「強い馬が勝つ」菊花賞ならG1初制覇でも順当勝ちとも言えそう
文/浅田知広、写真/森鷹史
マカヒキが
凱旋門賞で大敗を喫してから半月と少々。今年も
ダービー馬不在の
菊花賞である。そう、今年「も」。以前の、
ダービー馬が出走しないほうが珍しかった時代とは一変している
菊花賞である。
人気の中心となったのは、その
ダービーで②③着を占めた
サトノダイヤモンドと
ディーマジェスティで、その前の
皐月賞は順番が入れ替わって③①着。さらに、今回の出走馬で
皐月賞・
ダービーとも「3番目」だったのが
エアスピネル(ともに④着)、そして「4番目」は
マウントロブソン(
皐月賞⑥着、
ダービー⑦着)。ここには出走していないマカヒキやリオンディーズも含め、さほど大きな入れ替わりのない春二冠だった。
では3つ目、
菊花賞は? 同じような結果が出るなら3連単は
「サトノダイヤモンド←→ディーマジェスティ→エアスピネル・マウントロブソン」あたりか。しかし、そんな事態にはならないという見方が大勢で(なので、逆にこの組み合わせを買ってしまった!)、
エアスピネルは6番人気、そして
マウントロブソンは12番人気にとどまった。
とはいえ、上位人気2頭と初対戦の馬が相手候補になっていたわけでもなく、3~5番人気は
神戸新聞杯で④②③着だった
カフジプリンス、
ミッキーロケット、そして
レッドエルディスト。このあたりの人気を見ると、実は「2強」なんかではなく、
神戸新聞杯勝ちの
サトノダイヤモンド「1強」じゃないのか、という様相だ。
レースはまず人気薄
ミライヘノツバサが先頭に立って落ち着くかと思いきや、
サトノエトワールがこれに競りかける展開に。スローの
神戸新聞杯で
サトノダイヤモンドが折り合いを少し欠いたので、同馬主の
サトノエトワールが速いペースを作るという思惑があったのかどうなのか。いずれにせよ、序盤の1000m通過は
59秒9と
7年ぶりの60秒未満となった。
その甲斐あってか
サトノダイヤモンドは、ペースが落ちた1コーナーあたりからも、まずまず落ち着いたレース運び。その後ろで
ディーマジェスティもこれをマークする形でレースは進み、3角手前から2頭が大外からまくり気味にスパート開始。ここまでは
下馬評通りの一騎打ちになるか、という展開だった。
しかし4コーナー、異変が起きたのは大外
ディーマジェスティだった。
前走・セントライト記念では同じように大外から、ほとんど持ったままでまくり切るかという強い競馬を見せたものだが、今回は
蛯名騎手の手が激しく動き、4コーナーでは左ムチが飛んでいた。
一方、その内で
ディーマジェスティの動きを見ていた
サトノダイヤモンド。こちらは前走の
神戸新聞杯と同様で、まったく楽な手応えのまま直線へ。そして、一度使った上積みの分だろうか、直線の脚色は
ミッキーロケットに迫られた
神戸新聞杯以上だった。
残り300mあたりで先頭に立ち、ようやくしっかり追い出されると、後続をぐんぐんと突き放す一方だ。レース直後の印象は
「きさらき賞か!」。デビュー3連勝を飾った今年2月の
きさらぎ賞は、断然人気に応える3馬身半の快勝劇。今回は2馬身半差だったが、
それくらいの強さを感じる圧倒的な勝利だった。
そして②着は、後方から伸びた「
ダービー⑧着の」
レインボーライン(9番人気)。そして③着には、道中で少し掛かりながらも踏ん張った「
ダービー④着の」
エアスピネル(6番人気)。春の順番通りの①~③着にはならないだろう、そんな大方の予想は当たっていたが、間に入る馬が人気とはまったく違った、という結果になった。
と、②着以下はいろいろ入れ替わりがあったものの、
ダービー馬不在の
菊花賞を制したのは、
ダービー②着馬
サトノダイヤモンド。もともと
皐月賞では1番人気に推された馬でもあり、
「強い馬が勝つ」菊花賞なら
G1初制覇でも順当勝ち、とも言えるだろうか。この勢いに乗って雪辱を果たしたい相手マカヒキは、残念ながら年内休養。次はまず古馬相手に力試しだ。
これで関西では
5戦5勝、しかし
ジャパンCや
有馬記念がある関東では③②着。全成績
[5.1.1.0]の馬から
あら探しをしようとすれば、もうこのあたりしかない。まあ、
ディープインパクト産駒未勝利だった
菊花賞で
これだけの強さを見せたのだから、自身のその程度の結果なら、あっさり覆してくれそうだ。