが合って差し切った。
バクシンテイオーは父
サクラバクシンオー×母父
サンデーサイレンスという配合だが、祖母が
ライフアウトゼアで、つまり、
カネヒキリの近親にあたる(
カネヒキリの母が
ライフアウトゼア)。
バクシンテイオーはダートでは走ったことがないが、準OP勝ち(
新潟日報賞)が
稍重馬場で、やはり少し時計のかかる芝が合うのだろう。
これまでの
北九州記念では7歳以上の馬は[0.0.1.26]で、6歳時にこのレースを優勝していた
サンダルフォンが7歳で③着(2010年)に入ったことがあるのが最高成績だった。今年7歳の
バクシンテイオーは、これを覆したことになる。
北九州記念で③着以内に2回以上入ったことがあるのは
サンダルフォンと
ベルカントだけで、
1分6秒9という高速決着だった2012年に優勝したのが
スギノエンデバーで、
1分8秒5という時計のかかる決着を制したのが
バクシンテイオー。このいずれもが
サクラバクシンオー産駒だというのだから、
驚愕だ。どんな馬場でもどんなペースでも、
北九州記念は
サクラバクシンオー産駒が中心ということなのか。
サクラバクシンオーの産駒は、
ベルカントのひとつ下にあたる
現4歳が最後の世代になる。今年、7歳でこのレースを制する馬が出るほどだから、
北九州記念における
サクラバクシンオー産駒の時代は、あと数年は続くのだろう。