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例年の勝ち馬より本番でも好走しやすそうで、あとは枠順次第!?
文/出川塁、写真/稲葉訓也


マイルCSの前哨戦という位置づけのスワンSだが、その1週前には本番と同距離の富士Sがあり、翌日には天皇賞・秋が行なわれる。特に天皇賞・秋は格式の高いG1であると同時に、マイルCS(およびジャパンC)の最有力プレップという側面を持っている。

事実、過去10年のマイルCS勝ち馬には秋天組が4頭もいる。また、富士S組からも2頭の勝ち馬が出ているのに対して、スワンSは1頭のみと劣勢に立たされているのが現状だ。その1頭、10年のエーシンフォワードにしてもスワンSでは⑧着に敗れており、本番と着順がリンクしていたわけではない。マイル戦でもG1になると中距離もこなせるスタミナが要求される厳しいレースになることがしばしばあり、本番より1ハロン短い1400mで行なわれるスワンSはその点で不利になってしまうのだろう。

なんてことを思いながら今年のスワンSを観戦していたら、2番人気のサトノアラジンが大外から凄まじい脚を使って差し切ってしまった。勝つときはとにかく強い勝ち方をする馬で、今回も例に漏れず呆れるほどの強さだった。

春の京王杯SCに続いて、これで1400mは2戦2勝。1600mと合わせても[4.2.1.2]で、④着以下に敗れた2走も昨年のマイルCSと今年の安田記念でいずれも④着だから、1400~1600mではほぼ凡走なしと言っていい。3歳時には菊花賞で⑥着、直線の不利がなければ馬券圏内も十分にありえたレースで、中距離以上をこなすスタミナも備えているものの、結局はマイル前後がベストだったようだ。その意味で、例年のスワンS勝ち馬より本番でも好走しやすいタイプなのは間違いないと思う。

ただし一点、本番では枠順に注意したい。大外を回れば豪脚を繰り出すサトノアラジンだが、インを突こうとしたり、馬群を割って出ようとしたりすると途端に末脚が鈍ってしまうからだ。

この傾向は、国内の枠順別成績にもハッキリと表れている。まず7、8枠は[5.1.0.1]と完璧に近い成績で、連対できなかったのは直線で不利があった菊花賞のみ。次いで5、6枠は[2.1.0.3]と凡走も増えるものの、このぐらいの枠なら大外に持ち出すのもさほど難しくはなく、重賞2勝はいずれもここから決めている。ところが、1~4枠では[0.2.3.2]と、7戦して一度も勝ったことがない。実際、内枠スタートから直線でインを突いた昨年のエプソムCや今年のダービー卿CTは、伸びそうで伸びないもどかしい走りを見せていた。

スワンS出走時で532キロ。以前にも増して立派な馬体になってきたが、反面、内枠ではますます窮屈な走りになってしまう危険性がある。よほどの能力がなければG1を大外ブン回しで勝てるものではないが、わかっていてもそうしなければ能力全開が難しいのがサトノアラジンという馬。まずは真ん中より外の枠を引くのがG1勝利への第一歩で、あとは大外に持ち出して届くかどうか。いずれにしても小細工なしの勝負を貫くしかないだろう。

②着にも同馬主のサトノルパンが入った。オーナーは里見治氏。サトノダイヤモンドでG1を初制覇した翌週に今度は持ち馬がワンツーを決めるのだから、憑き物が落ちるとはまさにこのことだ。

ディープインパクト産駒のワンツーともなったが、サトノルパンは隊列が定まってペースが落ち着いたところで行きたがるところを見せていたように、気性の関係もあってスプリント志向が強い。こちらはマイルCSではなく、京阪杯連覇を目指すことになるのではないだろうか。

3番人気に支持された昨年の勝ち馬アルビアーノは、好位置につけたものの直線はじりじりとしか伸びずに⑥着まで。休み明けの影響に加えて、サンデーサイレンスの血を持たないこの馬にとって、ディープ産駒がワンツーを決めるような展開も合わなかったかもしれない。

その意味で、1番人気のディープ産駒フィエロにとっては少々不甲斐ないレースになってしまったか。スタートのタイミングが合わずに後方からの競馬となり、直線では馬群の真っ只中に突っ込む苦しいかたちで⑨着に敗れた。まったく力を出しておらず度外視できる内容ではあるが、過去2年連続②着で今年こそ戴冠を目論むマイルCSに向けて好発進を切ることはできなかった。