本番に繋がりにくいトライアルだけど、さて今年は!?
文/浅田知広、写真/川井博
[1.0.2.52]。なんの数字かと言えば、
フィリーズレビュー出走馬・過去10年の、
桜花賞における成績である。優勝したのはレジネッタだけ、と、出だしから夢も希望もないようなネタはよろしくない。
そこで追記すれば、別に
桜花賞で負けたところで、同年G1・3勝を挙げたメイショウマンボや、
スプリンターズSを勝ったアストンマーチャン。翌年以降も含めればカレンチャンやクイーンズリングといった名前も出てくるので、ここに出走したらその時点でダメ、という話ではない。
しかし、
本番に繋がりづらいトライアルという事実は動かせない。馬券を買うなら、ここでは好走しても
桜花賞ではコケそうな馬、という視点で今年のメンバーを見渡せば。1番人気の
レーヌミノルは、おそらく短距離向きということも含めての断然人気。続く2番人気
カラクレナイは1400m2連勝。もちろん、どちらも
桜花賞で「ない」とは言い切れないが、ベストは今回っぽい2頭が上位人気で単勝1.8倍と3.8倍。3番人気の
ジューヌエコールは7.0倍と離された。
ただ、人気馬3頭が上位を独占、というのもまずあり得ないのがこのレース。過去10年の3連単は最低でも一昨年、1→7→2番人気の
2万馬券だから、残る1頭は穴っぽい馬。ただ、その「穴」がどの馬かわからない、というのはこの手の話でよくあるもので、今回も選択の幅は広かった。
ともあれ、人気2頭はまずまず信頼してもいいんじゃないか、という感触はある中で、
レーヌミノルはポンと1頭好スタート。
カラクレナイは遅れ加減だったが、こちらは末脚勝負、特段気になる遅れではない。
一方、前では
アズールムーンと
ベルカプリが競り合って、3ハロン通過は33秒5と速い流れ。
レーヌミノルは作戦通りか、内の様子を見てからなのか、過去5走より後ろの中団待機を選択した。
そして4コーナー手前。最後方近くから動き出した
カラクレナイが見えていたとは考えられないが、ほとんど同じタイミングで
レーヌミノルも進出開始。直線入口ではほぼ先行勢を捕らえ、あとは抜け出すだけという形を作り上げた。
一方、さらに後ろから追撃した
カラクレナイは、4角で大外で
距離損は喫したものの、半径を緩く取った分だけ勢いは衰えずにそのまま追い込み態勢へ。終いまで脚が持てば差し切りもありそうで、無難に「権利取り」を目指すのではなく、①着を獲りにくる競馬を披露した。
その結果、
レーヌミノルの直線独走・②着争いという展開ではなく、
レーヌミノルと
カラクレナイが、内と外で馬体を離しての一騎打ち。この態勢になると、まあ、ここ一連の流れからして、やっぱり
M.デムーロ(
5週連続日曜メインレース制覇中)ということに。最後は
レーヌミノルを半馬身捕らえて、
カラクレナイが
「1400m3連勝」で
桜花賞への切符を手にしたのだった。
カラクレナイの
父ローエングリンは3歳春のうちに4勝を挙げたが、
皐月賞や
日本ダービーはそれでも除外(しかし3歳にして
宝塚記念では③着好走)。そして
祖母レッドチリペッパーは、
クイーンCや
フラワーCの②着などがありながら、当時は外国産馬にクラシック出走権がなく、
「外国産馬のダービー」NHKマイルCに進んで③着だった。
カラクレナイも、戦績からすれば
桜花賞はどうか……というところだが、まず「出走できる」時点で2頭とは違う。そして「3連勝でクラシック」は、同じ
ローエングリン産駒ロゴタイプが2000m未経験で
皐月賞を制したほか、やはり
皐月賞を制した
母の父アグネスタキオンにも通ずるものがある。もちろんソウルスターリングという壁は厚いが、あちらは先行、こちらは追い込み。2頭が違う競馬をするとなれば、今回のようにゴール前できっちり捕らえても不思議はない。
そして、馬券的にも出走権争いからも注目の③着争いはといえば。そのゴールよりもかなり前、直線入口で
レーヌミノルが内に切れ込んで、何頭かが大きな
不利を受けてしまった。その1頭、④着
ジューヌエコールは賞金で
桜花賞には出走可能、そして仮にスムーズでも、脚色から③着逆転まではどうかというところ。しかし⑥着の1勝馬
フラウティスタはラチ沿いがそのまま開いていれば、仮に
ジューヌエコール側にも不利がなくてもいい勝負、あるいはさらに上もあっただろうか。
ともあれ、実際に③着を確保したのは、スタートで大きな出遅れを喫した
ゴールドケープ(6番人気)。
カラクレナイよりさらに後ろの道中最後方、そして4角は
カラクレナイよりもさらに外から突っ込んだ。出遅れからの好走が
脚質転換の良いきっかけになるケースもあるだけに、今後の走りには注目したい。