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オークスでもうひと波乱があっても不思議はない!?
文/浅田知広、写真/稲葉訓也


もしこのレースが、桜花賞前に行われていたら、いったいどんな人気順、どんなオッズになっただろうか。あるいは、仮に桜花賞皐月賞が人気順通りの決着だったら、どうなっていただろうか。

いや、1番人気に推されたホウオウパフュームは、確かに強い競馬での2連勝。単勝2.1倍相当かは別にして、この馬の1番人気にケチをつけようという話ではない。ただ、どうも「波乱の桜花賞」「波乱の皐月賞の影響を受けた馬が2頭。4.1倍で2番人気のフローレスマジック、そして離れた11.5倍で3番人気のタガノアスワドだ。

フローレスマジックの前走クイーンCは、桜花賞で2番人気⑫着に敗退したアドマイヤミヤビの③着だった。そしてタガノアスワドつばき賞で、ファンディーナに1馬身4分の3差の②着。そのファンディーナはご存じの通り、牝馬による69年ぶりの皐月賞制覇を目指したものの、1番人気で⑦着敗退を喫してしまった。

この2頭。もし桜花賞前だったら。あるいは桜花賞のアドマイヤミヤビ、皐月賞のファンディーナがともに勝ち負けを争っていたとしたら。どうも、自分たちのレース以外の要因でオッズが動いた印象もあった。そして、その動いた分がすべてホウオウパフュームにかぶって2.1倍まで支持された感もあり。さて、その2頭が「おいしい」のか、それとも4番人気以下の馬まで妙味が増したと考えるべきか。なんにせよ、微妙に不穏な気配が感じられる単勝オッズではあった。

レースで先手を奪ったのは、その離れた3番人気になったタガノアスワドネオユニヴァース産駒で重馬場の新馬戦を快勝しているだけに、前日にもっと雨が降ってくれた方が良かったかもしれないが、少し折り合いを欠き気味ながらも800m48秒9と落ち着いた流れに持ち込んだ。

2番手にヤマカツグレースが続き、フローレスマジックは少々予想外の好位の一角。そしてホウオウパフュームの後方追走は、大方の予想通りだろうか。ただ、そこからが見た目にも緩く、12秒6、そして12秒8。元からさほど速くなかったところからさらに落ち、勝負どころにかかっても極端には上がらず、直線勝負になりそうな展開だ。それでも、抜群の決め手を持つ馬なら一気の差し切りもある東京だが、果たしてホウオウパフュームがそこまでの脚を使えるのか。まあ「普通の1番人気」ならどう考えてもピンチである。

そして直線。これは「おいしい」可能性があったタガノアスワドか、フローレスマジックにとって相当有利だなあ、と思って見ていれば。なにか2頭の間にやたら手応えの良い馬がいる、という2番手追走のヤマカツグレース金鯱賞を連覇したヤマカツエースの半妹で、ハービンジャー産駒。もちろん、2000mが悪かろうはずもない。

そのヤマカツグレースが先頭にかわって坂を駆け上がり、外の差し・追い込み勢はホウオウパフュームも含め伸びはなし。フローレスマジックタガノアスワドのおいしそうな2頭の上に、もっとおいしい単勝10番人気のヤマカツグレースが乗っかっての3連単決着かと思われた。

ところが、そこに内から外へと進路を切り替えつつ襲いかかったもう1頭。ヤマカツグレースと同じハービンジャー産駒で、人気でいえばさらに下、これが12番人気のモズカッチャンだった。とはいえ、残り100mあたり、画面表示で1分55秒くらいまではタガノアスワドを交わして③着までかという脚色。しかしそこから6秒少々で、フローレスマジックヤマカツグレースをまとめて交わし去っての大逆転劇となった。

モズカッチャンの通過順は[7][7][8]。最内枠から枠なりに中団のやや前をキープし、距離損なくコーナーを通過しての差し切り勝ちで、「大逆転」と言うほどではない。しかし、この馬に注目してレースを見直しても「いい脚は使っているけど③着かな」というくらい。最後の最後に前2頭が止まった分もありそうだが、見た目上はやはり「大逆転」と言っていいだろう。

そのモズカッチャンは、ステファノスの近親馬(3代母が同じ)。そのステファノスが大阪杯②着で、ヤマカツグレースの半兄ヤマカツエースは大阪杯③着、つまり2000mで2回続けてモズカッチャン一族が先着したことになる。ヤマカツグレースが好走する前提でなければ馬券のヒントにもならないような話だが、ともあれこれで未勝利戦から3連勝でオークスへと進むことになった。

桜花賞は重馬場だったとはいえ、微妙に勢力図に変化が出た中での今回の結果をどう見るか。③着フローレスマジックを「アルテミスSでリスグラシュー(桜花賞②着)の②着」と考えると、今回先着したモズカッチャンヤマカツグレースもいい勝負、というのが単純計算。桜花賞フローラSと荒れてきているだけに、オークスでもうひと波乱があっても不思議はない。