11頭立てという頭数が大きく勝敗を分けた
文/編集部(T)、写真/森鷹史
今年の
富士Sは11頭立てという少頭数になった。
富士Sが重賞となって今年で19回目となるが、これまでの最少頭数は01年、04年の14頭立てだから、これは
抜けて少ない。
それでなくとも秋シーズンの古馬重賞はフルゲート割れのレースが多く、フルゲートとなったのはG1の
スプリンターズSと、マイル戦の
京成杯オータムHの2レースのみ。芝のマイル戦という条件は出走させる側にとっても使いやすいと思われるだけに、
富士Sがこれだけの少頭数となったのは少なからず驚きだった。
とはいえ、出走メンバーを見渡すと、これが
なかなかの好メンバー。前述の
京成杯オータムHを制した
ロードクエストをはじめ、同レースの③着馬で、昨年の
富士Sの覇者
ダノンプラチナ、さらに
イスラボニータ、ヤングマンパワーなどもいて、11頭中
重賞勝ち馬は実に8頭。G3として恥ずかしくないだけのメンバーは、十分に揃っていたといえるだろう。もしかして、これだけ揃っていたからここを避ける馬が増えたのかも!?
そうは言っても
少頭数は少頭数。レースを見ると、
この頭数が大きな影響を与えたと思わざるを得ない結果となった。
まずはペース。少頭数ではやはり上がりづらいもので、
前半600m通過は36秒3。
過去10年ではもっとも遅いペースとなった。
そのペースを作ったのはハナに立った
テイエムイナズマで、
ヤングマンパワーが好位の最内、
イスラボニータがその後ろで、ともにラチ沿いを走る形。結果的に、
この位置取りがベストポジションとなった。一方、1番人気の
ロードクエストはいつものように後方から進めた。
そして、勝負所を迎えて馬群が一団になり、逃げた
テイエムイナズマが
直線で馬場の真ん中に持ち出した。馬群が一団になっていたので、差し馬たちは内に入れるタイミングを完全に逸した感じで、さらにその外を回さざるを得ない。馬群に取りついて差を詰めにかかっていた
ロードクエストも、大きく外に振られる形となった。
とはいえ、この日の他の芝のレースと比べてみても、馬群がこのような動きになったのはこのレースのみ。実際、
内が極端に伸びない馬場ではなかったのだろう。
そこで内を突いたのが、道中も内で進めていた
ヤングマンパワーと
イスラボニータ。恐らく
ヤングマンパワーの
戸崎騎手と
イスラボニータの
ルメール騎手は
「え、ここ通っていいの?」という心境だったのではないか。ポッカリと空いた内をスイスイと伸びて
ヤングマンパワーが突き抜け、②着に
イスラボニータが入った。
勝ち時計は1分34秒0で、これは
富士Sがマイル戦となった00年以降で、
良馬場としてはもっとも遅いタイム。このあたりはやはり少頭数の影響だろう。
とはいえ、
ヤングマンパワーは前走の
関屋記念を
1分31秒8というタイムで勝ち切っており、2秒2も違う勝ち時計で連勝を決めたのは自在性の証明と言えそう。
マイルCSがどんな展開になるにしても、自身の力は発揮できるのではないか。
過去10年の
富士Sを振り返ってみると、勝ち時計がもっとも遅かったのは不良馬場となった11年の1分35秒0(勝ち馬
エイシンアポロン)、次に遅いのは13年の1分33秒5(勝ち馬
ダノンシャーク)で、この2頭はいずれも
後にマイルCSを勝っている。この結果を見る限り、
ヤングマンパワーも
マイルCSで侮れないかも!?
また、②着の
イスラボニータは
14年セントライト記念以来、実に2年ぶりの連対。展開が向いた面はあったにせよ、斤量58kgを背負って最後は1kg軽い
ヤングマンパワーに食らいついていた。まだ5歳で、老け込むには早いはず。今後も要注目だろう。
一方、1番人気の
ロードクエストは大外から
メンバー2位の上がり33秒6で伸びたが、差を詰め切れず⑨着。
最速の上がり33秒4を記録した
ガリバルディ(⑤着)も含め、展開や条件が全く向かない中でそれなりの脚を使っただけに、このあたりはG1で頭数が増えればまだ見限れないのではないだろうか。
少頭数のレースはそれなりに面白い面もあるが、やはり
多頭数で締まったペースのレースも見たいもの。
マイルCSではそんなレースを期待したいところだが、どうでしょうか!?