勝利への執念が最後のひと押しに…
文/編集部(M)、写真/森鷹史
モーリスが種牡馬入りし、昨秋の
マイルCSを勝った
ミッキーアイルも引退したことで、
今年のマイル戦線は混戦と言われている。
古馬の芝1600m重賞は、今年に入ってから4レースが行われ、いずれも
異なる馬が制覇している。
京都金杯は
エアスピネル、
東京新聞杯は
ブラックスピネル、
ダービー卿CTは
ロジチャリス、
阪神牝馬Sは
ミッキークイーン。そして、この
マイラーズCは
イスラボニータが優勝した。
いかにも
混戦模様という感じだが、実はその間、
1番人気馬はずっと③着以内に入っている。
京都金杯の
エアスピネルと
阪神牝馬Sの
ミッキークイーンは1番人気だったし、
東京新聞杯でも
エアスピネルが③着、
ダービー卿CTでも
キャンベルジュニアが②着となり、
マイラーズCでも
エアスピネルが半馬身差の②着となった。
この後、
安田記念までに行われる古馬のマイル重賞は
ヴィクトリアマイルだけで、同週には
京王杯SCがある。
今年のマイル戦線は混戦だけど、1番人気に推される馬は手堅い。この傾向が続くのかどうか。続いていけば、ある意味、
安田記念の予想もしやすくなりそうだが……果たして
1番人気に推されるのは何なのだろうか?
今年の
マイラーズCは、1番人気が
エアスピネル、2番人気が
イスラボニータ、3番人気が
ブラックスピネルで、その単勝オッズは
3.1倍(
エアスピネル)、
3.8倍(
イスラボニータ)、
4.8倍(
ブラックスピネル)だった。
前述した通り、
エアスピネルと
ブラックスピネルは今年のマイル重賞を勝っていたが、
イスラボニータは今回が今年初戦で、勝ち鞍は3歳時の
セントライト記念から離れていた。11頭立てながら大外枠にもなったので、それらを考えれば
単勝3.8倍は
人気を集めたと感じていた。
イスラボニータは実に
13戦ぶりの勝ち鞍を挙げたわけだが、
勝利への執念が最後のひと押しに通じたように感じられた。
鞍上の
ルメール騎手は、勝利騎手インタビューで開口一番、
「ついに一緒に勝てました」と話した。3歳時の
天皇賞・秋(③着)で初めてコンビを組み、昨秋は
富士S、
マイルCS、
阪神Cと騎乗したが、いずれも②着に惜敗していた。これまでに騎乗した4戦は③②②②着で、0秒0~0秒1差だったのだから、
「ついに勝てた」と話したくなるのも頷けた。
勝ちたい気持ちが
ルメール騎手と同じく強かったのは、管理する
栗田博厩舎もそうだろう。
イスラボニータのこれまでの6勝はすべて同世代相手のもので、他世代と戦うようになってからは勝てていなかった。
G1ホースで、今年の大目標が
安田記念であることを考えれば、この
マイラーズCは前哨戦としての位置付けになって不思議ないところだが、今回はレースの2ヵ月以上も前になる
2月10日に美浦トレセンに戻り、調教を積んできた。
イスラボニータは古馬になってから休み明けでの出走が4度あった。4歳時の
3月1日の
中山記念(⑤着)は美浦トレセンの帰厩が
1月15日で、同年
10月11日の
毎日王冠(③着)は帰厩が
9月2日。5歳時の
2月28日の
中山記念(⑨着)は帰厩が
1月13日で、同年
10月22日の
富士S(②着)は帰厩が
9月13日だった。
早く戻ればそれだけ良いとも言えない面があるかもしれないし、時期的なものもあったのかもしれないが、いずれにしても今回はトレセンで多くの調教を積んできていた。競馬新聞を見ると、実に
15本も時計を出している。勝つための万全を期して、臨んできていたのではないだろうか。
外枠ながらレースの中盤では
内ラチ沿いを走っていて、
ルメール騎手のコース取りも見事と言うしかないものだった。芝1600mはデビュー戦で勝利し、その後の
重賞では1分33秒0~1分35秒0という走破時計で②③⑤②②着という成績だったが、今回は自己ベストの
1分32秒2というタイムで勝利した。
今回は美浦トレセンで多くの調教を積んできていたと書いたが、それでも馬体重は
過去最多の488kg(8kg増)だった。関西圏への輸送があったことを加味しても、
安田記念へ向けて、伸びしろはまだまだあるのかもしれない。混戦のマイル戦線に
終止符が打たれる----そんな可能性も十分にありそうだ。