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中1週ですぐさまリベンジ、1.5キロ減の効果は絶大だった!?
文/出川塁、写真/森鷹史


単勝人気順は3番目でも、今年のみやこSでいちばん注目されたのはラニだろう。日本馬としてはじめてUAEダービーを勝ち、その後はアメリカの三冠路線に参戦。三冠目のベルモントSでは③着に食い込んだ。世界を股にかける活躍に加えて、ゆっくりとしたスタートから道中でマクっていく芦毛馬というゴールドシップを彷彿とさせるキャラクターで、早くもファンに愛される馬になりつつある。

しかし、国内復帰2戦目となった今回は⑬着に大敗してしまう。1番枠を引いたうえに、スタートからゴールまでほぼワンペースで緩むところがなく、馬群の外からマクっていきたいこの馬にとっては枠も流れも不向きだった。昨年のカトレア賞以来、前走まで7走続けて左回りコースを走っており、久しぶりの右回りに戸惑った部分もあったのかもしれない。

この馬が好走した海外の2戦を振り返ると、UAEダービーは7頭の少頭数戦。また、ベルモントSの行なわれるベルモントパーク競馬場は1周2400mという大回りのゆったりとしたレイアウトで、頭数も13頭立てと多くはなく、のんびり屋で馬群を嫌がるラニには走りやすい条件だった。

アメリカ生まれのTapit産駒という出自を考えても、海外のほうが合っている部分はあるのだろう。今回は残念な結果になってしまったが、「強い馬」はいても、ラニのような「強くて面白い馬」はそうそう現れるものではない。国内外を問わず、その実力を発揮しやすいレースに出走して欲しいものだと思う。

そんなラニを尻目にみやこSを制したのは、4番人気のアポロケンタッキーだった。前走のブラジルCでは、単勝1.7倍の圧倒的支持を裏切る⑧着に敗れていたが、中1週で出走したここですぐさま借りを返すことに成功した。

スタート直後は前に行く構えを見せたものの、すぐ外の枠からインカンテーションアスカノロマンがさらに押していったこともあって中団の7番手に控える。緩みのない流れのなか、3角過ぎから進出を開始してロングスパートを仕掛けても直線で脚色が鈍ることはなく、最後までグレンツェントの猛追を凌いでゴール。テン乗りながら、2000m以上の距離で台頭したこの馬のスタミナを存分に活かした松若風馬騎手の騎乗も光り、嬉しい重賞初勝利となった。

加えて、もうひとつ触れておきたいのが斤量のことだ。2走前のシリウスS、前走のブラジルCと57.5キロのハンデを背負っていたのだが、「今年オープン特別を2勝しているといっても、重賞未勝利馬に対するハンデとしては厳しいのでは?」と思ったのだ。もちろん、「レース前に気づけよ」というのは言いっこなしである。

そこで「今年、中央ダートの重賞・オープン特別のハンデ戦で57.5キロ以上を背負った馬」を調べてみたところ、該当馬は全部で8頭いて、アポロケンタッキー以外の7頭はすべて重賞(地方交流も含む)勝ち馬ということがわかった。

要するに、57.5キロ以上のハンデというのは基本的には重賞勝ち馬に課されるもので、重賞未勝利のアポロケンタッキーにとっては多少厳しいものだったのだろう。その点、みやこSはいわゆる「グレード別定」で、ここは56キロで出走できた。560キロ以上の超大型馬といっても、この1.5キロ減の効果は絶大だったようだ。

惜しくも②着のグレンツェントは、ゴール前の脚色では勝っていたものの、先に動いた勝ち馬も止まらずクビ差届かなかった。とはいえ、本格化が遅い傾向のあるダート路線において、3歳秋にこれだけやれれば楽しみは大きく膨らんだ。しかも、関西遠征も古馬挑戦もはじめてという条件でもあった。願わくは馬体があとひと回り、500キロ近くまで成長すれば天下を獲っても不思議はない。

不本意な結果に終わったのが、2番人気⑭着のアスカノロマン。ここ2年半にわたってのパートナーだった太宰啓介騎手から、今回は和田竜二騎手にスイッチしての一戦となったが、その意気込みも虚しく思わぬ大敗を喫することになってしまった。馬体重プラス10キロとデキもひと息だったのかもしれないが、それにしても負けすぎの印象で、4週後のG1に向けて巻き返しが急務となった。