1200m、1400mと重賞を制し、さて1600mでは!?
文/浅田知広、写真/川井博
金曜に見た、土曜の東京地方の天気予報は
「雨ときどき止む」。ときどき曇りではなく、ときどき止む、つまりほぼ雨、という予報だった。しかし道悪の
京王杯スプリングCってあまり印象に残ってないな、と思えば、それもそのはず、重以上の道悪はシンウインド(
JBCスプリント優勝馬サマーウインドの母)が優勝した90年以来である。
さて、この道悪がいったいどの馬にとって有利になるのか。前売り・午前0時ころの単勝15倍前後から、最終的に7.5倍までなったのが、重馬場
2戦2勝の
ダッシングブレイズ。そして7倍前後から5.0倍になったのはダートでオープン勝ちの実績もある
レッドファルクスだった。1番人気に推された昨年の覇者
サトノアラジンは少しアップ、というくらいだ。
マイル戦を勝っている上に昨年④着の
ダッシングブレイズはさておき、
レッドファルクスは1200mで
スプリンターズSなど重賞2勝を挙げた馬。しかもメンバー中唯一の58キロ、距離が延びてパワーを要する道悪になり、果たしてプラスになるのか
少々怪しげにも思えた。
とはいえ。G1馬はその
レッドファルクス1頭だけ。G2優勝馬は
クラレント、
ロサギガンティア、
ダンツプリウス、そして
サトノアラジンと4頭を数えたが、過去1年の優勝馬は
サトノアラジンだけで、残る11頭は斤量加増なしの56キロ。適性云々抜きにして格では
レッドファルクスが一枚抜けており、それで単勝5倍もつけば狙いごろ、という判断も可能だろう(しかも屋根は
デムーロだ)。まあ、1番人気
サトノアラジンが3.5倍という時点で、馬場も含めてみなさん
半信半疑、という混戦模様だった。
その混戦の中で、さらにやっかいな要素だったのが「逃げ馬不在」。なにが逃げるかと思えば、ブリンカー装着で一時は追い込む競馬も続いていた
ヒルノデイバロー。これに
クラレントなどが続いたが、前半の600m通過はなんとびっくり36秒4(ちなみにシンウインドのときは34秒1だった)。いくら重馬場とはいえ、直前の9R、10Rではレース上がり35秒前後と、そこまでひどい馬場ではないはずで、中団以降では人気の
サトノアラジンや
レッドファルクスが折り合いを欠きかけ、何度かクビを上げている場面も見られた。
こうなると、前の馬には余力があって手応え十分。
ワタクシの◎
トーキングドラム(8番人気)も、直線前半でまったく楽な手応えのまま先頭に並びかけ、これは
「やったか」と相当楽しめた。もっとも、これだけ遅い流れに加え、13頭と落ち着いた頭数とあっては、後方まで差はなくほぼ一団。当然のことながら、ちょっとした脚が使えれば一気に差し切れる展開でもある。
その「ちょっとした脚」を、
トーキングドラムの3馬身くらい後ろから繰り出したのがG1馬
レッドファルクスだった。各馬とも余力を残しているだけに「抜群の脚」と言えるほどではなかったが、1完歩ごとに確実に前との差を詰め、58キロも1400mも関係なし。残り200mで先頭に並ぶと、そのまま粘る
クラレントをじわじわと引き離し、最後は4分の3馬身差をつけて
3つ目の重賞タイトルを獲得。
「怪しげ」なんて思って失礼しました、という結果である。
レッドファルクスの
おばスティンガーは、00~01年にこのレースを連覇。また、おじアーバニティは10年の③着馬と、このレースに少なからず縁もあり、そもそも疑うのが間違っていたかと、後から考えればそんな牝系の出身だ。ともあれ、この勝利で「
安田記念」への優先出走権を獲得。距離実績も考えれば
「出走権は要らないんだけど」というパターンかとも思われたが、どうやら
安田記念へも駒を進めるようだ。
マイル戦は13年の
未勝利戦⑨着があるだけで、
父スウェプトオーヴァーボードという血統からも、まずは距離克服が課題となる。しかし今回は、1頭だけ58キロで他馬はほぼ56キロという中でのこの競馬。昨年の
CBC賞では上がり32秒7の末脚を繰り出して鮮やかに差し切っているだけに、軽い馬場になっても問題ない。1200m、1400mと重賞を制した流れでマイルG1制覇、そんな可能性も十分にありそうだ。