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自慢の末脚をどこまで発揮できるかがG1初挑戦の成否を分けそう
文/出川塁、写真/稲葉訓也


フェブラリーSのプレップとなって5年目となる東海S。過去4年、このレースの①~③着馬は同年のフェブラリーS[2.1.1.5]、13年①着のグレープブランデーと15年①着のコパノリッキーは本番も制すなど、なかなかの成績を収めている。重賞の開催時期はむやみに移すべきではないが、G1の前哨戦としてしっかりと機能している東海Sの移設は成功といえそうだ。

今年の東海Sで上位人気に推されたのは、4歳馬のグレンツェント、昨年7月のダート転向後は3戦すべて連対中のピオネロというネオユニヴァース産駒の2騎。そして、昨年の勝ち馬で、フェブラリーSチャンピオンズCでいずれも③着に入った実力馬のアスカノロマンが2番人気に割って入った。単勝オッズが10倍を切るのはこの3頭だけで、4番人気のインカンテーション以下は離れた評価にとどまった。

しかし、オッズ的に三強の様相を呈した3頭は明暗を分ける。グレンツェントこそ1番人気に応えて勝利を収めたものの、2番人気のアスカノロマンは⑧着、3番人気のピオネロも⑥着に敗れ、②~⑤着をふたケタ人気馬が占めるという、おおよそ三強とはいえない結果に終わった。

だからというわけではないのだが、「なんだか奇妙なレースだなあ」というのがレース終了直後の率直な感想だった。その違和感の正体がすこしわかったのは、レース後に発表されたラップタイムと各馬の通過順を見てからだった。

ひとつは、前半4Fのラップタイムが13.0-11.5-13.6-13.1と、2F目を除いて13秒台のラップが3つも並ぶダート重賞としては異例といえる超スローの流れ。1~2コーナーあたりでは多くの馬の騎手が手綱を引っ張っており、ダート重賞の厳しい流れに慣れている馬ほどこの展開には戸惑ったのではないだろうか。

次に、各馬の通過順も変わっていて、①着から⑥着まで「差し-先行-差し-逃げ-追い込み-先行」と、差し・追い込み馬と逃げ・先行馬が綺麗に互い違いに入線する格好となった。これだけでも珍しいが、前述の通り、②~⑤着に入ったのはふたケタ人気馬だった。こうした人気薄が上位に来るには多少なりとも展開の助けが必要になるものだが、逃げ、先行、差し、追い込みの人気薄がそれぞれ突っ込んできたとなると、果たしてどんな脚質の馬に向いた展開だったのか、さっぱりわからない。

ひと言でいえば、今年の東海S非常に特殊なレース。あまり再現性が高いとはいえず、ここで好走した馬も凡走した馬も、次のレースに出てきた場合はノーカウントにするぐらいでもいいのではないか。過去10年のフェブラリーSのラップタイムを確認しても、前半4Fで13秒台が刻まれたことは一度もなく、まったく異なる展開になることが予想される。冒頭で現在の東海Sは前哨戦として機能していると述べたが、今年は別個に考えたほうがよさそうだ。

とはいえ、そうした特殊なレースを勝ち切った馬はきちんと評価する必要がある。昨年のレパードSに続いて重賞タイトルを手に入れたグレンツェントは、これでダートでは9戦して凡走知らず。その戦歴で面白いのが、同じ騎手が継続騎乗したことが1回しかなく、ほとんどが乗り替わりでの出走だったこと。過去10戦で7人の騎手が乗りながら馬券圏内を外したのは芝を使った新馬戦しかなく、ジョッキーを選ばずに力を出せるのが強みとなっている。

加えて、ダート9戦すべてで上がり1~3位の脚を使っている通り、直線で必ず鋭い脚を使えることも大きな武器だ。今回よりペースがグッと速くなるフェブラリーSでも、自慢の末脚をどこまで発揮できるか。これがG1初挑戦の成否を分けることになるだろう。

敗れた馬の巻き返しに期待するならば、やはりアスカノロマンということになる。昨年のみやこSで⑭着に大敗した直後のチャンピオンズCで③着に激走したのが典型で、この馬は元々いきなり惨敗したかと思えば平然と巻き返してくるタイプ。過去の重賞2勝を振り返ると、外の2番手を追走した東海S、逃げて5馬身圧勝の平安Sと、被されない位置ですんなり先行したときにいちばん力を出してくる。今回は1枠1番に入ったのが痛く、レース展開の特殊さを考慮しても度外視できる。外枠を引いたらフェブラリーSでも恐い1頭だ。