今年のシャケトラにも大きな期待を寄せていい
文/出川塁、写真/佐々木光
今年の
日経賞は、復権を目指すG1馬(
ゴールドアクター、
ディーマジェスティ)と、飛躍を目指す4歳馬(
シャケトラ、
レインボーライン、
ジュンヴァルカン、
ミライヘノツバサ)のどちらが上回るかという構図。その結果はといえば、
シャケトラ、
ミライヘノツバサという重賞未勝利の4歳馬がワンツーを決め、
現時点の勢いが実績を圧倒することになった。
ゲートが開いてまず飛び出したのは
ヤマカツライデンと
ミライヘノツバサの2頭で、1周目の直線に入ったあたりで
ヤマカツライデンがハナを奪い切る。その直後に並ぶのが
アドマイヤデウスと
ゴールドアクターという6歳馬の2頭。
レインボーライン、
シャケトラ、
ジュンヴァルカン、
ディーマジェスティはその後ろに控える隊列となった。
向こう正面で縦長に広がった馬群が示すように、ペースはそれほど落ち込まないまま、勝負どころの3~4コーナーへ。ここで上位人気馬たちに目をやると、
ゴールドアクターは昨年のこのレースや一昨年の
有馬記念を勝ったときと同じように、前の馬をすぐに捕まえにいける位置。脚色がいいのは
シャケトラで、外を通ってスーッとポジションを押し上げていく。
対照的に
ディーマジェスティは、
蛯名正義騎手の手綱が激しく動き、ムチが入ってもなかなか前に進んでいかない。向こう正面で内ラチ沿いに潜り込んだ
レインボーラインは、
ミルコ・デムーロ騎手らしく内を割ってくる構えだ。
もっとも、直線に入る手前で先頭に立った
ミライヘノツバサもさすがの中山巧者ぶりを発揮して、直線の半ばまで後続を寄せつけない。しかし、そのまま押し切るかと思わせたのも束の間、急坂に差し掛かると脚色が鈍り、後続の馬たちも急接近。ついには外から
シャケトラが抜き去っていった。最後は差されたものの、②着の座は
ミライヘノツバサが死守。③着には、一昨年の勝ち馬である
アドマイヤデウスが渋太く伸びて飛び込んだ。
先週、
私が担当した
阪神大賞典の
速攻インプレでも同じようなことを書いたが、このレースも一度も13秒台のラップに落ちることがない、締まった流れとなった。中山での過去10年の
日経賞で13秒台のラップが刻まれなかったケースは5回あって、その勝ち馬は同年の
天皇賞・春で
1勝②着2回着外1回という成績を残している(08年のマツリダゴッホは不出走)。
このうち、着外に敗れた07年のネヴァブションはレース中に骨折していたことがのちに判明しており、無事に走ればオール連対となっている。このデータを見る限り、
今年のシャケトラにも大きな期待を寄せていい。
血統について補足すれば、
シャケトラはここ数年のトレンドとなっている
Haloクロス馬。これは先週の
阪神大賞典を勝ったサトノダイヤモンドも同じで、
天皇賞・春の重要プレップを東西ともに
Haloクロス馬が勝ったことになる。ところが、これまでに
Haloクロス馬が
天皇賞・春を制したことは一度もないのだ。
Haloクロス馬は軽いスピードや一瞬の切れに秀でることが多いので、3200mのスタミナ合戦ではアドバンテージにならないのだろう。
とはいえ、サトノダイヤモンドも
シャケトラも、軽さや一瞬の切れだけの馬ではなく、重厚感も持ち合わせているのはそのレースぶりや馬体を見れば明らかだ。この2頭なのか、それとも第3の馬が現れるのか。今年の
天皇賞・春は、
Haloクロス馬の初制覇なるかという点にも注目したいと思っている。
一方、G1馬2頭は先行きに
不安が募る結果に終わってしまった。いつでも前を捕まえられる位置にいた
ゴールドアクターは直線で意外なほど伸びず、最後は
レインボーラインにもかわされて⑤着に終わった。昨年の
有馬記念のように逃げるのがキタサンブラックならいざしらず、絶対の自信を持つ中山で重賞未勝利の
ミライヘノツバサより先に失速しまうとは。以前のこの馬では考えられないような光景だった。
同じことは中山重賞で
2戦2勝の
ディーマジェスティにもいえ、直線で遅ればせながら伸びてはきたものの⑥着まで。もともと勝負どころで追っつけて追っつけてようやく伸びてくる馬ではあるのだが、それにしても
菊花賞からの3戦はあまりにも反応が鈍い。この2頭のG1馬はここが目標という仕上げではなかったことを考慮しても、
着順、内容ともに納得のいくものとは程遠く、立て直しが急務となった。