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濃い経験値を活かし、大一番に強い鞍上のエスコートで見事戴冠
文/山本武志(スポーツ報知)、写真/森鷹史


単勝1.4倍。圧倒的な1番人気を集めたソウルスターリングに何か死角はないものかと、この1週間は必死に考えていた。しかし、デビュー時から大きな体重の変動もないバランスのいい馬体は素晴らしく、好位からの正攻法で楽々と抜け出してきた全4戦の勝ちっぷりもほぼ完ぺき。特にこの時期の牝馬にとって、自分のレースの「型」が確立しているというのも大きな武器。考えても、考えても、まったく隙がないことに、ただ驚くばかりだった。

しかし、競馬に「絶対」はなかった。3コーナーからソウルスターリングは徐々に加速をつけていき、直線入り口では前を射程圏にとらえる。今まで何度も見てきた必勝パターンだったが、ここからまさかの光景が待っていた。

雄大な馬体から繰り出される大きなフットワークが影を潜め、先に抜け出したレーヌミノルとの距離がなかなか詰まらない。ルメールが左から右にステッキを持ち変えて必死に追ったが、最後までギアが上がらないまま。ゴール前で後ろから伸びたリスグラシューにも差され、③着と初の敗戦を味わった。

レース前には重箱の隅を突くように道悪がどうかと考えたりもしたが、両親でG1・16勝という欧州の名馬による配合。パワー勝負はむしろ歓迎かな、と勝手に思っていた。しかし、だ。この馬は実際に今までのレースで楽々と上がり33秒台を出し、日本の軽い馬場にもしっかりと対応している。つまり、「欧州産馬」というよりも「日本馬」という要素が色濃く出ているサラブレットなのだ。

直線では手前を何度も換え、いかにも走りづらそうといった様子。敗因は明らかに道悪だったと思う。ずっと導き出せなかった「答え」をあっさりと突きつけられ、レース後は何とも言えない喪失感に襲われた。ちなみに、それは本命に推したアドマイヤミヤビが見せ場もなく沈んだことも大きいが…。

さて、勝ったレーヌミノルである。昨夏の小倉2歳Sを圧勝した時、手綱を取った浜中騎手はこう言っていた。「牝馬なのにおとなしすぎるほど、おとなしい。マイルはこなせると思いますよ。小倉2歳Sで終わる馬じゃないです」

それから4戦は勝ち星に見放されていたが先行、差し、逃げ、差しと戦法を色々と変えながらも②③④②着。先述の言葉通り、操縦性の高さを活かして、重賞で常に大崩れせずに走っているのは高い能力があるからこそだと思っていた。しかも、このメンバーで牡馬相手の重賞で複数回連対しているのは、この馬だけ。地味ながら、もっとも濃い経験値を積んできていた。

そして、何より光ったのは池添騎手のエスコートだろう。行き過ぎず、抑え過ぎず、身上のスピードを殺さないように好位からの正攻法を選択。後続を離して逃げるカワキタエンカを自らとらえにいき、直線で抜け出してからも最後まで脚を伸ばし続ける完璧な手綱さばきだった。

池添騎手といえば、オルフェーヴルとの名コンビの印象が強いが、個人的には牝馬での好騎乗の方が印象に残っている騎手。特に当たりの柔らかさで言えば、現役騎手屈指だろう。オルフェーヴルでも池添騎手だからこそ折り合いをつけ、あの気性の激しさを闘争心へ変えることができたと思っている。

そして、何より大舞台での強さ重賞74勝中、実に23勝がG1というのは驚異的と言っていい。その第一歩となったのが02年、13番人気のアローキャリーで勝った桜花賞。今回と同じようにテン乗りで、好位からの抜け出しで波乱を演出した。あれから15年。一昨年、昨年と②着に泣いたが、ようやく原点の地で会心の笑顔を浮かべることができた。

ハイレベルと評判だった現3歳世代の牝馬だが、クラシック初戦は思わぬ波乱の決着に終わった。各馬が力を出し切ったとは言いづらい馬場状態だったとはいえ、「1強」の評判が高かった勢力分布図は大きな修正が必要となりそうだ。当面の大きなポイントとなりそうなのは、「1強」だったソウルスターリングは巻き返しの舞台にどこを選ぶのか。個人的にはぜひともオークスに出走して、いい馬場で本来の走りを見せてほしいと思っている。