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能力の高さがあるからこその走り、文句の付けようがない圧勝劇だった
文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博


「もっとも難解なG1」と言われているNHKマイルC。今年も出走18頭はどの馬にもチャンスがあるように思われ、1番人気カラクレナイは単勝5.0倍、100倍以上は最低人気のナイトバナレットの100.9倍だけで、17番人気のトラストでも77.4倍と人気は大きく割れた。この人気傾向は3連単973万円台を記録した2007年とほぼ同じだった。

結果としては、馬連1万7290円、馬単2万7730円、3連単29万6160円と、2007年ほどの大荒れにはならなかったものの、13番人気リエノテソーロが②着に入り、1番人気カラクレナイはブービー⑰着など、今年も難解さでは同様な傾向が続いた。

だが勝ったアエロリットの強さは、同じく桜花賞組だった昨年の覇者メジャーエンブレムに匹敵にする圧巻の内容だった。

引き当てた枠順は8枠16番。NHKマイルCでは、16年レインボーライン③着、13年インパルスヒーロー②着、12年アルフレード②着、11年コティリオン②着、07年ムラマサノヨートー③着など、8枠でも意外に好走例はあるのだが、勝ち馬となると03年ウインクリューガー1頭だけしかいない。先行タイプのアエロリットにとってはやはり不利を感じざるを得ない枠順だった。

その枠順の不利を、まるでフライングなのではないかとさえ思えるロケットスタート一発で解消した。ピッタリとタイミングが合った幸運はあったのだろうが、「開いたら飛び出す」という強い闘争心がアエロリットにあったからこそ、このスタートを切れたのだろう。パドックからツル首で2人の厩務員を引っ張る走る気満々の姿勢は、周囲を囲む牡馬を圧倒する気合乗りだった。

横山典騎手は無理して内に進路を取ろうとせず、3角では外の5番手を楽な手応えで追走。そこから馬の行く気に任せて無理に抑えず、4角では先頭に並ぶ位置まで上がっていた。前半1000mは57秒9で、昨年逃げ切ったメジャーエンブレムの57秒7よりは0秒2遅かったが、アエロリットが2走前に②着になったクイーンCの前半59秒1よりは1秒2も速い。

決して楽なペースではなかったはずで、直線を向くと外から追い込んできたリエノテソーロに比べて、脚色にやや衰えが見えたようにも思えた。だが追い出されて手前を替えると、一度は並び掛けられそうになったリエノテソーロを逆に突き離し、ゴールでは1馬身半差を付けていた。

1分32秒3の勝ちタイムは昨年のメジャーエンブレムより0秒5速く、10年ダノンシャンティ、11年グランプリボスに続くレース歴代3番目。このペースで積極的に先行しながら、自身が推定34秒3の上がりタイムをマークしたのだから、後続が届かないのも納得で、まるで先週の天皇賞・春、キタサンブラックのレースを再現しているようにも見えた。能力の高さがあるからこそできるレースであり、文句の付けようがない圧勝劇だった。

牝馬は4頭出走してアエロリットリエノテソーロが①②着独占。牝馬の優勝は5頭目で、ワン・ツーは05年ラインクラフト-デアリングハート以来2度目となった。ミスエルテも③着とは0秒2差の⑦着と善戦しており、カラクレナイの惨敗理由は不明だが「牝馬レベルが高い世代」という評価は、皐月賞でファンディーナが凡走してしまっても、変わらないことを証明した。アエロリットの今後のローテーションはまだ未定だが、オークスを回避して安田記念や秋のマイル戦を目指すことになっても、決して軽視はできなさそうだ。

父は01年覇者クロフネで、同産駒は15年クラリティスカイに続いて2頭目の父子制覇。フレンチデピュティ系サンデーサイレンス系との配合は、13年マイネルホウオウ、15年クラリティスカイに続いて3頭目の優勝で、単に切れ味だけでなく持続したスピードとスタミナが要求される東京マイル戦では、この配合がもっとも注目されることも、改めて教訓にしておきたい。

NHKマイルC勝ち馬は、そのタイムが速くなり過ぎる負担が原因なのかどうかは判らないが、昨年のメジャーエンブレムのように、その後に体調を崩してしまう例が多い。だがクロフネ牝馬はホエールキャプチャ、カレンチャン、スリープレスナイト、ホワイトフーガなど古馬になってさらに成長し、息長く活躍する馬が多い。今年の速過ぎる時計には多少の不安はあるものの、アエロリットならきっと丈夫に長く活躍し続けてくれると信じたい。