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2頭の女王対決はクッキリと明暗を分けることに
文/出川塁、写真/森鷹史


今年5歳となった2頭の女王、ミッキー“クイーン”“クイーン”ズリングの17年初戦は阪神牝馬S。しかし、このG1牝馬2頭はクッキリとを分けることになってしまった。

15年の二冠牝馬ミッキークイーンは、昨年4戦して1勝もできなかった。春は阪神牝馬Sヴィクトリアマイルでいずれも②着。秋は順調さを欠いて復帰予定の京都大賞典を回避し、ぶっつけで臨んだエリザベス女王杯は③着、有馬記念も⑤着と不完全燃焼の1年に終わった。

仕切り直しといきたい今年も阪神牝馬Sから始動。昨年は久しぶりのマイル戦に戸惑ったのか追走に苦しみ、最後はいい脚を使ったものの②着までだった。古馬牝馬最強クラスの実力を持っていることは実績が示す通りで、あとはマイル戦に上手く対応できるかどうか。おそらく次走となるヴィクトリアマイルで3つめのG1タイトルを手に入れるためにも、ここで目処をつけたいおきたいところだった。

結果からいえば、②着のアドマイヤリードに1馬身4分の3の差をつける快勝。道中は馬群の真っ只中で8番手あたりを手応えよく追走し、直線の半ばで前が開いてからは脚力の違いを見せつけた。昨秋に比べて体調がグンと上向いているのは間違いない。とはいえ、これでマイル対応OKとまでいえるかどうか。今回は重馬場となったこともあって前半1000m通過が59秒3と、それほど追走スピードを求められないレースになった。このぐらいのペースであれば中距離馬にも対応しやすく、速い流れのマイルG1に向けての予行演習になったかといえば疑問も残る。

それでなくともヴィクトリアマイルというG1には、人気を背負った中距離の強豪牝馬が敗れ、短距離色の強い牝馬が凱歌をあげてきた歴史がある。たとえば、ウオッカがマイル戦初出走だったエイジアンウインズの後塵を拝した08年。たとえば、二冠牝馬ブエナビスタが1歳年下の三冠牝馬アパパネに敗れた10年。アパパネは決して短距離馬というわけではないが、血統表だけを見れば紛れもないスプリンターだった。

過去2年もそうだ。16年のスプリンターズS勝ち馬でもあるストレイトガールが披露した一気の加速力、トップスピードの速さの前に、一昨年の1番人気ヌーヴォレコルト、昨年の1番人気ミッキークイーンというオークス馬たちは為す術もなかった。

そのミッキークイーンが今年の阪神牝馬Sで見せたのはディープインパクト産駒らしい中距離で切れる脚で、この馬が大きく変わったわけではない。そもそも430キロ台の細身の牝馬で、短距離馬のような筋肉の鎧を身につけることは現実的ではない。もちろん、能力上位なのは間違いないが、ヴィクトリアマイルを勝つとしたら中距離的な切れ味が活きる展開になることが条件と考えたい。

もう1頭の女王クイーンズリングは、よもやの⑮着に敗れた。今回はパドックからうるさいところを見せ、スタートから2ハロンほどはハナに立ってしまうほどに引っ掛かった。馬体もプラス14キロと太めが残り、レース中に落鉄する不運まで重なっては度外視できる一戦ではある。心配なのは精神面。前走は海外遠征、今走は重馬場と厳しい条件での大敗が続いただけに、尾を引かなければいいのだが。

②着のアドマイヤリードステイゴールド産駒らしいタフさを見せた。大外16番枠から最内にもぐりこみ、クリストフ・ルメール騎手のジョッキーパンツが泥だらけになったように、この馬も相当なキックバックを受けたはず。それでもまったく怯むところを見せずに、内から鋭く伸びて②着に食い込んだ。③着のジュールポレールともどもオープン入り初戦の重賞で好走を果たし、これからが楽しみになった。

最後にこの馬にも触れなければならない。冒頭で「2頭の女王」と述べたが、本当はもう1頭いた。それはもちろん、13年にオークス秋華賞エリザベス女王杯とG1を3勝したメイショウマンボだ。14年のヴィクトリアマイル②着を最後に中央競馬では3年近くふたケタ着順が続いて女王の威厳はすっかり失われ、苦楽をともにした武幸四郎騎手もひと足先に鞭を置いた。それから遅れること1ヵ月あまりで迎えた引退レースのここも⑭着。ドラマのような結末にはならなかったが、今はともかく「お疲れ様でした」と声をかけたい。