キタサンブラックに続ければレース評価一変!?
文/浅田知広、写真/森鷹史
秋華賞のトライアルは、
ローズSがG2で、今年からG3になった
紫苑Sは昨年までオープン特別。本番での成績に大きな差があるのも致し方ない。
しかし
菊花賞トライアルは、この
セントライト記念も、来週の
神戸新聞杯も同じG2。それにも関わらず、
菊花賞の過去10年では、
前走・神戸新聞杯組[8.7.5.50]に対し、
前走・セントライト記念組は
[1.2.2.43]。昨年のキタサンブラックが、この組としては01年のマンハッタンカフェ以来
14年ぶりの勝利というのは、いくらなんでも差がありすぎる。
もっとも01年以降、
セントライト記念に出走した春のG1馬はキストゥヘヴン(牝馬)とイスラボニータしかおらず、両馬は
菊花賞不出走。一方、
神戸新聞杯には春のG1馬がディープインパクトやオルフェーヴルなど13頭(19勝)もいるのだから、そもそも出走馬からして違うという話だ。
そんな
セントライト記念に、今年は
皐月賞馬ディーマジェスティが駒を進めてきた。その
皐月賞は8番人気の
低評価だったが、続く
ダービーでは1番人気に推されて0秒1差の③着と、決してフロックで
皐月賞を勝ったわけではないことを証明した。
他に
マウントロブソン(
スプリングS)、
プロフェット(
京成杯)、そして
ゼーヴィント(
ラジオNIKKEI賞)という重賞勝ち馬も見られたが、
ディーマジェスティのG1勝ちに加え
[3.2.1.0]という成績をもってすれば、単勝1.4倍の1番人気も当然……、当然なのだが。どうも中山で外々を回すと差し損ねそうな気もする、そんなレースが
セントライト記念でもある。
とはいえ。仮に差し損ねるにしても先行馬が結構揃ったメンバー構成で、前々から粘るのがどの馬かを予想するのも難しい。そんな中、
キークラッカー、
ケンホファヴァルトが前を占めたのはまず大方の予想通り。人気ところでは、2番人気
ゼーヴィントの3番手が一番前で、4~5番人気の
マウントロブソン、
メートルダールはもう中団というか、後方の前。そして
ダービーで先行した3番人気の
プロディガルサンは、後方で
ディーマジェスティと併走していた。
1000mの通過タイムがせっかく61秒0と先行馬には有利な流れになったのだが、それを活かせそうな上位人気馬は
ゼーヴィントだけ。この時点で、
ディーマジェスティの差し損ねはないのかな、というような雰囲気も漂っていた。
とかなんとか思っていたら、その直後。3コーナーにかかると、後方から
ディーマジェスティが一気にスパート。軽く気合いをつけただけで、あとは馬なりのまま大外から先行勢を飲み込んで4角で先頭を窺う位置まで進出。地力てねじ伏せに掛かる展開だ。
そして直線。
ディーマジェスティの後を追ってきた
プロディガルサンを突き放し、内から併せて出た
ゼーヴィントを交わし去ると、あとは
ディーマジェスティの独壇場……かと思いきや。残り200mを切ると、外の
プロディガルサンが半馬身差ほどに迫り、内の
ゼーヴィントも渋太く盛り返してきた。
これはさすがに強気に動きすぎだったか、例年の1番人気だったら失速して③着止まりもあっただろう。しかし、今回の
ディーマジェスティは「4角でねじ伏せ損ね」。そこで終わらず、結局ゴール前ではしっかりとねじ伏せて、
G1馬の底力を見せつける結果となった。
直線だけ見れば危なっかしい場面もあった
ディーマジェスティの勝ちっぷり。ただ、ペースが上がった3~4コーナーで一気に脚を使ったことや、まだ目標が先にあることも加味すれば、まずは
好発進と言えそうだ。
さて、次は
菊花賞。
ディーマジェスティは
皐月賞、
ダービーともに4角10番手だったが、
菊花賞を4角10番手以降から差し切った馬は96年のダンスインザダークまでさかのぼる。その点、今回はコース形態こそ違えど、3コーナーから脚を使ういい予行演習になっただろう。
他の
皐月賞・
ダービー上位馬では、マカヒキがフランス遠征、そして残念ながらリオンディーズは
戦線離脱。
神戸新聞杯を予定しているサトノダイヤモンド、エアスピネルという強敵は残るものの、春に比べればまだ戦いやすい。
皐月賞・
菊花賞の
二冠馬は12年のゴールドシップなどの名馬が名を連ねる一方で、
セントライト記念組の
菊花賞連覇など果たして実現するのかどうか。冒頭にも触れたように、
セントライト記念は少々残念なメンバー構成になる年も多いが、
ディーマジェスティがキタサンブラックに続ければ、
このレースの評価を一変させることにもなりそうだ。