まだまだ本番まで(そして本番も)楽しめそうな牡馬クラシック戦線
文/浅田知広、写真/川井博
近年は2月のレースからクラシックに直行する馬、そしてそれで好走する馬が増えてきたが、やはり、
チューリップ賞、そして
弥生賞となれば
「いよいよだ!」という気分になってくる。
その
チューリップ賞は2歳女王ソウルスターリングが人気に応えて無傷の4連勝となり、
桜花賞で
大本命に押されることが確定的になった。一方こちら、牡馬路線は今のところ
混戦ムード。2歳戦の段階で最有力と目されたレイデオロが
皐月賞直行となりそうで、今後のトライアル次第で勢力図ががらっと変わる可能性もある。
そんな中で行われた
弥生賞。1番人気が予想された
カデナは、前売りの段階では3~4番人気だった時間も長く、最終的には1番人気でもどちらかと言えば
「あまり信頼されていない!?」ゾーンの3.3倍にとどまった。
そして2番人気は、前記レイデオロにしか負けていない
コマノインパルスになるかと思いきや、4.6倍の3番人気止まり。2戦2勝の
ダイワキャグニーが3.6倍で、こちらが
カデナの対抗格という評価を獲得した。この3頭からはやや離れたが、ひと桁台後半に
グローブシアター、
ダンビュライト、そして
サトノマックス。いずれもチャンスはありそうで、この
弥生賞単体で見ても
混戦模様だった。
そんなレースを引っ張ったのは、
こぶし賞を勝ってきた
マイスタイル(8番人気、26.4倍)。2走前の
シンザン記念⑤着さえなければもう少し人気になりそうだが、ともあれこの馬の作った流れが見るからにスローで、800m49秒8、1000mは63秒2。
こうなると流れとしては2番手につけた
ダイワキャグニーが圧倒的に有利。ただ12頭立てだけに、後方の
カデナや
コマノインパルスも距離損を抑えつつ、うまくコーナーを処理できれば、という展開でもある。
4角手前でその
コマノインパルスが先行グループに取りつき、すぐに外から
カデナが追撃。
コマノインパルスの
田辺騎手がちらっと外を見やったシーンなども画面には映し出されていた。
しかしそのタイミングで、内でのちょっとした動きに、各馬の外へ出したいという動きも重なったのか、馬群は大きく横に広がって4コーナーを通過。ちょうど
コマノインパルスや
カデナの外に迫っていた
サトノマックスが、さらに
大きなロスを喫していた(その後方で
キャッスルクラウンは、前とは関係なく外に飛んでいた)。
その揺り戻しで内もまたごちゃついて、
ベストアプローチあたりは
不利も受けたが、ここを無難に通過できたのは、もちろん先頭を行く
マイスタイルだ。もともとスローだった上に、勝負どころで後続がバタバタすればチャンス到来。直後にいた危険な相手
ダイワキャグニーが失速(⑨着)したこともあり、坂下で2馬身ほど抜け出した。
外では3番人気の
コマノインパルスも伸びを欠き(⑥着)、
マイスタイルに唯一襲いかかったのは大外の
カデナ……、だったのだが、これはこれで他馬とは関係なく、単独になっても外に少々ヨレ加減。いよいよ
マイスタイルの逃げ切りか、という態勢にもなりかけたものの、最後はしっかり
カデナが立て直して、差し切り勝ちを収めたのだった。
そして大事な
出走権の③着争いは、好位から渋太く食らいついた
ダンビュライト。その後ろで外に立て直す形になった
ベストアプローチと、大外に振られた
サトノマックスも差を詰めたが、最後は同タイムの④~⑤着。この3頭は、4コーナーから直線での
運・
不運が明暗を分ける形になってしまった。
ともあれ、勝った
カデナは、これで牡馬相手には負けなしの5戦3勝、重賞2連勝。
皐月賞も牝馬不在なら……という単純な話でもなかろうが、5戦すべて
上がり3ハロン1位というおまけつきで、しっかりした末脚を持つことは間違いない。ただ、さらに相手も強化される
皐月賞は、今回のようなもたつきがあると勝敗に直結する。もちろんコース2度目、休み明け2戦目の上積みも見込めるだけに、本番ではしっかりとした走りを期待したい。
そしてスローに落として見事②着を確保した
マイスタイル。12頭立ての今回はこの程度で済んだが、フルゲートの
皐月賞で後続になにかが起きれば、再び「自分の形」に持ち込んで一発という可能性もある。もし引き続き
横山典弘騎手が手綱を取るなら、なにかやってくれそうな雰囲気も増すというものだ。
と、
弥生賞までは消化したが。レイデオロのほか、
朝日杯FSを勝ったサトノアレスも、重賞連勝中のブレスジャーニー(今回は登録のみで回避)もまだ出てきていない。牝馬路線とは違い、
まだまだ本番まで(そして本番も)楽しめそうな牡馬クラシック戦線だ。