今後も良い意味でイメージ刷新を期待したい
文/編集部(W)、写真/川井博
父プリサイスエンド×
母父キャプテンスティーヴという配合のオーバースペック。いまの日本競馬界では珍しい
サンデーサイレンスの血を持たない血統馬だが、デビューから芝でメンバー中最速の上がりを連発しながら
③①②着。
新潟2歳Sで大外から鋭伸したその上がりはなんと
32秒9だった。
「実は母母父あたりにサンデーサイレンスの血を持っているのでは?」と疑いたくなるくらいの切れ味だが、実際、その位置にいるのは
ダイナガリバー。血統的なイメージとレースで見せるパフォーマンスがどうも一致しない。この
サウジアラビアロイヤルCに参戦してきた
ブレスジャーニーにも、同じような感想を抱いていた。
ブレスジャーニーは
バトルプラン産駒ながら、デビューから芝でメンバー中最速の上がりを連発して
③①着。東京芝1400mの
新馬戦で計時した上がりは
32秒9で、90年以降、東京芝の2歳戦で32秒9以内の上がりを計時した馬は他に11年10月の
新馬戦(芝1800m、①着)のサトノグロリアス(32秒9)、15年11月の
東京スポーツ杯2歳S(芝1800m、①着)のスマートオーディン(32秒9)しかいない。
サトノグロリアスは
父ジャングルポケット×
母父サンデーサイレンスで、ブエナビスタ、マンハッタンカフェなどの近親。スマートオーディンは芝で鋭い決め手を発揮していた
ダノンシャンティの産駒。いずれも1000m通過が66秒6、62秒4という超スローペースの芝1800mで計時した上がりで、血統や条件を見ると、なんとなくあり得そうな気がしてくる。
一方、
バトルプラン産駒の成績を見ると(16年10月10日終了時点)、芝は
[4.7.10.98]、ダートは
[18.24.22.220]で、実績はダートに偏っている。芝の4勝中2勝は
ブレスジャーニー、芝でメンバー中最速の上がりを計時した4回中3回も
ブレスジャーニーが記録したものだ。
ブレスジャーニーの
新馬戦は1000m通過60秒3の芝1400mで、
「上がり32秒9」を計時するにはサトノグロリアスやスマートオーディンよりも条件的には難しそうな感じ。実際、90年以降、芝1400mの2歳戦で上がり32秒9以内を計時したのは
ブレスジャーニーしかいない。こうしてみると、前述の
「バトルプラン産駒ながら」という表現を使いたくなるのも無理はないだろう。
ただ、
ブレスジャーニーは三代母が
ダイナカールで、オーバースペックとは違い、母母父には
サンデーサイレンスを持っている。
アルテミスSで上がり33秒3を計時して大外一気を決めた
母母父サンデーサイレンスの
メイショウサムソン産駒デンコウアンジュしかり。
サンデーサイレンスの血は母母父に入っていても、
瞬発力の源になり得るということか。
レースは
バリンジャーがゲート入りを嫌がったため、ゲートで待たされた馬には何かしらの影響を及ぼした可能性もあるが、
ブレスジャーニーはそんな様子も見せず、いつも通りにじっくりと後方から進む。
兄にはサトノノブレス、ヒカルオオゾラがいる1番人気
クライムメジャーは好位に付け、近親にマリアライト、アロンダイトなどがいて、
ダイナカール一族の
ルーラーシップを父に持つ2番人気
ダンビュライトは中団から。
直線に入り、抜け出しを図る
クライムメジャー。鞍上の
M.デムーロ騎手が外の様子を窺いながら追い出しを我慢していて、ここから突き放すかと思いきや、伸びはいまひとつ。そこに外から勢い良く伸びてきた
ダンビュライト、
ブレスジャーニーが競り合いながら抜け出す。
だが、
ダンビュライトは内にモタれて内ラチ沿いまで行ってしまい、
ブレスジャーニーもそれにつられた感じで内に切れ込む形となったが、
ダンビュライトを振り切り、今回も稍重馬場の中、メンバー中最速、出走馬中唯一となる33秒台の上がり
(33秒8)を繰り出して
重賞タイトルを獲得した。人気は良血2頭に譲る形(3番人気)となったが、②着
ダンビュライトには1馬身1/4差、
クライムメジャーは3馬身差の③着で、内容的には完勝と言っていいだろう。
ダイナカールの一族で、2歳戦から大活躍した馬と言えばアイムユアーズ(
ファンタジーS①着、
阪神JF&
函館2歳S②着)くらいで、どちらかと言えば3歳後半、古馬になって良くなる馬が多い。そう考えると、
ブレスジャーニーは
良化の余地を残していても何ら不思議ではない。
今後も良い意味で父系のイメージを刷新するような走りを見せてほしいものだ。
ダンビュライト、
クライムメジャーについてはレース後、
ルメール騎手と
M.デムーロ騎手が口を揃えて
「まだ子供」と話していたが、血統背景を考えても、こちらも
良化の余地は十分あるはず。昨年⑦着のトウショウドラフタがその後、3連勝で
ファルコンSを制し、
NHKマイルCでも⑤着と健闘を見せた例もある。敗れた馬のその後も注目しておいたほうがいいだろう。