このペースで好走した馬は、皐月賞に向けて収穫大
文/編集部(T)、写真/川井博
今年の
スプリングSも頭数が集まらず、
11頭立てで行われることになった。
スプリングS「も」というのは、3歳牡馬クラシック路線の主要レースが少頭数になるのは近年の傾向となっていて、15年以降、
皐月賞のトライアルレース(
弥生賞、スプリングS、若葉S)はすべて
12頭立て以下で行われているからだ。
以前は
共同通信杯や
きさらぎ賞に出走した馬が、トライアルで中山を経験し、いざ
皐月賞へ……という流れがあった。ところが、近年はトレンドが変わり、
皐月賞は近5年のうち、4年で前走が共同通信杯から直行した馬が制している。
その理由として、外厩の充実や技術の進歩で、ある程度間隔が空いても問題ないだけの環境が整い、
トライアルを使う必要がなくなったということもあるのだろう。トライアルの時期を早める、あるいは3レースの開催時期をばらけさせるなどの対策を、そろそろ考える時期が来ているのかもしれない。
それはともかく、頭数が揃わないということで、やはり
レースのペースは遅くなりがち。実際、この2週前に行われた
弥生賞も12頭立てで、
前半1000m通過が63秒2とスローペースになった。
そして、この週に行われた
若葉賞、スプリングSはともに
11頭立てということで、
「ここもペースが遅くなるんだろうなあ」と思っていた。ところが、土曜の
若葉Sは
タガノアシュラが逃げて
前半1000m通過が59秒1とペースが上がり、2番手で進めた
アダムバローズが押し切る結果となった。
しっかりした先行馬がいると、少頭数でもレースが締まる。では
スプリングSは?などと考えながらレースを見ていると、スタートから
サウンドテーブルが淀みないペースで馬群を引っ張り、勝負所で
オールザゴーが並びかけてきたことで、
前半1000m通過が60秒3。4コーナーでマクリ気味に進出して先に抜け出した
プラチナヴォイスに対し、それに連れて上がってきた
ウインブライトが直線で差し切り、初重賞制覇となるゴールを切った。
ウインブライトはデビュー2戦(⑥⑤着)の前半1000m通過が62秒台の緩いペースで末脚不発となっていたが、
3戦目以降は61秒6以内のペースで流れて①②①①着。この結果を見る限り、もし
弥生賞に出ていたとしたら権利を取れていなかった可能性もありそうで、その点でも
この馬に流れが来ていたということなのだろう。
一方、1番人気④着の
サトノアレスは6戦目で初めて連対を外す結果となったが、
過去5戦の前半1000m通過は60秒6以上だった。ペースが上がったことで末脚の切れを削がれた可能性もありそうで、展開次第では本番での巻き返しもあり得るのではないだろうか。
次週に
毎日杯を控えているが、これで
皐月賞のトライアルは終了。前述したように、前哨戦のほとんどが少頭数でのレースとなった。その中でも、
ウインブライトをはじめとする
スプリングS組にとって、
このペースを経験できたことは大きそうだ。
というのには理由があって、過去10年の
皐月賞を振り返ると、もっとも頭数が少なかったのは15年の15頭立てで、
それ以外はすべて18頭立てで行われている。そして前半1000m通過がもっとも遅かったのが08年の61秒4で、それ以外は
中山開催だと60秒2以内となっている。
レース後に
「馬がペースに戸惑った」というコメントを聞くことは多い。それがプラスに働くこともあるだろうが、レース経験の少ない3歳馬にとって、
経験したことのないペースで走ることはハンデになるはず。
実際、近3年の
皐月賞連対馬は、すべて
前半1000m通過が61秒2以内となった芝1800m以上の牡牝混合重賞で連対していた馬だった。やはりある程度流れたペースを経験して好走していることが、近年の
皐月賞好走馬のトレンドといえそうだ。
そういった視点で今年の3歳戦線を振り返ると、
前半1000m通過が61秒2以内だった芝1800m以上の牡牝混合重賞は、現時点でこの
スプリングSと、
東京スポーツ杯2歳S(①着
ブレスジャーニー、②着
スワーヴリチャード)、
ホープフルS(①着
レイデオロ、②着
マイネルスフェーン)、
共同通信杯(①着
スワーヴリチャード、②着
エトルディーニュ)の計4レースとなる。
そんなことを皆が考えるようになると
皐月賞がスローになって、傾向を覆される可能性もありそうだが……。少なくとも、
スプリングS上位組も皐月賞で注意すべきと見るが、どうだろうか?