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30年以上に渡る傾向を名コンビが打ち砕いた
文/編集部(M)、写真/森鷹史


重賞レースに関しては、過去の優勝馬や好走馬の傾向を調べて、今年の登録馬に照らし合わせる作業を週中にするのだが、どの馬も一長一短で、勝ち馬が見つからないというケースがある。今年のアメリカJCCがそれだった。

アメリカJCCは、古くから冬の古馬別定G2として行われてきている歴史あるレースで、今年で58回目。1987年にはミホシンザンが斤量59kgを克服して1番人気で優勝していて、そこから30年の間、休み明けの馬は1頭も勝っていなかった

前年12月や同年1月の重賞を前走で走っていた馬が優勝することが多く、順調に使われてきている実績馬が上位人気に推されて勝利するケースがとても多かった。87年以降の過去30年で、6番人気以下での優勝馬は2頭だけだった(93年ホワイトストーン・6番人気、02年フサイチランハート・8番人気)。

今年も、当然、前走が重賞で休み明けではない上位人気馬の中から勝ち馬が出ると思い、登録馬を見渡したわけだが、該当馬がほとんどいなかった。

ゼーヴィントシングウィズジョイタンタアレグリアは、前走から2ヵ月以上空いていたし、ルミナスウォリアーミライヘノツバサナスノセイカンなどは前走が重賞以外のレースだった。

前走が重賞で休み明けではない馬はリアファルワンアンドオンリークラリティスカイなどがいたものの、ワンアンドオンリー神戸新聞杯以降に連対歴がなく、クラリティスカイは2200mが初めてで、リアファルゼンノロブロイ産駒であることが引っ掛かった。

「メインレースの考え方」でも記したが、ゼンノロブロイ牡セン馬はとにかく中山芝の重賞で相性が悪く、これまでに39頭が出走して[0.0.1.38]という成績だった。

この不振データにについては、かつては「迷信じゃないか?」と思って、中山芝重賞でゼンノロブロイ産駒を信頼したこともあったのだが、なぜかさっぱり動けないことが多く、最近は過剰な期待をしないようにしていた(ちなみに牝駒はよく走る)。

このように“勝ち馬が見つからない”ケースでも、結局は何かが過去データを覆すわけで、その確率を探る作業をするのだが、今回は実績よりも順調度に重きを置いて、昇級でもミライヘノツバサに期待することとした(「◎」にした)。ステイゴールドの系統(ドリームジャーニー産駒)で、3戦3勝の中山芝2200mなら重賞でも通用すると踏んだのだ。

今年は先行型が複数いたこともあって、淀みないペースとなった昨年以上に流れた。前半の1000m通過は60秒を切り(59秒6)、上がり3Fは36秒3もかかった。その流れをミライヘノツバサは早めに先頭に立ち、最後まで粘っていたので、力を付けているのだろうが、最後は休み明けだった2頭に交わされた。順調度よりも実績が上回った瞬間だった……。

ゼーヴィントは休み明けと言っても中9週で、過去のアメリカJCCでは中8週なら勝ち馬が出ていたので、この好走は分からなくもなかった。

ところが、その内から脚を伸ばしてきたのが春の天皇賞以来だったタンタアレグリアで、これにはただただ驚くばかりだった。しかも、タンタアレグリアゼンノロブロイ牡駒。30年以上に渡って築き上げられてきたアメリカJCCの傾向も、血統のデータも、見事に打ち砕かれた。

レース後の勝利騎手インタビューで、最初から馬群の内に潜り込み、内を捌く考えだったことを蛯名騎手から聞いて、ようやく見逃していた点に思い当たった。タンタアレグリア国枝厩舎の所属馬で蛯名騎手というマツリダゴッホの時と同じ名コンビだった。このコンビではアパパネダノンプラチナといった馬でもG1を勝っているが、今回の舞台ではマツリダゴッホがピッタリくる。

アメリカJCCでは前走が重賞以外だった馬の優勝が少ないと記したが、過去30年の中で3頭だけいる該当馬の内の1頭がマツリダゴッホだった。07年のこのレースをマツリダゴッホが制した時は鞍上が横山典騎手だったが、同年秋のオールカマーから再び蛯名騎手が手綱を取り、暮れの有馬記念を9番人気で制したのだった。

今回のように“勝ち馬が見つからない”ケースでは、過去の例外馬の中にヒントが隠されていることがよくあるのだが、今年のアメリカJCCの場合はマツリダゴッホ=国枝厩舎&蛯名騎手がヒントだったのだろう。これはなかなかの難問だった……。

タンタアレグリアは、当初から今春の最大目標が天皇賞・春と言われてきた。1月後半のアメリカJCCを制したことで、本番の前にもう1戦して向かうようだ。

昨年の天皇賞・春は展開不向きの中でもメンバー中最速の上がり(34秒3)で差して0秒3差(④着)だったので、適性があるように感じさせられるが、実はゼンノロブロイ産駒京都芝の重賞を勝った馬が1頭しかいない。勝ったのは9頭立てだった12年京都記念でのトレイルブレイザーで、通算では[1.1.3.53]という成績だ。タンタアレグリア自身は、菊花賞④着、天皇賞・春④着となっている。

ゼンノロブロイ牡セン馬がのべ39頭が挑戦して1頭も連対圏に入れていなかった中山芝の重賞を制したのだから、タンタアレグリアはもはや同産駒の範疇で語ってはいけないのかもしれないが……果たして今年の天皇賞・春ではどんなパフォーマンスを見せるだろうか。我々も予想力を試されることになりそうだ……。