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ハーツクライとディープインパクトの関係性は、産駒にも受け継がれている!?
文/編集部(M)、写真/川井博


1対5。これは何かと言うと、今年のアルテミスSにおけるディープインパクト産駒ハーツクライ産駒の頭数だ。ディープインパクト産駒フローレスマジックだけだったのに対して、ハーツクライ産駒リスグラシュートーホウアイレスヒストリアヴィーナスフローラハートオブスワローと5頭が顔を揃えた。

競馬は種牡馬別の団体戦ではないし、同じハーツクライ産駒でも馬主や厩舎は異なっていたので、お互いに意識することはなかっただろうが、レースで血統に注目している者にとってはどちらの産駒が先着するか、興味深いメンバー構成だった。

1番人気に推されたのがハーツクライ産駒リスグラシューで、同産駒で次の上位人気だったのはトーホウアイレス(3番人気)。対してディープインパクト産駒フローレスマジックは2番人気で、結果的に、両産駒の大将格の存在が他馬を引き離して接戦をすることになった。

ディープインパクト産駒フローレスマジックラキシスサトノアラジンの全妹だが、姉兄とは違って関東馬で、美浦の木村哲厩舎の所属だ。東京芝1600mの前走で初勝利を挙げていて、コース経験があり、関西馬に比べれば輸送距離も短いから、それらは有利に映った。

対して、ハーツクライ産駒は、5頭のうちリスグラシューヴィーナスフローラ関西馬で、この2頭は関東への遠征が初めてだった。ヴィーナスフローラは前走時馬体重が486kgで馬格があるタイプだったが、リスグラシューは前走時馬体重が432kg。大きさだけで考えれば、リスグラシューに対する不安の方を大きく感じた。

ところが、馬体重が発表されると、リスグラシュー(4kg減の428kg)よりもフローレスマジック(12kg減の438kg)の方がマイナス幅が大きかったリスグラシューが中6週だったのに対して、フローレスマジックは中2週で、この間隔の影響もあったのかもしれない。

リスグラシューの428kgというのは、今回の18頭の中で4番目に小さく、フローレスマジックの438kgは7番目の小ささだった。どちらもマイナス体重で、決して万全の体調だったとは思えないが、33秒3~33秒5という上がりを計時して、後続に決定的な差を付けた。この2頭は別次元の世界を目指しているかのようだった。

出走間隔や馬体重の減少による影響があったのかどうかは定かではないが、今回はハーツクライ産駒リスグラシューディープインパクト産駒フローレスマジックに先着を果たした。リスグラシューは前走の阪神芝芝1800mでレコードを樹立していたが、左回りや外を回る形でも遜色ない末脚を披露した。フローレスマジックが迫ってからも抜かさせず、まだまだ能力を隠しているような走りだった。

ハーツクライ産駒がJRAの芝重賞で優勝したのはこれで31度目で、アルテミスSは第1回にコレクターアイテムが勝利しているから、リスグラシューが2頭目の勝ち馬になる。ちなみに、コレクターアイテムが制した第1回(2012年)は半馬身差の②着馬がディープインパクト産駒(アユサン)で、②着から③着の差が3馬身だった(今回は②着と③着の差が3馬身半)。

ディープインパクト産駒はJRAの芝重賞で135勝を挙げていて、その数だけならハーツクライ産駒よりもディープインパクト産駒の方が上だと言えるだろうが、直接対決、しかも①着&②着でしのぎを削った時はどちらが上とも言えない成績が残されている。

JRAの芝重賞において、ディープインパクト産駒が優勝し、②着にハーツクライ産駒が入ったことは5回ある。その5回とは、14年チューリップ賞(①着ハープスター、②着ヌーヴォレコルト)、14年秋華賞(①着ショウナンパンドラ、②着ヌーヴォレコルト)、14年エリザベス女王杯(①着ラキシス、②着ヌーヴォレコルト)、15年オールカマー(①着ショウナンパンドラ、②着ヌーヴォレコルト)、15年エリザベス女王杯(①着マリアライト、②着ヌーヴォレコルト)だ。

②着馬はすべてヌーヴォレコルトで、これを見ると、彼女はディープインパクトの娘のことを嫌いになってるんじゃないかと邪推してしまう(笑)。そして、ディープインパクト産駒がいないであろうブリーダーズカップフィリー&メアターフは、勝つ可能性も高いんじゃないか。

JRA芝重賞での勝利数は、ディープインパクト産駒135勝で、ハーツクライ産駒31勝だから、当然、ハーツクライ産駒ディープインパクト産駒を抑えて優勝した回数は、逆のパターンに比べて少ないと思うだろうが、これがそうでもない。実は、①着ハーツクライ産駒・②着ディープインパクト産駒というケースは6度もある。

今回のアルテミスSが6度目で、過去5回は、前述した12年アルテミスSを皮切りに、13年天皇賞・秋(①着ジャスタウェイ、②着ジェンティルドンナ)、14年オークス(①着ヌーヴォレコルト、②着ハープスター)、14年七夕賞(①着メイショウナルト、②着ニューダイナスティ)、15年ダイヤモンドS(①着フェイムゲーム、②着ファタモルガーナ)と続いている。

この勝負強さは何だろうか。ディープインパクトに初めて土を付けたのがハーツクライだったが(05年有馬記念)、その関係性は産駒にも受け継がれているのだろうか。

前述した通り、第1回のこのレースで②着に敗れたアユサンは、その後に桜花賞を制していて、昨年の桜花賞馬レッツゴードンキも、アルテミスSでは②着に敗れている。他には、阪神JFNHKマイルCを制したメジャーエンブレムもこのレースで②着となっていて、重賞3勝のバウンスシャッセは⑩着、重賞2勝のシングウィズジョイは⑥着に敗れている。

アルテミスSで敗れた組みからはその後の活躍馬が何頭も誕生しているわけだが、優勝馬でその後にOPで勝利を収めたのはココロノアイ(チューリップ賞勝ち)だけなので、リスグラシューにはそのジンクス打破も願いたいところだ。

なお、リスグラシューの母リリサイド(Liliside)は、2010年フランス1000ギニーで接戦を制して1位入線を果たしたが、降着処分(⑥着)となった馬だ。来春の桜花賞リスグラシューが勝てば、国境7年の月日を超えて母の無念の晴らすことになる。