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56kgで押し切ったマスクゾロの可能性も大きい?
文/編集部(M)、写真/森鷹史


出走馬11頭のうち7~8歳だった2頭の単勝オッズが100倍を超え、単勝20倍台が2頭、50~90倍台が2頭、それ以外の5頭が3.6~5.2倍で、単勝オッズ的には大きな段差がいくつも存在する組み合わせになった。

優勝候補は5頭(マスクゾロピオネロキョウエイギアアポロケンタッキーミツバ)に絞っていた人が多かったのだろうが、ハンデ戦ということもあり、どこに決め手を求めたらいいのか、最終決断をしづらい部分があったようだ。それが単勝オッズに表れていた。

1番人気にはマスクゾロが推されたが、前走のジュライSを6馬身差で勝利し、その時と同斤量(56kg)だったことを考えれば、単勝3.6倍というのは、多くの人が迷った表れだろう。

マスクゾロはこれまでの13戦が1900m以下で、2000mが初めてだった。2ヶ月半ぶりということもあり、最後のスタミナ面に不安を感じた人が少なくなかったのだろう。

2番人気だったピオネロはダートが2戦2勝で底の割れていない魅力があったが、こちらも芝ダート合わせて1800mを超える距離では勝ち鞍がなく、距離が200m延びるここで連勝を伸ばせるか、慎重に見る向きが多かったようだ。

3~4番人気には2000m以上に実績があったキョウエイギアアポロケンタッキーが推されたが、この2頭はともに休み明けキョウエイギアは3歳馬で古馬との実力差を測りづらく、アポロケンタッキーはハンデ57.5kgが気になる材料だった。

5番人気だったミツバは叩き2戦目(中1週)だったが、1800mを超える距離では実績がなく、ハンデ54kgであっても、昇級初戦での距離延長がポイントであることが明白だった。

こうしてみると、シリウスSというレースには、上手いことハンデ戦の2000mという難しい条件を作ったなあ、と思わせられる。シリウスSは、現在のJRAダート重賞で唯一2000mを超える距離だが、この距離に加えてハンデ戦ということが多くの迷いを生じさせたのだろう。接戦となった今回のゴール前を見ると、迷いだけでなく、好レースも演出したと言えるのかもしれない。

直線で外から迫ったアポロケンタッキーは高い地力を見せる内容だったが、最後にもうひと押しが利かなかったあたりが、斤量差の影響か。①着マスクゾロと②着ピオネロとは1.5kgの斤量差があった。

②着のピオネロは優勝したマスクゾロとクビ差だったが、長い審議が行われた通り、最後の直線で寄られる不利を受けた。JRAの裁決によると、「その影響がなければ8番ピオネロは1番マスクゾロより先に入線したとは認めなかった」とのことなので、そうと言われてしまえば仕方ないのだろうが、なんとも恨めしいゴール前だった。

ピオネロは今回が初のダート重賞挑戦で、実はちょっとした記録がかかっていた。

ピオネロネオユニヴァース産駒で、同産駒ではグレンツェントが今年のレパードSを勝ち、一昨年にはゴールスキー根岸Sを制していたが、右回りのJRAダート重賞では1頭も馬券に絡んだことがなかった。今回のレース前まで[0.0.0.15]という成績で、ピオネロにジンクスの打破が掛かっていたわけだ。

それが最後の直線で逃げ粘るマスクゾロに迫り、突き抜けるか!?というところまで迫ったので、力が入った。しかし、最後まで交わすことは叶わず、入線後に審議になったものの着順の入れ替わりもなく……。ジンクス打破はお預けとなってしまった。

ただ、今回のレースを見ても、ピオネロダート重賞で好戦できる力があることは明白となった。この馬自身は2000mよりも1800mの方が合うのだろうから、今後は1800m以下のダート重賞ネオユニヴァース産駒のデータを破るチャンスが出てきそうだ。

優勝したマスクゾロは、最後のゴール前で外にヨレてしまったあたりが初の2000mだった影響か。それでも近3走がすべて休み明けながら3連勝で、ダート重賞のトップ戦線に名乗りを上げた。今後は順調であれば、チャンピオンズCを視野に入れるようだ。

チャンピオンズCが行われる中京ダート1800mは、前走のジュライS6馬身差の圧勝を飾った舞台だ。G1ともなれば、今回よりさらに一段も二段も上の猛者たちを相手にすることになるのだろうが、この馬の先行力をもってすれば、気になる存在となるだろう。

シリウスSは過去に軽ハンデの馬が勝利するケースもあったが、一昨年はクリノスターオー57.5kgで勝ち、昨年は55kgアウォーディーが優勝した。

ご存知の通り、この2頭は現在もダート重賞のトップ戦線で走っていて、特にアウォーディーはこのレースをステップにG1タイトルを狙える位置まで上り詰めている。56kgで制したマスクゾロも、今後の可能性は小さくないと言えるのではないだろうか。