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サマーシリーズ以上の意気込みを、レース後の笑顔から感じた
文/編集部(T)、写真/森鷹史


新潟記念が始まる前、サマー2000シリーズは13ポイントでネオリアリズムがトップに立っていた。ただ、同馬はこのレースに参戦せず。一方、10ポイントで2位に並んでいたアルバートドック、クランモンタナ、マイネルミラノがここにエントリー。それ以外にも、今回出走した6頭(条件が厳しい馬もいたが)が逆転チャンピオンの可能性を残してレースを迎えた。

また、このレース自体も混戦模様。1番人気に推されたアルバートドックのオッズが5.0倍で、7番人気ベルーフが11.2倍だから、いかに混戦だったか分かるだろう。ちなみに、その7番人気以内にチャンピオンの可能性がある馬が4頭いた。

レースはメイショウナルトが大逃げを打つ展開となり、あれよあれよという間にリードを保ったまま直線へ。テレビを通しても競馬場のどよめきが聞こえてきたほどだった。

1000m通過は58秒5と確かに速かったが、これはメイショウナルトが大逃げを打っていたからで、2番手以降はそこまで速いペースではなかったはず。それだけに、3コーナー手前で3番人気に推されたダコールM.デムーロ騎手が内に導き、単独2番手で直線を向いた時は、「これはやられたか」という印象さえ受けた。

ところが、直線半ばで様相が一変する。メイショウナルトダコールが失速すると、外から後続が殺到。そんな中で横山典騎手アデイインザライフを大外に持ち出し、外ラチ沿いまで真っ先に馬を誘導。そこから一直線という感じで、32秒7の上がりで突き抜けてみせた。

結果的には、上位④着までは4角で13番手より後ろにいた馬が占めた。メイショウナルトが作ったペースと、内が伸びづらくなった新潟の馬場は見た目以上に厳しかったのだろう。ラップを眺めてみると、2ハロン目からずっと11秒0~12秒1を刻んでいて、緩むところがあまりなかった形。例年以上にスピードの持続力が問われる競馬になった。

改めてレースを見直してみると、「これは横山典騎手の好騎乗だなあ」と感じる。新潟記念は新潟外回りコースで開催されるが、騎手の方からは「新潟はコーナーが東京に比べてきついので、コーナーで内を回りすぎると直線でスピードが乗りづらい」という話を聞く。

どういうことかというと、競馬に限らず人間のトラック競技でもモータースポーツでもそうだが、コーナーではどうしてもスピードをある程度落とさざるを得ない。そこでインを回ると減速したままで直線を向かなければいけないが、外を回ればそこまでスピードを落とさなくて済むからだ。

これがモータースポーツなら“アウト・イン・アウト”(コーナー入口で外から入り、コーナーでは内を通って出口で外に出すこと)というテクニックがあるが、競馬の場合は他馬がいるので簡単にはいかない。コーナーで内を通ることには他馬に包まれるなどの理由以外に、スピードが乗りづらいというリスクが伴うそうだ。

今回、横山典騎手が大外を通ると決めてかかったような騎乗ぶりをみせた。「エンジンを掛けたまま不利もなく走らせたかった」とレース後に語ったが、スムーズな競馬で加速を持続させたまま直線に向いたことが勝因のひとつだったのだろう。

アデイインザライフにとっても、これが待望の重賞初制覇。今後は東京や中山の重賞でどのような競馬をするか、注目したい。

②着に入ったアルバートドックはここで5ポイントを稼ぎ、サマー2000シリーズチャンピオンに輝いた。今回はハンデ58kgということを考えると悪くない結果だったはず。こちらも秋に向けて期待したい。

ところで、シリーズチャンピオンを決する一戦では、“陣営の意気込み”が話題になることがある。「ここで○着までに入ればシリーズ優勝が決まるんだから、仕上げも本気のはず」という感じだ。

しかし、「今回はシリーズの行方以上に、意気込みが高かった人物が一人いたなあ」とレース後に感じた。それはもちろん、この勝利でデビュー31年目にしてJRA全10場重賞制覇を達成した横山典騎手。レース後のインタビューで見せた満面の笑顔が、その意気込みを物語っていた気がする。