アルアインは皐月賞でも楽しみが広がった
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
無傷の3連勝で
フラワーCを圧勝した牝馬・ファンディーナの
皐月賞挑戦が決まったというニュースも受けての
毎日杯、である。まあ、
桜花賞のソウルスターリングは強そうだとか、
オークスへ向けては距離を縮めるのはどうか、などあるとはいえ。
共同通信杯のスワーヴリチャード、
弥生賞のカデナとて、別に弱そうなわけでもなし。ただそもそも、この
毎日杯に出走してきた
サトノアーサーが、
きさらぎ賞を圧勝でもして
皐月賞直行なら、さすがにファンディーナも
皐月賞よりは
桜花賞、という話になったんじゃないか、という気もする。
ともあれ、その
サトノアーサーが単勝1.2倍の断然人気に推された今年の
毎日杯。1.4倍の
きさらぎ賞で②着に負けたのに1.2倍。しかし、なんといっても今度は良馬場である。一時はまた道悪かとも思われたが、なんとか土曜は降らずに済んで、これなら切れが鈍ることもないだろう、という断然人気だ。
その
サトノアーサーの
きさらぎ賞も
消化不良だったが、それと同じく2戦2勝で挑んだ初重賞・
シンザン記念で
大きな不利を受けて⑥着敗退を喫した
アルアインも、ここは巻き返しの舞台。
サトノアーサーとの比較では地味ながら、
千両賞で抜け出した瞬間の脚は見どころあり。
京成杯②着とすでに重賞実績のある
ガンサリュート(11.4倍)を抑えているのだから、ここは相手が悪いだけで、期待はされているというオッズだ。
さて、2頭の巻き返しがあるのか。ゲートが開いてみれば、なんとその2頭が揃って出遅れである。ただ、その後の動きはまったく違った。少頭数だったこともあり、
アルアインは押っつけてすぐに2番手の内を確保。一方の
サトノアーサーは、もともと末脚勝負だけに、そのまま後方待機である。
前半の600m通過は35秒2。
テイエムヒッタマゲがいいペースで引っ張って縦長になったこともあり、
サトノアーサーにとって悪い展開ではないように見受けられた。ところが、その後は12秒2-12秒7で、1000m通過は60秒1。そしてペースが落ちているのに、なぜか先頭の
テイエムヒッタマゲのリードが広がるという、レースの見た目とラップタイムが一致しないような展開になった。
その12秒7の途中で動き出したのが、2番手の外にいた
クリアザトラックで、内の
アルアインも釣られるように徐々に進出。思いのほか
テイエムヒッタマゲの失速が早かったこともあり、4角手前では早々に
クリアザトラックが先頭、
アルアイン2番手という態勢になり、その後ろは3馬身。しかも、そこからさらに遅れて
サトノアーサーはまだ最後方近く。序盤の
サトノアーサーにも悪くないような展開から一転、
アルアインは馬ナリで2番手を追走し、
サトノアーサーには大きな差をつけて4コーナーを通過する図の完成だ。
もちろん、
サトノアーサーは
自慢の末脚を持つだけに、それで
確勝ムードとまでは言えないところ。実際、離れた大外に持ち出した
サトノアーサーは一気に差をつめてきた。
ただ、
アルアインも追い出されてからの反応は鋭い馬。一気に
クリアザトラックを突き放すと、ひとまず独走態勢に入って
サトノアーサーとの差は3~4馬身。
千両賞では似たような態勢から、キョウヘイ(次走
シンザン記念優勝)に1馬身まで詰められながらも勝ち切ったが、
サトノアーサー相手ではどうかという残り200mだ。
カメラの角度もあり、
サトノアーサーが差せるんだか届かないんだかという、もどかしさも感じる10秒少々。ゴール板前、カメラがコースと90度の角度になると、
アルアインが
サトノアーサーの追撃を半馬身差で振り切るシーンが映し出された。
こうして
「前走消化不良」同士の対戦は、
アルアインに軍配が上がって3勝1敗。そして敗れた
サトノアーサーは2勝2敗となって優勝争いから一歩後退。いや、大相撲ではないので星取りは関係ないが、
アルアインの「1敗」は
どうにもならない不利があってのもの。あの場面、挟まれずに持ち味の鋭い脚を繰り出していたなら、
無敗だった可能性も十分にある。自在性やその一瞬の脚は、今回よりも小回り中山でより強力な武器になりそうで、
皐月賞でも楽しみが広がった。
対して敗れた
サトノアーサーは、いつの間にやら
不利な展開に追い込まれていた感もある。ここから
ダービー直行との話だが、東京2400mの舞台で有無を言わせぬ末脚を繰り出しても不思議はない。2連敗を喫した上に、
ダービーまで2カ月以上。4戦連続単勝1倍台から一転、
ファンのマークが外れて人気を落とすようなら、
そのダービーこそが狙いどころかもしれない。