再びファンの前に元気な姿を見せてくれることを期待したい
文/浅田知広、写真/森鷹史
京都新聞杯が
菊花賞トライアルから、
ダービーのステップレースとしてこの時期に移動してきたのは00年のこと。昨年まで計17回が行われており、その間、出走馬の
ダービー成績は
[2.3.1.33]と6頭が馬券に絡んでいる。優勝したのは00年アグネスフライトと、13年キズナ。ほかに直近では15年のサトノラーゼンが②着になっているが、これら馬券対象になったのはすべてこのレースの優勝馬。今年4番人気に推された
ミッキースワローの
父トーセンホマレボシも、12年にここを制して本番では③着と好走した。
つまり、たとえ②着賞金の加算でも出走できたとしても、
ダービーに「出るだけ」にならないためには、とにかく
勝つことが条件だ。一方で、今年は2勝以下の馬ばかりのメンバーで、3戦2勝の
ミッキースワロー以外は勝率50%以下である。複勝率はそれなりにみな高いが、勝ち切れるのはどの馬か。
そんなこともあってか、1番人気の
サトノクロニクルでも単勝オッズは3.9倍。続く
プラチナムバレットが4.2倍、そして
インヴィクタが4.3倍などと続き、
ファンも今ひとつ勝つ馬がわからない、というオッズ。
当方もまったくわからないので、勝ったときに
「人(菊沢一樹騎手-菊沢隆徳調教師)も馬も父子制覇」と、ここで書くネタになりそうな
ミッキースワローから買ってみたが、まったくもって
自信ナシ。いずれにしても、ここでしっかり勝ち切れる力を示した上で、①着賞金も欲しい馬が集まった。
そんな中、勝てないようなら大敗上等、とばかりに思い切った逃げを打ってくれたのが、
皐月賞を制した
松山弘平騎手が手綱を取る
ウインベラシアス。向正面では7~8馬身のリードはあっただろうか、ともかく「大逃げ」と言えるくらいの競馬になった。ところが、1000m通過タイムは見た目の印象とはまったく違う62秒1。昼に少し雨が降ったとはいえ良馬場で、特に2番手以下の集団にとっては「超スロー」と言える流れだ。
さて、勝ちたいみなさん、この流れでどう動きますか、という3コーナー。外めからじわじわと上がって行ったのは、連勝中の
ミッキースワローだった。スローだけにこれが吉と出る可能性もあり、逆に直線勝負に徹した方が良かったという可能性もあり。結果的には後者だったようだが、まあ、
菊沢騎手も若いんだから、
消極策で負けるよりは
積極策。勝負に賭ける前のめりの気持ちは評価したい。
その
ミッキースワローの動きに合わせ、前にいた1番人気の
サトノクロニクルも押っつけ通しながらも進出開始。対して2番人気の
プラチナムバレットと、出遅れた3番人気
インヴィクタは、ここから少し間を置いての追走となった。
迎えた直線。2番手につけていた
ダノンディスタンスと、早めに動いた
ミッキースワローがまず抜け出す……かと思いきや。上がりが速くなったせいか、それとも単に切れないだけか、ともあれ「抜け出す」というほどの脚は使えずじりじりとした脚。内で逃げ粘る
ウインベラシアスを捕らえるのにすら手間取る間に、後続もこれまたじわじわと、内から
ゴールドハット、
サトノクロニクル。外からは
サトノリュウガ、
プラチナムバレットが接近してきた。ちょうど残り100mあたりでは、逃げた
ウインベラシアスも含め7頭ほどが2馬身ほどの中に収まる大激戦だ。
その争いを制したのは、7頭の中では最後方の4角9番手から大外を伸びてきた
プラチナムバレットだった。内の
サトノクロニクルと馬体を離した接戦となったが、最後はこれにアタマ差をつけきっちり差し切り、
ダービーへの道を切り開いた、と思われた。
ところが、翌日に残念ながら骨折が判明(
右橈骨遠位端骨折、全治未定)。
日本ダービー出走も、実力以外の部分でかなわぬ夢と消えてしまうことになった。もちろん、これを「あくまで目先の目標」だったとは片付けられない。しかし、なにも
ダービーが競走馬として最後の目標だったわけでもない。
なにせ半姉スマートレイアーは、3歳秋の
秋華賞②着から一線級で活躍を続け、7歳になった今年も、来週の
ヴィクトリアマイルで好勝負になろうかという馬。
プラチナムバレットも、
まだまだこの先何年も活躍できるに違いない。まずは傷を癒やし、遠からず再び
ファンの前に元気な姿を見せてくれることを期待したい。