このまま一気にG1タイトルを手にする可能性も十分!?
文/浅田知広、写真/川井博
今年の出走馬を見てまず思ったのは
「なんかいつものメンバーと違う!」だった。その
「なんか」がなんなのかと調べてみれば。まず
ジャニュアリーS(1月14日・中山ダート1200m)が今年は1週と少々繰り下がって間隔が詰まり、さらに
大和S(2月4日・京都ダート1200m、昨年まで1400m)がこのレースより後に移動したことで、年明け初出走馬だらけになったことだった。
そしてもうひとつ、過去10年で12頭と出走馬も少なかった1600万組が、今年はえらい光って見えたこと。数こそ2頭ながら、2番人気の
ベストマッチョは
[4.1.0.0]。そして9番人気ではあるが、
ブルミラコロが
[5.5.1.1]と、ともに底を見せずに駒を進めてきたのだ。
また、それでオープン・重賞組が手薄ということもなく、1番人気に推された
カフジテイクは前走の
チャンピオンズC④着で、東京ダート1400mは
2戦2勝。3番人気の
ベストウォーリアは、昨年は1400m(川崎)だった前走・
JBCスプリントで②着になるなど実績十分だ。ほかにもダート
[5.3.2.1]の
エイシンバッケン(4番人気)に、デビュー2戦目以降20戦連続④着以内の
キングズガード(5番人気)など、まあG3としては
かなりの好メンバーとなった。
その結果、あまり注目されなくなった馬も多数。そう遠い話でもない暮れの
カペラS3~1番人気で①~③着の
ノボバカラ、
ニシケンモノノフ、
コーリンベリーは揃って7番人気以下。さらに昨年③着のG1馬
グレープブランデーは単勝200倍近い15番人気、同②着の
タールタンは10番人気といった具合。どこに目をつけるかによって、券種選択も含めいかようにも買い方があるレースだった。
そんなレースでハナを切ったのは、1400m以下初出走の
モンドクラッセ。だからといってスローではなく、前半600m通過は35秒0で、34秒6の昨年よりは遅いものの、10年以降の8回では昨年に続く2番目である。これを追いかけたのは主に穴馬勢。人気どころでは、先行集団から2~3馬身の差を置いて6番手を追走した
ベストウォーリアが一番前で、その直後に同じ勝負服の
ベストマッチョ。残る
カフジテイク、
エイシンバッケン、
キングズガードは後方1~3番手、ガチンコ末脚対決という様相だ。
この展開になると、直線では
ベストウォーリアと
ベストマッチョが揃って抜け出したところに追い込み勢が……と思ったら。
モンドクラッセをはじめとする人気薄の先行勢がなかなかの粘り腰。結果、6~7番手から
ベストウォーリアが
マッチョと一緒にではなく、振り切る形で追撃開始。これに後方から迫るのも3頭ではなく、
カフジテイク単独での追い込みとなった。
そして残り200mを切ると大健闘の
モンドクラッセも力尽き、残り150mあたりからは
ベストウォーリアと
カフジテイクの一騎打ちの態勢となった。最後は58キロと56キロという2キロの斤量差もあり、単純に勢いの差もあり、大外の
カフジテイクが鮮やかに差し切って
重賞初制覇。1馬身差の②着に
ベストウォーリアが入り、その後ろは2馬身半の差がついて
エイシンバッケン。
いやいや
「いかようにも買い方がある」なんてとんでもない、斤量差も考えれば完全に
2強のレース。そして、15年の
南部杯優勝後は
凡走もなければ
勝利もない
ベストウォーリアではなく、ここ1年少々で4勝を挙げていた
カフジテイクに軍配が上がった。
その
カフジテイクは、12年に佐賀の
サマーチャンピオンを「逃げ切った」テイクアベットの半弟。初勝利を挙げた後はほぼ末脚勝負で、今回は上がり3ハロン34秒5を記録した。同じ後方勢でも、馬群を突いた③着
エイシンバッケンは前が詰まったりもしながら34秒9、そして
キングズガードは35秒2。3馬身半ほどという着差通りの数字ではあるが、
カフジテイクの末脚が一枚上だった。
半年ほど前、重賞初挑戦の
プロキオンSでは、
ノボバカラ(今回はシンガリ負け)に3馬身少々の差をつけられる⑦着だったが、それからさらに力をつけてきたのは明らかだ。
先週の
東海Sを1番人気で制したグレンツェントは前半の目標に
帝王賞を据え、
フェブラリーSを回避。また、昨年の覇者モーニンや、
東京大賞典組の中でマイル実績があるコパノリッキー、ノンコノユメは近走ひと息だけに、
カフジテイクが一気にG1タイトルを手にする可能性も十分にあるだろう。
そう考えると、今回は②着に敗れた
ベストウォーリアにもチャンスあり。2キロの斤量差がなくなれば、惜敗続きにG1で終止符を打っても不思議はない。