ここで発揮した決め手は、G1級だったと言えそう
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
シルクロードSが行われた日曜、昨年の
高松宮記念&
スプリンターズSで②着に好走し、
最優秀短距離馬に輝いた
ミッキーアイルの
電撃引退が発表された。昨年の
高松宮記念勝ち馬
ビッグアーサー、
スプリンターズS勝ち馬
レッドファルクスは健在なものの、このレースには不参戦。今回はスプリント路線をリードするこの2頭に対する挑戦権を賭けての一戦、という側面があった。
とはいえ、今年ここに参戦してきた13頭を見渡すと、
実績馬がズラリ。上位人気は上から順に
ネロ、ソルヴェイグ、ダンスディレクターまでがすでに重賞を勝っていた実績馬で、ここが重賞初挑戦という馬は4番人気の
セイウンコウセイただ1頭となった。
そういうメンバー構成なので、
実績馬たちは軒並みハンデが重く、
ネロとダンスディレクターは57.5kg。
ソルヴェイグと
ブランボヌールは54kgだが、4歳牝馬としては決して軽くない。55kgの4歳牡馬
セイウンコウセイがどこまで食い込めるか……ということが注目点のひとつとなった。
今年は6歳馬
ネロが1番人気となったが、
シルクロードSは比較的若い馬が人気になる傾向が強く、
過去10年中8年で4歳馬が1番人気に推されている。ところが4歳の好走馬となると、これが
非常に少ない。4歳の勝ち馬はご存じ
ロードカナロア(12年)だけで、馬券圏内に入った馬まで含めても
レディオブオペラ(14年②着)の2頭のみだ。
今年は実績のある4歳馬が参戦したのでこの傾向を覆せるかと期待したが、早め先頭から②着に粘った
セイウンコウセイが気を吐いた一方、
ソルヴェイグは初めて逃げを打つ形が合わなかったか⑥着、
ブランボヌールはシンガリ負け(⑬着)を喫してしまった。
一方、連覇を達成した
ダンスディレクターは中団馬群に控える形で、鞍上の
武豊騎手は距離ロスを抑えて折り合いをつけるミッションをきっちりこなしていた。直線入口でスムーズに外へ出し、先に抜け出した
セイウンコウセイをゴール前で測ったように交わすという、
ハンデ57.5kgを感じさせない鮮やかな快勝劇となった。
すでに7歳となった
ダンスディレクターだが、
今回の勝ちタイム(1分7秒8)は昨年のそれより0秒1速く、
上がりはメンバー最速の33秒1で、
重賞では自己ベストを更新した。コース巧者(今回の勝利で、
京都芝1200mは①②①①着とした)の面も見逃せないが、適度に休みを挟みつつ使われてきて、今回でまだ21戦目だったということを考えても、
伸びしろがあったとしても驚けないだろう。
過去10年の
シルクロードSを振り返っても、メンバー最速の上がりで勝った馬は5頭(08年
ファイングレイン、09年
アーバンストリート、11年
ジョーカプチーノ、12年
ロードカナロア、14年
ストレイトガール)いて、このうち4頭が
G1勝ち馬だ。
ダンスディレクター自身は今回の馬体重が442kgという小柄なタイプで、これまで関東遠征では結果を残せていないが、
中京芝1200mでは②②着と悪くない。昨年の
高松宮記念は脚部不安で出走できなかったが、今年は
大仕事をやってのける可能性も十分にあると感じるが、どうだろうか。
そして、敗れた馬たちも悲観することはなさそう。昨年はこのレースで1番人気⑤着に敗れた
ビッグアーサーは次走で
高松宮記念を制したし、かつては
サニングデールがこのレースで敗れ(03年③着)、後にG1を制している。
特に
セイウンコウセイは、4歳牡馬にして
シルクロードS連対となると過去10年では
ロードカナロア以来の
“偉業”だ。今回はベテランの壁に跳ね返される形となったが、敗れた馬たちにも巻き返しのチャンスは十分あると言えるのではないだろうか。前哨戦はまだ続くが、今後のスプリント路線が楽しみになったのは間違いないだろう。