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本番では巻き返しも見返すような走りも大歓迎
文/出川塁、写真/森鷹史


今やそんなことは言えなくなってしまったが、阪急杯堅い重賞のはずだった。07~16年の過去10年、レース全体で単勝回収率は38%しかなく、複勝回収率も54%。勝ち馬11頭(07年が①着同着だったため)の内訳を見ても1~4番人気が10頭を占めていて、7番人気だった09年のビービーガルダンものちにG1で②着に2回入る強豪だから、穴馬と呼べるほどでもない。

それが一転して今年は7番人気→4番人気→12番人気の決着となって、3連単は248万3180円をつけた。さすがにここまで荒れるとは思いもよらなかった。しかし、後出しジャンケンでしかないものの、登録馬が出揃った1週前の段階から波乱の予兆はあったのかもしれない。

というのも、過去10年の阪急杯はすべて16頭以上で行なわれていたのだが、今年は1週前登録の段階で14頭。2頭は出馬登録を行なわなかったので、実際には12頭で争われることになった。G1馬の出走もなく、重賞勝ちがあるのもシュウジロサギガンティアの2頭だけ。昨年のスプリントG1、高松宮記念スプリンターズSで好走した馬の出走もなかった。

こうなると、前述したシュウジロサギガンティアが人気に推されるのは当然で、しかも前者は昨年の、後者も一昨年の阪神C勝ち馬だから、コース適性も文句なし。特に今年のスプリント路線での飛躍が期待されるシュウジが単勝1.6倍の支持を集めるのは自然ではあったのだが、例年に比べて寂しいメンバーになったためにここまで人気が集中した面があったのは否定できない。結果論ではあるのだが、ここに波乱の芽を読み取るべきだったように思う。

その圧倒的1番人気馬シュウジはスタート直後から首を上げて行きたがり、川田将雅騎手は手綱を引き絞ってなだめるのがやっと。どうにかなだめたものの4コーナーでは早くも手応えが怪しくなり、見せ場なく⑧着に沈んでしまった。

2番人気のロサギガンティアもスタートで出遅れたことに加えて、3~4コーナーでは馬群の大外を回るロスの多い競馬になり、まったく伸び脚を見せることなく⑨着まで。単勝オッズが10倍を切る人気馬では唯一、ブラヴィッシモだけが4コーナーで手応えが残っているように見えたものの、直線でまったく前が開かず、追い出しにかかれたのはようやく残り150mを過ぎたあたり。③着争いに加わるのが精一杯でクビ差の④着に終わった。

ちなみに前半600mが33秒8という通過タイムは、昨年の阪急杯と同様。昨年はそこから上がり4Fが46秒1、3Fが34秒7という数字が掲示されている。このときはミッキーアイルの逃げ切りだったから、これはそのままミッキーアイルの脚力を示すものと考えていい。一方、今年のレース上がり4Fが47秒6、3Fは35秒9となっており、いずれも昨年より1秒以上遅い数字にとどまった。

同じ良馬場といってもまったく等しい馬場状態ということはありえないので、単純な数字の比較でレベルを決めつけるわけにはいかない。もちろん、勝ったトーキングドラムや②着のヒルノデイバロー、③着のナガラオリオンを貶める意図も毛頭ない。

とはいえ、昨年の勝ち馬ミッキーアイルが引退し、ビッグアーサーやレッドファルクスのような現役のスプリントG1馬の出走もなく、さらに1~3番人気馬がすべて不本意なレースに終わったことの影響を思わざるをえない数字であることも事実だろう。せめて、最後の重賞騎乗となった武幸四郎騎手カオスモスが逃げ粘っていれば、同じ大波乱でも盛り上がったのだが……。

それにしても、今年の高松宮記念はいったいどうなってしまうのだろうか。昨年②着のミッキーアイルは先述の通り引退済み。③着のアルビアーノも先週の京都牝馬Sで⑰着に大敗した直後、繁殖入りが発表された。そして、24日には勝ち馬のビッグアーサーまでもが脚部不安のために回避することが明らかになった。その前日には今年のシルクロードS勝ち馬ダンスディレクターの骨折も発表されている。

と、ついつい嘆きたくもなってしまう状況なのだが、競馬を20年も見てくれば多少は知っている。いざ本番になれば大熱戦が演じられたり、思わぬ新星が現れたりすることを。

阪急杯で人気を裏切ったシュウジロサギガンティア巻き返しがあるかもしれないし、この稿では高い評価をしなかったトーキングドラムヒルノデイバローナガラオリオン見返すような走りをしたとしても、そういうことなら大歓迎だ。次のレースには必ず新しい驚きが含まれている。それが私たちを惹きつけてやまない競馬の奥深さというものだろう。