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レイデオロこそは無事にクラシックへ進んでほしい
文/出川塁、写真/川井博


一昨年のシャイニングレイ、昨年のハートレーと、G2になってからのホープフルSを制したのはいずれも「ノーザンファーム生産ディープインパクト産駒」だった。しかし、3回目の今年は該当する馬の出走はなし。どんな馬が勝つのだろうと見ていたら「ノーザンファーム生産ディープインパクト近親」が①着となり、その手があったかと思わず唸ってしまった。

その馬とは、父に「キン」グカメハメハを持つレイデオロ母ラドラーダ「黄金の女性」祖母レディブロンド「金髪の女性」という意味で、自身は「黄金の王」を意味する名前を授けられた。もちろん、単勝1.5倍の圧倒的な支持を集めたのは今年の漢字「金」にちなんだわけではなく、同コースの前走・葉牡丹賞で後方2番手から一瞬で差し切る圧巻の末脚を見せていたからである。

そうして迎えたレース。逃げるニシノ「アップル」パイの姿を見て「しまった、この馬もサイン(ピコ太郎)だったか」と後悔しかけたが、そんなことはなく⑬着に終わる。自身の逃げは報われなかったものの、ニシノアップルパイが緩みのないラップを刻んだことで差し馬には展開が向き、4角8番手以降の馬が①~④着を占めることになる。

1番人気のレイデオロは、このレースでも後方に待機。2番枠ということもあり、終始馬群の内側を進む。鞍上のクリストフ・ルメール騎手は勝負どころでも外に持ち出すことはなく、直線を向いてすぐに馬群を割る。あとはゴール板を目がけて追うばかりで、前走と同じく鋭い末脚を繰り出して無傷の3連勝を飾った。

先週の速攻インプレで担当したターコイズSでも同じようにルメール騎手を称えた気がするが、この3日間開催ではどちらかといえば精彩を欠く騎乗も多かったように思う。リーディング争いが大詰めを迎えて、さすがに意識しないではいられなかったのだろう。しかし、日曜の中山8Rが終了した時点で、その夢は絶たれた。それでかえって吹っ切れたのか、ホープフルSではルメール騎手らしいスムーズな騎乗を披露したのだった。

それにしても、またしても藤沢和雄厩舎である。先々週の阪神JF、先週の朝日杯FSに続いて、G1昇格を申請中のホープフルSをも勝利。12月に行なわれる主要2歳重賞3レースを総ナメにした。さらに50分後、今度は里見治オーナー3週連続でG1を制すことになるのだが、続くときは本当に続くから競馬というのは不思議なものだ。

ホープフルSで気になるのは、ここ2年の勝ち馬がいずれもクラシックを前にリタイアを余儀なくされていることである。G1並みの高額賞金と、2歳戦最長距離の2000mという設定。冬場の最終週に行なわれることもあり、負担が大きいことは容易に想像できる。続くときは続くといっても、嫌なことまで続く必要はない。レイデオロこそは無事にクラシックへと歩みを進めてほしいものである。

②着に食い込んだのは、8番人気のマイネルスフェーン。7枠から最内に潜り込むロスのないレース運びで下馬評を覆した。ヴァンサン・シュミノー騎手「相手が悪かった」というコメント通りの印象だが、今回で7戦目という豊富なキャリアを誇る。いかにも混戦に強そうで、特に中山では注意したいタイプだ。

初来日となったシュミノー騎手は、今日で短期免許が終了した。4勝に対して②着9回と勝ち切れない面もあったが、巧みに馬群をさばくシーンは随所に見られた。ルメール騎手と同じく、このあたりは密集した競馬に慣れたフランス人ジョッキーらしさ。まだ若く慣れも見込めるだけに、再来日があればもっと狙ってみたいと思っている。

そして③着に入ったのがグローブシアターだった。1歳上のリオンディーズと比べられる運命は避けがたく、馬体がふた回り小さいこともあって、全兄ほどの破壊力や底の知れなさは感じないというのが率直な感想ではある。それでも、キャリア1戦の重賞挑戦に初めての長距離輸送と厳しい条件が重なりながら、③着を確保するのはさすがの血統馬だ。脚元の不安がつきまとう一族だけに、この馬こそ順調な成長を期待したい。