道中での位置取りも考えれば、完勝の内容だった
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
ゼンノロブロイ、
フジキセキ、
スペシャルウィーク、
マンハッタンカフェ、
ダイワメジャー、
ヴィクトワールピサ、
キンシャサノキセキ。
この馬たちが何を意味しているか、分かるだろうか。いや、分かりませんよね。分かるのは
ノーザンファームの人ぐらいでしょう。
この馬たちは
モンドキャンノの母
レイズアンドコールが繁殖入りしてからの
配合相手だ。
レイズアンドコールは06年の
アイビスサマーダッシュで③着に入るなどの活躍をして(中央5勝)、07年に繁殖に上がった。その後は、上記の通り、毎年
異なる種牡馬と配合され、2014年に誕生した
キンシャサノキセキ産駒が後の
モンドキャンノだ。
レイズアンドコールは
サクラバクシンオー産駒で、母父が
サクラバクシンオーという馬では、
キタサンブラック(
ブラックタイド産駒)や
ハクサンムーン(
アドマイヤムーン産駒)、
アデイインザライフ(
ディープインパクト産駒)、
ブランボヌール(
ディープインパクト産駒)などがいる。
ハクサンムーンや
ブランボヌールが短距離で活躍している一方、
アデイインザライフや
キタサンブラックは2000m以上の重賞を制していて、母父
サクラバクシンオーという馬は、想像以上に
活躍距離の幅が広いと言えるだろう。
レイズアンドコールに配合されてきた種牡馬を見ると、いずれも父が
サンデー系という共通点はあるものの、その
活躍距離は様々で、いろいろなタイプの産駒が生まれる可能性があったように思う。
その中から
フジキセキ産駒の
ブルーイングリーンが中央で2勝を挙げ、
ダイワメジャー産駒の
ラクアミが今年10月に3勝目(
久多特別)をマークした。そして、今回の
モンドキャンノによる
重賞制覇で、この馬には
よりスピード面を強調した配合が合うことが判明してきたのではないか。
モンドキャンノは父
キンシャサノキセキ×母父
サクラバクシンオーという、
芝1200mのG1を2回ずつ優勝した馬を掛け合わせられた配合になる。
函館芝1200mでのデビュー戦を期待通りに快勝し、続く
函館2歳Sでは圧倒的な1番人気(単勝1.8倍)の支持を集めた。ところが、レースでは先に抜け出した
レヴァンテライオンを捕らえきれず、②着に敗れてしまった。
函館2歳Sでは序盤に行きたがる面を見せ、そのことが惜敗につながったように映ったので、今回の
京王杯2歳Sは、休み明け(3ヶ月半ぶり)に加えて距離が
1400mに延び、さらには
大外枠となったことがポイントだと思われた。この条件で、果たして上手く
折り合えるのか。
大外枠で最後のゲートインとなった
モンドキャンノは、スタートしてしばらくはやはり行きたがっていた。それでも他馬の後ろに入れられると落ち着いた様子になり、直線に向いた時には鞍上(
ルメール騎手)の手応えも良さそうだった。
内から抜け出しを図ったのが1番人気の
レーヌミノルで、こちらも休み明けでの距離延長という臨戦だったが、レースで走ってきたところを比較すると、終始
外を回っていた
モンドキャンノの方が分が悪いように思われた。しかし、
モンドキャンノは
ルメール騎手が追い出すとしっかりと脚を伸ばし、
レーヌミノルを捕らえ切った。着差は半馬身だったが、内容は
完勝と言えた。
鞍上の
ルメール騎手はこの勝利がJRAでの重賞
36勝目で、
8枠では10勝目になる。今年の
神戸新聞杯を8枠14番の
サトノダイヤモンドで制していて、東京競馬場では
フローラSを8枠18番の
チェッキーノで優勝している。枠順別勝利数を見ると、
8枠での10勝というのは
1枠での8勝を抑えての
1位。いかに外枠でよく重賞制覇を飾っているかが分かる。
関東の競馬をよく見ている者としては、
戸崎騎手、
田辺騎手、そして
ルメール騎手と
M.デムーロ騎手が外枠でもよく好走している印象があり、今回も
ルメール騎手がその能力を引き出す格好になった。
ルメール騎手が乗ると、本当に馬が最後までよく伸びてきますね。
このレースを制したことで、
モンドキャンノの次走は
朝日杯FSになりそうだが、さらに距離が延びる点がどう出るかだろう。
キンシャサノキセキ産駒は芝の特別競走で
13勝を挙げているが、その内訳は、
1000mで3勝、
1200mで7勝、
1400mで2勝、
1600mで1勝。
朝日杯FSでの
モンドキャンノは、
枠順がどこになるか、そして
鞍上が誰になるかがポイントになってくるのではないだろうか。
②着に敗れた
レーヌミノルは、今回は完敗だったが、2ヵ月ぶりで
初の左回り、
初の関東遠征、
初の東京の坂という条件だったことを考えれば、収穫の多い内容と言えるだろう。
レーヌミノルは父
ダイワメジャー×母父
タイキシャトルという配合で、こちらは
芝1600mのG1を3勝以上ずつ挙げている父と母父の組み合わせになる。祖母が父
ロイヤルスキー×母父
テスコボーイで、スピードが勝ったタイプかもしれないが、経験を積んでいくことで距離は
1600mでもこなせるようになりそうだ。
京王杯2歳Sは、昨年は①着
ボールライトニング(
ダイワメジャー産駒)、②着
アドマイヤモラール(
キンシャサノキセキ産駒)という決着で、今年は①着
キンシャサノキセキ産駒(
モンドキャンノ)、②着
ダイワメジャー産駒(
レーヌミノル)となった。このレースを父
サンデー系の馬が制したのは昨年が初めてだったが、今年は①着~⑥着を同父系の馬が占めた。もはや父
サンデー系に逆らえない重賞となったのだろう……。
今年優勝した
モンドキャンノは、冒頭で記した通り、母父が
サクラバクシンオーで、つまり、母父の母父が
ノーザンテーストになる。昨年に②着となった
キンシャサノキセキ産駒の
アドマイヤモラールは祖母の父が
ノーザンテーストだった。
昨年に勝ち馬を送り出し、今年は②着馬を出した
ダイワメジャーは母の父が
ノーザンテースト。
京王杯2歳Sは
ノーザンテーストを持つ馬がよく好走していて、2010年には
サクラバクシンオー産駒の
グランプリボスが勝ち、同産駒は一昨年に
ニシノラッシュが③着となっている。
ダイワメジャー産駒も2011年に
オリービンが③着、2013年に
ラブリープラネットが③着に入っているから、来年は父
サンデー系に白旗を振りつつ、
ノーザンテーストを持つ馬を探すようにしたいと思います。