今年も古馬G1戦線ではおもしろい競馬が見られそう
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
昨年末あたりまで今ひとつ評価が定まらなかった現4歳世代。
「最強」ともうたわれた中で
マカヒキが
凱旋門賞⑭着大敗を喫し、さらにレインボーライン(
菊花賞②着)が
ジャパンCで⑥着に終わると、
実は大したことないんじゃないか、という声が強くなりつつあった。
ただ、レインボーラインの
ジャパンCは8番人気での⑥着ならまずまず。
有馬記念でサトノダイヤモンドの評価を下げたい人にとっての、理由づけに使われた部分もあっただろうか。そんな話も、そのサトノダイヤモンドが
有馬記念を制したことでひと段落。
「最強世代」と言えるかはさておき、
別に弱くはないだろう、という流れで迎えたダービー馬の登場、
京都記念である。
人気はその
マカヒキが断然の1番人気で1.7倍。
凱旋門賞敗退の後、
有馬記念を使えず少し存在感が薄れてもおかしくないところだが、そこはさすがにダービー馬。ちょっとしたG1・1勝馬とはわけが違う。
そして4歳からはもう1頭、3走前に
神戸新聞杯でサトノダイヤモンドと接戦を演じた
ミッキーロケットが2番人気。同馬への再挑戦よりも前に、⑬着に終わった
皐月賞以来となる、
マカヒキ(同②着)との再戦が先にやってきた。
一方、古馬の筆頭格は昨年の覇者
サトノクラウン。当時は6番人気ながらも後続に3馬身差をつける圧勝だったが、その後3戦は今ひとつ。しかし前走・
香港ヴァーズでは強敵
ハイランドリールを下す
大金星を挙げ、改めてこの馬が持つ力を証明した。
単勝オッズでは
マカヒキが抜けていても、ある程度の勝機がありそうな馬、という意味では3強ムード。中でも、
香港ヴァーズを勝った上にレース実績もある
サトノクラウン4.4倍はおいしく感じたが、そこは斤量差もあって
サトノクラウン58キロ、
マカヒキ57キロ、そして
ミッキーロケットが56キロ。おのおの1キロの差がどう出るかという予測も難しい一戦だった。
ハナを切ったのは、実力比較では少々苦しくても、展開的に一発の期待がかけられた4番人気の
ヤマカツライデン。1コーナーから3馬身、4馬身と後続を離し、そのまま単騎で大逃げになるかと思われた。しかし、向正面でじりじりと
ガリバルディが差を詰めていき、3角からは完全につつかれ、展開利を活かせるような競馬にはならなかった。
これによって、勝負に絡んだのは後続集団の各馬。これを引っ張ったのは、昨年の覇者
サトノクラウンで、7歳を迎えた牝馬
スマートレイアー、そして
マカヒキ。
ミッキーロケットは、好位から押し切った
日経新春杯とは違い、出遅れもあって有力馬の動きを後方からうかがう形になった。
迎えた4コーナー。昨年は
サトノクラウンが先頭に立って押し切ったが、今年は前が離れていた分3番手。ただ、
マカヒキよりも先に手を動かし、積極的に捕らえに出る競馬になった。その外に
マカヒキ、内に
スマートレイアー、間から
ミッキーロケットも追撃を開始。ただ「追い比べ」や「叩き合い」と表現できるほど馬体を接する形にはならず、各々微妙に間隔を取って残り200mを通過した。
そこで先頭の
サトノクラウン&
M.デムーロ騎手は、併せる相手を外の
マカヒキにすべきか、内の
スマートレイアーかと迷ったのか、それとも単に馬がフラフラしていただけなのか。いずれにしてもどっちつかずの進路取りになり、結局そのまま最後まで2頭に1馬身少々の差を詰めさせず先頭でゴールイン。見ていてやや拍子抜けのゴール前だったが、ともあれ鞍上も馬も揃って
京都記念連覇を果たした。
これで2~3歳時の
3連勝以来となる
2連勝。昨年の56キロから、今年は58キロを背負っての堂々の勝利だ。まだ
香港ヴァーズだけでは半信半疑という
ファンも多かったろうが、G2勝ちとはいえ、これで文句なしに
トップホースの仲間入りと言っていいだろう。今後は、
ドバイシーマクラシックや、昨年⑫着敗退を喫した
クイーンエリザベス2世C、そしてG1昇格の
大阪杯など多くの選択肢からどこへ向かうのか。いずれにしても
主役級として大きな期待を持てそうだ。
②着の
スマートレイアーは守備範囲が広い一方、
秋華賞②着以降はどうもG1になると馬券に絡めず終わっているが、今回の走りからしても力負けはしないはずだ。そして、ひと伸びを欠いた
マカヒキは③着敗退。今回は香港組の上位2頭より間隔が開いた上、稍重の馬場で切れ味を削がれた面もありそうなだけに、当然、
大阪杯での巻き返しが期待される。
その後ろに
ミッキーロケットと続き、結果としては人気の4歳2頭は③④着。ただ、
ミッキーロケットも前述のように出遅れもあっただけに、これだけで
「やっぱり4歳は……」という話にもならない。結局のところ、出る馬やら条件などによって勝ったり負けたり。もちろんサトノダイヤモンドが突き抜ける可能性もあるが、特に肩入れする馬がいない立場からすれば、今のところは
今年もおもしろい競馬が見られそうな古馬G1戦線だ。