バゴにももっと警戒しておくべきだったと反省しても後の祭り
文/出川塁、写真/川井博
一昨年はベルーフ、昨年はプロフェットが制し、
私を含む全国200万(推定)の
ハービンジャーマニアが
三連覇を狙った
京成杯だが、その期待は脆くも崩れた。
適性を見込まれたのだろう、今年は3頭の
ハービンジャー産駒が出走。そのなかの筆頭格は
ホープフルS④着の
ベストリゾートだった。しかし、追い込んだ前走とは打って変わって、今回は外枠から2番手につける積極的なレースを選択したことが裏目に出る。スタートから押していった影響で折り合いがつかず、直線に入ってまもなく失速。⑪着に大敗してしまった。
スタミナは豊富でも、前半から急がせると持ち味を出せない
ハービンジャーらしい負け方ではあった。結局、3頭のなかではいちばん後ろから行った牝馬の
サンティールが最先着したことが
ハービンジャーを物語っている。位置どりは前でも後ろでもいいのだが、前半は鞍上と息を合わせてゆったりと走ったうえで、後半はなるべく上がりがかかるヨーロピアンな展開にならないと出番が回ってこない。
だから前半から流れるダートは走らないし、ヨーロッパ出身の騎手が乗ったときの成績が抜群なのも頷ける。といった具合で、
ハービンジャーという種牡馬はなんともストライクゾーンが狭いのだが、そこが愛おしくて堪らないのである。なお、
私は最終レースでも仇討ちとばかりに
ハービンジャー産駒テオドールの単勝を買ったのだが、これまた前半から掛かり通しで見事返り討ちに遭っている。
と、マニアの戯言はこれぐらいにして、枕を濡らしながら今年の
京成杯を振り返っていこう。
ゲートが開いて、スタンドの前を通過するあたりまでは7頭ほどが横一線。最終的にハナを奪ったのは13番の
メリオラで、2番手につけたのも14番の
ベストリゾートと、7頭による先行争いを外枠の2頭が制したことで数字以上に厳しい流れとなり、スローペースの前崩れという珍しい展開を誘発したのかもしれない。
隊列が決まってからは馬順の入れ替わりも少なく、勝負どころの3~4コーナーへと差し掛かる。このあたりでは外に位置した差し馬たちの手応えが明らかによく、実際、直線を向くと先行集団はすぐに壊滅。そのため、前からはバテた馬たちが下がってくる、外からは差し馬たちが押し寄せてくるで、馬群のなかは
大混乱に。結果、外を回った差し追い込み馬が①~④着を占めることとなった。
勝ったのは1番人気の
コマノインパルス。
葉牡丹賞では
ホープフルSを勝つレイデオロの豪脚に屈して②着に敗れたものの、③着馬(
京成杯で⑤着となる
アサギリジョー)には3馬身半の差をつけていた。その前走と同条件で、目の上のたんこぶが抜けたとなれば1番人気に推されるのも、勝つのもまったく不思議はなかった。
展開が向いた面もあるとはいえ、まずは完勝といっていいだろう。
この馬は血統もなかなか興味深い。
父バゴの産駒は
京成杯で過去1頭のみの出走で、それが2年前に②着に入ったブラックバゴ。その後はノド鳴りがあってスランプに陥っていたが、先週の1000万下で久しぶりの勝利を挙げていた。ノド鳴りの手術が成功したことに加えて、最後に好走した
京成杯と同じ中山芝2000mだったことも大きかったはずだ。年に一度の
ハービンジャーの祭典などと浮かれずに、
バゴにももっと警戒しておくべきだったと反省しても
後の祭りである。
母方に目を向けると、なんといっても3代母の
リンデンリリーに触れなくてはならない。夭逝した
岡潤一郎騎手に、1991年の
エリザベス女王杯で初のG1勝利をもたらした直後に競走能力を喪失していることが判明し、引退を余儀なくされた
幻の名牝。その子孫で中央の重賞を勝ったのは、直仔のヤマカツリリー以来2頭目となる。
そのほか、②着の
ガンサリュートは勝ち上がりに4戦を要したものの、3ヵ月ぶりかつ重賞初出走でいきなりの好走を果たした。4コーナーの手応えでは勝ち馬を上回って見えたほどで、そのわりには伸び切れなかった印象もある。
父ダノンシャンティ、
母の父クロフネという血統を考慮しても、2000mは微妙に長いのかもしれない。
③着の
マイネルスフェーンは前走の
ホープフルSと同じく直線ではインを狙ったが、あまりにも馬群がゴチャつき、進路を外に切り替えているうちに大勢が決していた。今回ばかりは2枠2番を引いたことを恨むしかない。あとは、差し追い込み馬がひとケタ着順のほとんど占めるなか、4角3番手から⑥着に踏ん張った
バリングラの巻き返しにも注目したい。