シュヴァルグランが権利を行使できるのはどのレース!?
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
アルゼンチン共和国杯といえば。先日の
天皇賞・秋を制したモーリスの祖母メジロモントレーが1990年に豪快に差し切ったレースで……、などと昔話をはじめると長くなるので、過去10年くらいを見ると。07年のアドマイヤジュピタと、10年のトーセンジョーダンは、それぞれ翌年の
天皇賞(春と秋の違いはあるが)を制覇。また、08年のスクリーンヒーローが次走で
ジャパンCを、さらに昨年のゴールドアクターは次走で
有馬記念と、ここ10年の勝ち馬のうち4頭は、1年以内にG1タイトルを獲得している。
ほかにはなぜか⑤着馬が、同年、翌年のG1で計
[4.1.3.14]。ジャガーメイルにビートブラック、ラブリーデイがG1勝ちを飾っているが、さすがに⑤着狙いはあり得ない。ともあれまずは、ハンデ戦とはいえ、
ここを勝つことがG1制覇への近道だ。
今年の出走メンバーは15頭。年によってはG1馬が何頭か、重ハンデを背負って出走することもあるが、今年は
14年ダービー馬ワンアンドオンリー(58キロ)1頭だけで、7番人気。基本的に上位人気馬が安定しているレースで、傾向通りなら、
勝った馬がG1初制覇へ大きく前進、ということになる。
その上位人気、今年は1~4番人気が3.4~5.4倍という混戦で、
モンドインテロ、
シュヴァルグラン、
ヴォルシェーブ、
アルバートの順。このうち、
モンドインテロと
ヴォルシェーブは大崩れがない一方で重賞では最高⑤着と、これから実績を重ねていきたい馬。対して
シュヴァルグランは今年の
阪神大賞典を2馬身半差、そして
アルバートは昨年の
ステイヤーズSを5馬身差で圧勝と、すでに「ひとつ上」とも言える別定G2を勝った馬に色分けされた。
レースは一昨年の②着馬
クリールカイザー(6番人気)の先導で、画面に表示された1000m通過タイムは62秒9とゆったりした流れ。しかし、さすがにこの路線の古馬というべきか、大きく折り合いを欠く馬は見られず、さらに終盤には長い直線が待っているとあって、2コーナーと4コーナーの通過順位差は全馬「2」以内。このレースではありがちながら、4コーナーまでに後退する先行馬も皆無で、
非常に落ち着いた展開だった。
もっとも、通過順位が変わらないというだけで、前との差を詰める馬はあり、人気どころで目立ったのは、後方から大外をまくっていった
ヴォルシェーブ。残る人気3頭は、おのおの自分の位置をキープして4コーナーを通過した。
そして直線。大外の
ヴォルシェーブの動きが目立ったが、その内に併せていったのが、やや前で待ち構えていた
シュヴァルグラン。2頭の間に入ろうとして、エンジンの掛かりが少し遅かった
アルバートは、この2頭を追いかける形となった。そして、外の動きに目を奪われている間に、内から抜け出してきたのが1番人気の
モンドインテロ。逃げた
クリールカイザーもよく粘っていたものの、残り200mを切ると上位人気4頭の追い比べとなった。
中でもいちばんの伸びを見せたのは、この4頭でもっとも重いハンデ58キロを背負っていた
シュヴァルグラン。最後は盛り返してきた
アルバートに詰め寄られたものの、これで
阪神大賞典に続く
2度目のG2制覇だ。
その
阪神大賞典の次走、前残りだった
春の天皇賞では、差し馬勢としては最先着(③着)こそ果たしたものの、姉ヴィルシーナ(
ヴィクトリアマイル)には追いつかず、妹ヴィブロス(
秋華賞)にも先を越された。しかし秋初戦のここを制して、スクリーンヒーローやゴールドアクターなどに続き、
G1馬への「権利」をもう一度獲得した、と言ってもいいだろう。
ジャパンCか
有馬記念か、はたまた
春の天皇賞か。権利を行使できるのはどのレースになるだろうか。
そして②着には、同じく人気馬の中でもG2タイトルを持っていた
アルバート。さらに、一時は差し切る勢いだった
ヴォルシェーブ、内からよく伸びた
モンドインテロと、いずれも上々のレース内容ではあった。
ただ、過去10年このレースの②~④着馬は、同年・翌年のG1で
[1.2.3.26]。①着は
14年コーフィールドCを制したアドマイヤラクティだけで、国内に限れば
G1未勝利。翌々年になれば勝っている馬もいる(ジャガーメイルとアーネストリー)が、この勝ち負けの差が、後々まで明暗を分けることになってしまうのか、少し気になるところではある。
ちなみに、個人的に注目していた「⑤着」を確保したのは、14年の優勝馬
フェイムゲーム。
15年春の天皇賞ではゴールドシップのクビ差②着で、惜しくも「権利」を行使し損ねたが、もしかしたら来年は、セン馬による
天皇賞初制覇なんてこともあるかもしれない。