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今年の①②着馬は魅力十分、雑音をかき消すような活躍を!
文/出川塁、写真/稲葉訓也


14年が8頭立てで、昨年は12頭立て。そして、今年も10頭立て。東京スポーツ杯2歳Sなど、近い時期に中距離戦が少なからず組まれていることもあって、例年頭数が揃わない京都2歳Sだが、重賞格上げ後ではもっとも内容のあるレースになったのではないか。

戦前に注目されたのはヴァナヘイム。近親の二冠馬ドゥラメンテとは配合もよく似ており、POGなどでも早くから評判になっていた。8月小倉の新馬戦をまったくの馬なりで勝利。2戦目の萩Sはスローペースの展開を差し届かず②着に敗れたものの、力負けではないと見られ、ここでも1番人気の支持を集めることとなった。

レースは少頭数らしい淡々とした流れとなる。1コーナーで隊列が決まったあとは大きな動きもなく、勝負どころの3、4コーナーへ。このあたりで中団の外につけたヴァナヘイムが進出を開始し、先行集団を一気にツブしにかかる。直線を向いて、少し内に切れ込みながら抜け出した瞬間の脚は実に速く、それこそ昨年の皐月賞でドゥラメンテが見せた豪脚がオーバーラップしたぐらいだ。

ただし、それも一瞬のことではあった。馬群を抜け出すまでのアクションには一流馬の風格さえ漂っていたが、先頭に立ってからの伸び脚は案外で、外から伸びたカデナに差し切られてしまう。馬場が荒れ気味のインコースに切れ込んだぶんもあったはずだが、それ以上にまだまだ成長途上なのだろう。

事実、角居勝彦調教師もレース後にサンデーサラブレッドクラブ公式ページで「トモが緩いので、まだビシビシと攻めておらず、これからもっとよくなります」と述べている。それでも、前走で屈したプラチナヴォイス(⑥着)にはしっかりと逆襲を果たしている。完成はまだでも、1ヵ月のあいだで着実に成長していることは確かだ。

重賞②着で賞金の加算には成功しており、今後のローテーションを組みやすくなったことは必ず活きてくる。充実した駒が揃う牝馬路線に比べて、牡馬の真打ち登場とはなっていないが、実はこの馬がそうだったという可能性を秘めた血統馬である。来春に向けて、関西屈指の名門厩舎がどのような青写真を描いているか。それを想像するだけでも楽しめる1頭である。

勝ったカデナは、終始ヴァナヘイムを目標にするかたちでレースを進めており、レース展開もバッチリではあった。とはいえ、この馬もデビュー以来の4戦で2勝②着2回と連を外しておらず、新馬戦の1600m、未勝利戦の1800m、ここ2戦の2000mと距離が違う4戦ですべて上がり1位を記録しているように、最後に必ず切れる脚を使えるのは強力な武器となる。

そんなカデナが敗れた2戦に共通するのが1枠1番だったことで、馬群をさばくのに若干手間どり、わずかに届かなかった。極端な追い込みタイプというわけではないが、外に持ち出した2戦はいずれも綺麗に差し切っていることを思うと、枠順や展開には少し注文がつくのかもしれない。もちろん、現時点での能力はヴァナヘイムと互角以上。一度も馬体重を減らすことなく、徐々に増やしながら連対をキープしており、成長の余地を大いに残している点には好感が持てる。

過去2回の京都2歳S「このメンバーでは」「この前残りでは」というのが率直なレース後の印象で、実際に上位馬はクラシックで目立った走りを見せられなかった。その点、今年の①②着馬は魅力十分。京都2歳Sは、ヴィクトワールピサやエピファネイアが勝ったオープン特別時代のほうがマシだったじゃないか。そんな雑音が聞こえなくなるような活躍を期待したい。

もっとも、このレースが終わって本当に評価を上げたのは、ここには出走していなかった馬なのかもしれない。その馬とは、カデナを前走の百日草特別で②着に下したアドマイヤミヤビ。2歳牝馬が2000mの特別戦で牡馬を負かしただけでも価値は高いが、その②着馬が直後に重賞を勝ったとなるとさらに輝きを増す。やっぱり、2014年生まれは牝馬の世代なのか。そんなことをいわれないためにも、カデナヴァナヘイムにかかるものは大きいはずだ。