低評価に反発、レコード更新で重賞2勝目!
文/浅田知広、写真/森鷹史
チャンピオンズCへ向けたステップレースとなる
武蔵野S。とはいえ先週、
JBCクラシック・スプリントがあった上、中央でも
みやこSがあったために少しばかり手薄、G3らしいとも言えるメンバー構成になった。そんな中での注目はもちろん、同コースで今年の
フェブラリーSを制した4歳馬
モーニン、そしてその勝利ゆえに背負った
斤量59キロということになった。
少し古い話をすれば、このレースのオープン特別時代、90年にダイナレターが
62キロを背負った勝ったという記録もあり。最近のダート重賞では、昨年の
プロキオンSを
59キロのベストウォーリアが勝つなど、決して悪くない成績を残している。まあ、
モーニンの地力を考えれば
なんとかなりそうな感もあり、そんな
ファンの総意が1番人気(2.5倍)という支持に繋がった。
もっともこのレース、過去10年4歳馬は
[1.2.2.20](複勝率20.0%)とイマイチ。対して3歳馬が
[4.1.3.18](複勝率30.8%)と通用するどころでは済まない活躍を見せており、今年の筆頭格は
ゴールドドリーム。前走の
ジャパンダートダービーこそ③着敗退も、このコースでは
ユニコーンSを制覇。また、当時③着に下したグレンツェントが先週の
みやこSで②着に入っており、当然こちらも好勝負、ということで3.4倍の2番人気。続く
ノボバカラは6.5倍とやや離れており、まずこの2頭が有力とみられる中で発走を迎えた。
まずレースを引っ張ったのは、逃げて条件戦を連勝中の
ドリームキラリ。注目の
モーニンも好ダッシュで5番手あたりにつけ、まずは上々……かと思いきや、掛かり気味。その後の馬群で
ゴールドドリームも抑えるのにひと苦労と、なにやら
怪しい展開だ。
一方、前は前で
タガノトネールが引っ張りきりのまま先頭の
ドリームキラリに並びかけており、見た目はスローだ。実際、前半600mは重馬場で34秒5。ここ2年の良~稍重の34秒台前半だっただけに、通過タイムとしても極端には速くない。
さて、この展開。先行勢の位置取りが活きるのか、それとも脚抜きの良いダートで芝並みの末脚を使える馬が勝つのか、と思って見ていれば。4コーナーですぽんと抜け出したのが、抜群の手応えで先行していた
タガノトネール。直線で追い出されると、あっという間にリードを2馬身、3馬身と広げていった。
対して人気の
モーニンは、馬群で揉まれて苦しい上に、どうやら余力もあまりなさそうな脚色だ。その直後で
ゴールドドリームも前が詰まったが、こちらは外に持ち出すと末脚発揮。伸び悩む他馬を置き去りにして徐々に前との差を詰めていったものの、なにせ直線入口での
タガノトネールとの差が大きすぎて、最後は1馬身少々に詰め寄るまで。
タガノトネールが3角先頭からほぼ「逃げ切り」で、15年の
佐賀・サマーチャンピオン以来となる
重賞2勝目を飾ったのだった。
そして驚いたのはその
勝ちタイム・1分33秒8のコースレコード。従来の
レコードは、同じ重馬場だった今年の
フェブラリーSで
モーニンが記録した1分34秒0。当時は前半34秒1だったが、そこからの1000mは59秒9。対して今回は34秒5-59秒3。
タガノトネールが先頭に並んだ3角以降が速かったということになる。
当方が
「芝並みの末脚」を期待して買った
カフジテイクは、大外から上がり34秒2の脚で追い込んだものの、さすがにこの展開では③着までが精一杯だ。
優勝した
タガノトネールは、今年の
フェブラリーSでは直線半ばで先頭に立つ見せ場を作りながら、追い比べで遅れをとって⑥着敗退。一方、昨年の
武蔵野Sでは4角先頭から、最後はノンコノユメの豪脚にこそ屈したものの、ハナ差②着で③着には2馬身差。同じ東京1600mでも、昨年のこのレースに近い走りで今度はタイトルを勝ち取った。
こうして改めて昨年の走りを見ると(その前の
南部杯②着も含め)、今回の8番人気は少し低評価されすぎていた感もある。いずれにしても、今年の
根岸S④着以来、まだ2回目の騎乗だった
田辺裕信騎手が、
この馬の持ち味を存分に引き出した勝利だったと言えるだろう。
さて、次は
チャンピオンズC……となるのかどうか。芝では2000mの
新馬戦を勝っているものの、ダートは1700mが最長で⑧着敗退を喫している。今日の道中を見ても、果たして1800mで折り合いをつけられるかがカギになる。
もっとも、
南部杯も
JBCスプリント(今年は1400m)も終わってしまったので、年内にさしたる目標がないのも確か。せっかく勢いに乗ったところで、休ませるのももったいない感もあるだけに、ここはひとつ、ぜひ
チャンピオンズCに駒を進め、レースを一層盛り上げてほしいものだ。