安田記念へ向け、まずは順調なスタート
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
年明けの重賞では、よく
シンザン記念(日曜)で
外枠不利と聞くような気もするが、こちら
京都金杯もけっこうなもの。いや、むしろこちらのほうがヒドいくらいで、Aコースになった過去7回、1~4枠が
[7.6.5.38](複勝率32.1%)に対し、5~8枠はなんと
[0.1.2.55](複勝率5.2%)。昨年は1番人気のトーセンスターダムと2番人気のオメガヴェンデッタが8、5枠を引いて掲示板外、そして4枠だった3番人気ウインプリメーラが優勝という結果だった。
という予備知識を持った上で、今年の枠順を見てみれば。
「えぇ…、年明け早々からデムーロとルメールに逆らうのかぁ?」という、7枠14番
アストラエンブレムに、8枠18番
ガリバルディである。特に
ガリバルディは、過去10年で最多の5勝を挙げる6歳馬の中で唯一の人気馬。さらに、同じく5勝の57キロも今年はこの馬1頭だけ。さて、これはどうしたものか。
一方、
「良い方」を引いたのは、なんといっても断然人気・単勝1.8倍の
エアスピネルで3枠6番。このレース、過去30年で単勝3倍を割っていた馬は
[8.6.0.1]と抜群の安定感を誇り、特に1倍台なら
2戦2勝。02年ダイタクリーヴァ、05年ハットトリックと、ともに
エアスピネルと同じ
武豊騎手が手綱を取っており、こちらは悩むまもなく人気でも
「買い」。まあ、特大「お年玉」が期待できるのは、過去の傾向からも
東西金杯よりは、日曜の
フェアリーSと
シンザン記念。ここはおとなしく従うのみだろう。
もっとも、その
エアスピネルも
菊花賞から距離ほぼ半減、そして4歳で56.5キロと、2歳重賞しか勝っていないわりに背負わされた。ただ、その勝った2歳重賞が、同コースの
デイリー杯2歳Sで、先行抜け出し・3馬身半差の大楽勝。むしろマイル戦のほうが向く、という声も大きかった。
実際、ゲートが開けば大幅な距離短縮もなんのその、あっさりと中団の前くらいの位置を確保。そこから馬群でクビを上げたりはしていたものの、すぐに落ち着いて4角は大外から前を射程圏に入れる、人気馬らしいレース運びだ。
迎えた直線。軽く仕掛けると脚を伸ばし、残り200m手前で早くも先頭。ここから一気に突き放して……とならなかったのは、この距離でもクラシック
④④③着と同じなのか、という感もあり。ただ、追ってきた同じ4歳馬
ブラックスピネルも、ハンデ差1.5キロがありながら、なかなか
エアスピネルを交わせそうで交わせない。最後はクビの上げ下げの際どい態勢にまで持ち込まれたが、そのまま
エアスピネルがハナ差でしのいで
久々の勝利を手中にした。
そして②着の
ブラックスピネルは1枠1番、さらに③着
フィエロは3枠5番。外枠勢は、最後に大外から
アストラエンブレムが差を詰めたものの、これは④着まで。そして
ガリバルディは末脚不発の⑬着。結局、傾向通りに
内枠決着となったのだった。
優勝した
エアスピネルは、最後はハナ差になったとはいえ、全体的なレース運びも踏まえれば完勝という内容。⑥着以内のうち
フィエロを除く5頭が4歳馬という結果でもあったが、もっとも重い56.5キロのハンデも考えれば、ここでは戦ってきた相手が違った、ということ。
安田記念へ向け、まずは
順調なスタートを切ったと言っていいだろう。
一方、②着の
ブラックスピネルももちろん悪くない結果だが、やはり次へ向けては④着の
アストラエンブレム。繰り返しになるが、この
外枠不振のレースで7枠14番。道中は内に入れてロスのないレース運びをしていたものの、直線前半で外めに出したときにはもう、
エアスピネルは抜け出しかけていた。
これで昨年の
シンザン記念から重賞は3戦連続
④着。その前の
サウジアラビアロイヤルCでハナ+クビ差の惜しい③着になってから、どうも重賞での負け癖がついてしまったようにも思えるが、ひとつ壁を突き破れれば、
エアスピネルともども
この世代のマイル路線を引っ張る存在になり得る。
そして、その壁を突き破れないまま8歳になったのが③着の
フィエロで、これで14年の
マイラーズC②着から
16連敗となってしまった。その間に
マイルCS②着2回などもあるのだが、相手が軽くなってもどうにも勝ち切れない。
ただ、4歳馬がほぼ上位独占という中、トップハンデでもしっかり脚を伸ばして③着を確保するあたりは、さすが歴戦のベテランだ。
安田記念は初挑戦の14年から
⑧→
④→
③着。
ファンが4歳馬に気を取られていると
「ここでフィエロ勝つか!」という、去年のロゴタイプ(
皐月賞後
16連敗)のような結果もあるかもしれないので、頭の隅には入れておきたい馬だ。