M.デムーロ騎手が得意とするレースラップになった
文/編集部(M)、写真/川井博
阪急杯で
1&2番人気だった
シュウジと
ロサギガンティアが馬群に沈み、穴ぐさ💨の
トーキングドラムが優勝したのを見届けても、
「まあ、中山記念ではそうはいかないだろう」と思っていた。
同じ
1&2番人気でも、
アンビシャスと
リアルスティールは
安定感が違う。そう思っていた。ところが、
中山記念の
1&2番人気も馬券圏外に敗れる結果になった。穴ぐさ💨が②&③着(
サクラアンプルール&
ロゴタイプ)に入って喜びはしたが、
驚きの方が大きかった。
JRAの重賞で
1&2番人気馬がともに
馬券圏外となったのは、ハンデ戦以外だと昨年の
朝日杯FS以来のことで、3歳以上のハンデ戦以外のレースに限ると昨秋の
秋華賞以来。2歳戦とハンデ戦と牝馬限定戦を除くと、なんと昨春の
マイラーズC以来で、そんな稀有なケースが2レースも続いたのだから、驚くなという方が無理だろう。
リアルスティールは先行馬を見る位置から伸びきれなかったので、敗因はよく分からないが、
アンビシャスが差し届かなかったのは、
スローペースの要因が大きいだろう。今年の
中山記念のレースラップは、
12.6-
12.2-
12.6-
12.9-
11.1-
11.6-
11.6-
11.3-
11.7で、
前半の4Fが遅すぎた。
向こう正面で
マイネルミラノがハナを奪ってからはペースアップしたものの、今年の
中山記念は実質的に
ワンターンの競馬になったと言えるだろう。
アンビシャスはメンバー中最速の上がり
33秒8を計時したものの届かず、
芝1600mのG1で好走歴があった馬が①着(
ネオリアリズム)と③着(
ロゴタイプ)に入った。
レースが終わってから、「中山では
ルメール騎手よりも
M.デムーロ騎手だったか…」との思いが浮かんだので、ちょっと調べてみた。
中山芝重賞での
レースの上がり3Fタイムとの関係性についてだ。
中山芝重賞でのM.デムーロ騎手とルメール騎手
レースの上がり3F |
M.デムーロ騎手 |
ルメール騎手 |
33秒台 |
騎乗なし |
[0.0.0.1] |
34秒台 |
[7.0.2.8] |
[0.2.1.6] |
35秒台 |
[4.6.1.6] |
[4.2.3.11] |
36秒台 |
[3.0.3.12] |
[1.2.0.9] |
37~38秒台 |
[0.0.0.1] |
[0.0.0.1] |
※今年の中山記念は入れていないルメール騎手は昨年末の
有馬記念(
サトノダイヤモンド)など、中山の芝重賞で5勝を挙げているが、いずれも
レース上がりが35~36秒台だった。勝利した5レースの中でもっとも速かったのは、
マカヒキで追い込みを決めた昨年の
弥生賞で
35秒1。これをメンバー中最速の上がり
33秒6で差し切った。
一方、
M.デムーロ騎手は中山の芝重賞で14勝を挙げていて、その半数(7勝)が
レース上がりが34秒台の時。
皐月賞で4勝をマークしているが、
ネオユニヴァースで制した03年のレース上がりは
34秒7、
ダイワメジャーでの04年は
34秒4、
ロゴタイプでの13年は
35秒9、
ドゥラメンテでの15年は
34秒7で、実に4勝中3勝が
34秒台のレースだ。
今年の
中山記念はペースが遅く、レースの上がり3Fは
34秒6となった。これまでのジョッキーの成績で見れば、今年の
中山記念は、より
M.デムーロ騎手に向いたペースになったわけだ。
上表に見られるふたりの違いは、
レースでの位置取りや
仕掛けるポイントが異なりやすいからでもあるだろう。
ルメール騎手は溜めて最後に末脚を伸ばすケースが目立ち、直線距離の短い中山で差し切るには
上がりがある程度かかった方が良い面がありそうだ。
M.デムーロ騎手は早めに動くケースが目立ち、それが
皐月賞4勝という成績に結びついている気がする。
予想においては、
レースのペースを考えればふたりの騎乗馬の取捨を決められる、という話かもしれないが、この
ペースの読みが
厄介なのは言うまでもないだろう。
阪急杯は先行型が少なく、流れが緩むかと思われたら逆にハイペースとなり、
中山記念には先行型が複数いたものの落ち着いた流れになった。こればかりは本当に
何年やってもつかめない……。
M.デムーロ騎手は土曜日の
アーリントンC(
ペルシアンナイト)に続く重賞制覇で、2月のJRA重賞はこれで
6戦5勝となった。恐ろしいほどの勝率だが、
アーリントンC後も
中山記念後も、インタビューでは
昨年のことについて言及していた。
忘れている人もいるかもしれないが、昨年の2月も
M.デムーロ騎手は絶好調で、
京都記念の
サトノクラウンから
中山記念の
ドゥラメンテまでJRA重賞で騎乗機会
5連勝を達成した。
桜花賞も
ジュエラーで制したのだが、そこからは勝ち運に見放されてしまい、次のJRA重賞勝利は7月の
CBC賞(
レッドファルクス)だった。
そんなこともあり、今週末の勝利騎手インタビューでは、
去年は(重賞を連勝した後に)勝てなくなったから、今年はそうならないように頑張りたい、という趣旨のことを話していた。
勝って兜の緒を締めよ、という感じで、気を引き締めていることが伝わってきた。
M.デムーロ騎手は、今年、
『武豊TV!Ⅱ』(CS放送フジテレビONE)のジョッキー新年会に出演した際にも、
今年の目標を聞かれて、
制裁点数を減らすことを挙げていた。そのことと今週末の勝利騎手インタビューを聞いて、
トップにいる人は常に課題を見つけて、それを克服しようと努力を重ねているんだなあと感心した。今年の
M.デムーロ騎手は、昨年とはまた違った姿を見せてくれるのかもしれない。
ペースを予想することは厄介すぎて、やっても無駄、と言うのではなく、
M.デムーロ騎手を見習って、
努力を重ねることが重要なのか……。そうすれば、
花咲くこともある。そう信じて、今後も精進したいと思います。