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今年の皐月賞は「歴史の上での分岐点」だったかもしれない
文/鈴木正(スポーツニッポン)、写真/森鷹史


ひょっとしたら今年の皐月賞は、その歴史においてひとつの分岐点だったのかもしれない。考えさせられることの多い牡馬クラシック初戦だった。

思考をうながす第1の要素は牝馬ファンディーナの参戦だった。能力は誰もが認める。3戦3勝フラワーCの勝ちっぷりは圧巻だった。だが、果たして牡馬相手の頂上決戦で通用するのか。まずは、ここが今年の皐月賞を考える上でのポイントとなった。

結果から言えば、ファンディーナは牡馬の壁に屈した。パドックではチャカチャカと興奮し、発汗もきつかった。道中は理想的な位置に取り付き、岩田騎手も力を信じて早めのスパートをかけたが、坂で止まり、牡馬にかわされた。

せっかくのチャレンジだ。ああ、負けちゃったね、で終わらせたくない。敗因を思考して次につなげる必要がある。まず、中3週での中山への2度の遠征はきつかったのではないかということだ。それも覚悟の上での挑戦だったが、この時期の3歳牝馬には輸送がいかに厳しいかは今後に向けて覚えておきたい。

それから人気を背負えば、騎手も人気馬にふさわしい乗り方をしなければならないということだ。岩田騎手の早めのスパートは責められない。1番人気馬だからだ。そして1番人気に仕立てたのはファンだ。牝馬が牡馬をなぎ倒して1冠を手にする、そんな夢のようなシーンを見たいからという、いわば希望票も入っていたはずだ。

そのあたりも勘案しながら、さて岩田騎手はどう乗るかと思考しなければならない。とはいえ、戦前に岩田騎手の考えまで読み切って馬券の参考にすることは難しい。すべて結果論でしかないが、その結果論を覚えておき、同じような場面が訪れた時に活かしたい。

そしてアルアインペルシアンナイト。中山でのトライアルに目もくれなかった馬の①②着で決まったという事実だ。今年は弥生賞スプリングSとも平凡な時計で決着した。そこに来て、今週の中山は突然、高速化した。1分57秒8皐月賞レコードでの決着。トライアル組の馬には非常に厳しい時計。おそらく道中、それらの馬たちは戸惑いながら追走していただろう。

結果、弥生賞③着のダンビュライトが③着に食い込んだだけ。東京のサウジアラビアロイヤルCで②着がある馬だ。もしかしたら高速決着に適性があったのかもしれない。弥生賞での敗戦も今となればうなずける。

高速決着下でアルアインペルシアンナイトのワンツー。納得がいく。アルアインが制した毎日杯は1800mで1分46秒5。これは速い。コースの差など考えず大胆に比較すれば、スプリングSの勝ちタイム1分48秒4より2秒近く速い。ペルシアンナイトアーリントンC1分34秒1も同様だ。

高速化した馬場についてはこう考えている。空港などによくある「動く歩道」の上に乗っているような馬場。どの馬もスピードが底上げされ、前の馬はなかなか止まらず、距離の壁も多少、相殺される。実際に高速馬場の上で馬に乗ったことがないので(当然だが)、この理論が当たらずとも遠からずなのか、まったく間違っているのかすら分からないが、今回はマイラーに近く、2000mに実績のない、スピードタイプの馬が①②着を決めた。私の理論に少し近かったように思う。

そして、①②着が池江厩舎だったということも思考材料に値する。同厩舎は弥生賞にもスプリングSにも1頭も馬を送り込まなかった。まさか、これらのシナリオをすべて読み切っていたわけではないだろうが、中山でのトライアルにあまり意味を見出さなくなっているのではないか。レベル自体を疑問視しているのか、中山への繰り返しの輸送を嫌っているのか。おそらく後者だろう。

近年、皐月賞共同通信杯から直行した馬が勝ってきた。無駄な輸送は避けつつ、本番に向けてしっかり間隔を空ける(アルアインは中2週だったが)。そのあたりを重要視し始めているのかもしれない。

池江厩舎の策がピタリとハマった今回が、来年以降の皐月賞トライアルを考える上での分水嶺になる可能性がある。冒頭で「歴史の上での分岐点」と言ったのは、このことだ。さあ、ダービーは本当に難しくなった。今、クラシックの勝ち方をもっとも知るのが池江厩舎だとするならば、アルアイン毎日杯で敗れた後、ダービー直行のプランを取ったサトノアーサーあたりは不気味に映る。