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超スローだったからと軽視すると、あとで痛い目に遭うかも!?
文/出川塁、写真/稲葉訓也


今年の東京新聞杯でもっとも驚いたのは、前半3Fの通過タイムが「37秒2」と画面に表示された瞬間だった。10頭立ての少頭数で明確な逃げ馬も不在だったとはいえ、いくらなんでも遅すぎるんじゃないか。レースレベルもどうなんだろう。これが率直な感想だった。

ところが、レース後に「2000年以降、前半3Fの通過タイムが遅い古馬の芝マイル重賞」を調べてみたところ、なかなか侮れないことが判明するのである。

もっとも遅かったのは02年東京新聞杯で、前半3F通過が37秒2。このレースは不良馬場だったので単純に比較できない面もあるが、①着のアドマイヤコジーンは2走後の高松宮記念で②着に入り、3走後の安田記念では3年半ぶりのG1制覇を達成している。また、②着のディヴァインライトも2年前の高松宮記念で②着に入っていた実績馬だった。

その次に前半3F通過が遅かったのは06年マイラーズCの36秒7で、①着のダイワメジャーはその後マイルG1で3勝を挙げることになり、②着のダンスインザムードは次走のヴィクトリアマイルを制している。

前半3F通過が36秒3で3番目に遅かったレースは3つある。それぞれの上位馬を見ていくと、05年阪神牝馬S①着のアドマイヤグルーヴは、エリザベス女王杯で連覇を果たした馬。15年東京新聞杯①着のヴァンセンヌは2走後の安田記念で②着に入り、同②着のアルフレードは朝日杯FSの勝ち馬。16年富士S②着のイスラボニータと③着のダノンプラチナもすでにG1を勝っていた馬だ。

この通り、前半3F通過が遅かった古馬の芝マイル重賞で上位に入った馬を振り返ると、その多くにG1級の馬が含まれるのである。

古馬の芝マイル重賞に出走する馬は水準以上のスピードを備えており、速い流れには十分に対応できる。むしろ、我慢強さや折り合いを問われる超スローのほうが戸惑いやすいのではないか。また、前半が超スローになれば、レース後半は必然的にかなりのスピード比べになる。そう考えると、超スローの古馬マイル重賞というのは、実は総合力を問われるハイレベルなレースとも考えられるのではないか。

そうした視点で今年の東京新聞杯を改めて見直すと、違った側面が見えてくる。後半3Fタイムは32秒7、その内訳は10秒9-10秒8-11秒0というラップが刻まれている。東京芝の直線は525mだから、直線を一杯に使って超高速のスピード比べが繰り広げられたことになる。つまり、上位馬のスピード能力はかなりのもの。今年の東京新聞杯は超スローだったからと軽視すると、あとで痛い目に遭うかもしれない。

勝ったブラックスピネルは2歳戦からコンスタントに走り、掲示板を外したのは1回だけという堅実派。以前は重賞に入るとひと息の印象だったが、古馬初戦の京都金杯で初めて連対を果たすと、初めて逃げの手に出た東京新聞杯で重賞初制覇を飾り、ここにきて力をつけてきている。テン乗りとなったミルコ・デムーロ騎手に逃げのイメージは薄いが、ブラックスピネルはものすごく切れるというタイプではないだけに、作戦成功といったところだろう。

菊花賞以来のプロディガルサンが上がり32秒0という極限の脚を使って②着。どこか頼りなかったこれまでに比べて今回はパドックから力強さが出てきており、良血の開花がようやく見えてきた。馬体重プラス22キロで冬場にこれだけの脚を使ったとなると故障には気をつけたいところだが、距離もこのぐらいのほうがよさそうで、これからが楽しみになった。

圧倒的1番人気を背負ったエアスピネルは③着まで。今回は超スローでもしっかりと折り合いがついていたが、流れが不向きだった。10秒9-10秒8-11秒0のラップでは、機動力を活かして馬群からササッと抜け出す得意パターンに持ち込みようがない。クラス改編直後に行なわれる安田記念は4歳馬にとって賞金面で不利になりやすいだけに、賞金の上積みに失敗したのは痛いところだ。

なお、④着同着のストーミーシーまで含めて上位は4歳馬が独占した。東京新聞杯の①~③着馬がまさにそうだったように、芝マイル以上の重賞には昨年のハイレベルな牡馬クラシック路線で揉まれた馬が多く出てくる。時間軸が異なる芝のスプリント路線やダート路線は別に考えたほうがいいだろうが、今年の芝マイル以上の路線、いや、もっといえば来年もこの路線では現4歳世代を中心視し続けていくつもりである。