ジョンヘンリーのような息の長い活躍をしてくれるはず
文/後藤正俊(ターフライター)、写真/森鷹史
登録があった
ホッコータルマエ、
タガノトネールが直前に相次いで故障してしまい、
ホッコータルマエは引退、
タガノトネールは予後不良となったことは何とも残念だったが、それでも
現在のダート界の列強がほぼ顔を揃えた
チャンピオンズC。今回の2頭のようなこともあるが、ダート競馬は芝路線に比べれば故障が少ないこと、カテゴリーが細分化されていないことで、G1に好メンバーが揃いやすい点が大きな魅力になっている。
ただ、
ジャパンCダートから
チャンピオンズCと名称が変更になり、コースが中京になってまだ3回目。一昨年は1000m通過62秒3のスローペースで前残り、昨年は60秒2のハイペースで差し・追い込み決着と、このコースでの歴史が浅いだけに、レースとしての形がまだ出来上がっていない点が、騎手を、そして馬券を買う
ファンも悩ませた。今年もどのような展開になるのかが、レースの大きな焦点だった。
逃げた
モンドクラッセが作ったペースは1000m通過60秒6。昨年よりは0秒4遅いものの、ペースとしてはやや速い。直線が短い地方競馬場での交流重賞では好位から早めの仕掛けで連勝を続けてきた断然1番人気の
アウォーディーだったが、
ジャパンCでも
「神ってる」ペース判断を見せた
武豊騎手は、中団に控えた。前走の
JBCクラシックでは早めに先頭に立ってソラを使っていたという教訓もあったのだろう。ペースを考えても
ベストポジションのはずだった。
だが3角に入っても、逃げる
モンドクラッセ、2番手
アスカノロマンの手応えが抜群に良い。一方で
アウォーディーは10キロ増の馬体重が影響したのかやや動きが鈍く、仕掛けを早めた
武豊騎手の手が激しく動く。G1で単勝2.2倍の圧倒的な人気に推された立場としては、ここで仕掛けないわけにはいかなかった。
その判断は正しく、
アウォーディーはゴール前50mで、抜け出していた
アスカノロマンをギリギリで捉えた。だがそこに外から襲い掛かり、ゴール直前で一気に差し切ったのが、道中は後方2番手に待機していた
サウンドトゥルーだった。
デビューからの通算成績はこれで38戦9勝②着8回③着12回。昨年末の
東京大賞典でG1制覇を果たしているが、この3戦は
帝王賞、
日本テレビ盃、
JCBクラシックといずれも③着で「善戦マン」の印象が強く、この日は6番人気の低評価だった。
人気薄だけに思い切った待機策を取れたという面ももちろんあっただろう。それに加えて、
大野拓弥騎手は
サウンドトゥルーの全38戦のうち24戦に騎乗しており、この17戦は一度も他の騎手に手綱を渡していない。同馬のことは知りつくしている間柄で、距離ロスのないイン追走、最高のタイミングでの仕掛けという
会心の騎乗だった。
チャンピオンズC出走の15頭のうち、これまで中京で勝ち星があったのは
サウンドトゥルー、
アスカノロマン、
コパノリッキーの3頭だけで、コース実績も重要な要因になった。昨年の③着馬でもあるG1ウイナーにしては、人気の盲点になっていたのも確かだった。③着の10番人気
アスカノロマンは今年1月の
東海Sを含め、中京コースは
2戦2勝の実績があり、
コース適性の重要さが再認識させられるレースでもあった。
サウンドトゥルーは6歳の今年こそまだ6戦目だったが、5歳時は11戦、3・4歳時はともに9戦を戦い、常に好勝負を続けながら故障しないタフさがある。4歳夏に去勢手術をして、さらに安定感を増している。
父フレンチデピュティ×
母父フジキセキというマイラー寄りの配合だが、2000m以上の距離も苦にしない。タイトルを重ねていっても種牡馬になるという夢には到達できないが、かつての
ジョンヘンリーのように
息の長い活躍をするセン馬のダート王者として、その名を残していってくれるに違いない。
ダートでの無傷の連勝記録が止まってしまったとはいえ、
アウォーディーも強いレースを見せた。この敗戦はあくまでも展開のアヤであり、次走が予想される
東京大賞典では貫録を見せてくれるだろうし、
父ジャングルポケット×
母ヘヴンリーロマンスという血統馬が、
武豊騎手と
松永幹夫調教師のコンビで来年の
ドバイワールドCや
ブリーダーズCクラシックへ駒を進めてくれれば、
ファンにとって夢が広がるばかりか、海外馬券購入の楽しみも増大する。来年からのダート競馬がますます楽しみになっていく予感を募らせてくれる
第17回チャンピオンズCだった。